子どもが“どう遊ぶか”を自分で考えることのできる体験型絵本

 子どもが産まれたら、毎日絵本をたくさん読んであげよう――。絵本が大好きな私は、そんな日が来るのをずっと楽しみにしてきた。しかし、である。いざ娘が生まれてみると、容赦なく現実を突きつけられる。最初の1ページ目を読み聞かせている途中にさっそく飽きてフラフラ放浪、自分でページをめくってみたらエキサイトしてビリビリ……2歳半になった今も、おとなしく座って絵本に集中してくれることなんて滅多にない。

 今回、そんな私のもとに編集部から“Big Book”なる絵本が送られてきた。その名の通り、床いっぱいに広げられる大きな絵本である。特殊な紙を使っているため破れることもなく、ジュースをこぼしても大丈夫とのこと。これなら思う存分遊べそうである。

藤本真央 BIG BOOK おおきなかぶ 青幻舎(2016)

藤本真央 BIG BOOK うらしまたろう 青幻舎(2016)

 さっそく『おおきなかぶ』を広げてみた。長さが2メートルにもなる紙に、ながーいかぶが一本。そのまわりに日本語と英語で書かれた文章が散りばめられている。文字が読める年齢の子どもならば、紙のあちこちに書かれたストーリーを追いながら、物語の世界を自由に探検することができるだろう。さて、2歳半の娘にはどうしたものか。とりあえず読み聞かせをしてみた……が、きょとん。反応なし。けれど、しばらくすると、葉っぱの上にいる小さなてんとう虫や毛虫、土から顔を出しているモグラを発見し、紙の上でハイハイしながら「あ、虫さん!」「あ、ピッピ(鳥)!」などと捜索をはじめた。ここまでくれば、こっちのもの。「いち にの さん! そーれ!」と、かぶを抜くフリをしながら 「○○ちゃんも手伝って~」と言うと、ノリノリで「そーれ! そーれ!」と力を貸してくれて、無事にかぶが抜けましたとさ。めでたしめでたし。読み終わった後もそのまま広げておいたら、「ケンケンパ」をして一人で遊んでいた。テレビやゲームなど“受け身”のエンターテイメントがあふれている昨今、“どう遊ぶか”を自分で考えることができるおもちゃはとても大切だと思う。

 一方の『うらしまたろう』は、約1メートル四方の紙に大きなかめが描かれている。黒っぽい色だからか、最初は怖がって近寄りもしなかった娘。でも読み聞かせをはじめて「さあ どうぞ わたしのせなかに のってください」というあたりにさしかかると、身を乗り出して興味を示している。そこですかさず「かめさんの背中に乗りたい?」と尋ねると、「うん」。無事、かめにまたがって竜宮城へ行きましたとさ。めでたしめでたし。遊び疲れたあとは、背中でゴロン。子どもは自由です。

 夕食のとき、「今日ね、おっきなかぶ、抜いたの」「かめに乗ったの」と話す娘。2歳半の体験は、記憶には残らないかもしれない。けれど確かに子どもの中に根を下ろし、成長の糧となっていくに違いない。