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ポップでフレンドリーに聴こえる、そんなシャウトはポールだけ

亀田「今の話を聞いて思ったのは、ポールって74歳ですよね。これから現役のミュージシャンたちは高齢化が進んでいくわけじゃないですか。日本のアーティストもそうですよね。そこでもポールは一つの指針になってくれていて。ポールがやれてるからがんばれる、ポールがこうやってるからこうしてみようとか、一つの目標となってくれますよね」

湯川「だから、なにが悲しくって、あの歳になってこんなにツアーするのかって思うでしょ。(2015年に)あと1年で来日50周年になるから、武道館でやりましょうと最初に言われたとき、マネージメント側の人は〈なんで53,000人呼べるアーティストが、1万人入るかどうかってところでやるんだ?〉と思ったはずですよ。同じ貴重な1日じゃないですか。でも日本にとっては、ここに集まられたみなさんの人生もまったく変わったように、あの武道館でザ・ビートルズがやったことで、音楽だけじゃなくて、いろいろな日本の価値観というのが変わったわけでしょ。そこでどうしてもやってほしいという、こちら側の心情というのがあるじゃないですか」

森川「やってほしいし、僕もそれを観てみたいと思いますよ」

湯川「実際、あの日に武道館でやってみるまでは、そんなに意味のあることだとポール自身も認識してなかったんじゃないかと思う。でも、みなさんいらっしゃったでしょう?」

浦沢「僕、行ってないんですよ」

亀田「僕も」

森川「亀田さん、音がいいよ」

湯川「音がいいし、やっぱり日本側の思い入れがすごかった。(観客全員に配られた)リストバンド(フリフラ)が光って、南スタンド席にユニオンジャック、アリーナ席に日の丸が描かれたんですよ」

倉本「ポールへのサプライズですよね」

湯川「それがつまり、日本側の思いなんですよね。ポールはそれを物凄く大きなものとして受け止めていて。あれから世界各地の公演で、レジェンダリーな場所として武道館での公演について語ったり、大観衆のなかで日本人を見つけると指差したり、そこまでするようになっちゃったのよ」

2015年の日本武道館公演のダイジェスト映像
 

倉本「へえ! 日本贔屓になってくれているんですね。この間の武道館公演のときも、翌日に公演もないのに日本武道館に行ったとか」

湯川「そう、自転車で。そこまで彼の心を動かしたのよ」

森川「前回はまだそういう認識を持ってもらえてなくて、今回は持ってくれてるなら、武道館だけの特別メニューをやってもらいたいな。やってもらいたいよね?」

倉本「これ、やるんじゃないですか。2年前の頃のことを思い出して」

湯川「ただ、選曲的になんでこれやってくれないの?とか、なんでバンド・メンバーも20年一緒なの?というのもあるけど、それが今のポールにとっての完璧で、いつまで歌うことができるのかって問題もあると思う。できれば80歳まで歌いたいと言ってるんですよね。やっぱりそれが生きるということだから」

浦沢「〈アウト・ゼア〉ツアーのドキュメンタリーで、ステージに出て行く直前までずっと歌ってますよね。あれはきっと、歌ってるほうがいいんですよね」

湯川「たぶん、そのほうが喉の調子が良くなると思うんです」

亀田「やっぱりポールですごいと思うのが、みんなオリジナル・キーで、ザ・ビートルズの頃と同じキーでやっているのも確かにすごいんですけれど、シャウトの質が全然落ちていない気がするんですよ。綺麗で鮮やかなシャウトを決めて、しかもそれがポップというかフレンドリーに聴こえる。そんなシャウトが出来るヴォーカリストって、ポールしかいない気がするんですよね。普通はシャウトって排他的であったり、暴力的な方向に行くものなんだけど。もちろん、60年代のザ・ビートルズ登場時のシャウトは、みんなには乱暴なものに映ったのかもしれないけど」

湯川「あの頃は、ジョンの声が結構立ってましたからね」

浦沢「僕もね、頼もしいと思ってた。ポールのシャウトは、なんか安心するの」

亀田「なんだか勇気をもらえますよね。ポールはあのときのまま、もしくはあの時以上かもしれないシャウトを、60年代のツアーの頃より何倍も多いお客さんに届く形で出しているじゃないですか。そこに本当の意味でのロック・ミュージックの使命みたいなものも感じるし、本当にポール・マッカートニーはすごいアーティスト。そして、エンターテイナーだなって」

湯川「リンダが生きてた頃のウィングスとか、(ポールのキャリアを)いろいろ全部含めて、最近は前よりもザ・ビートルズを背負ってますよね。何かもう、ジョンの分もジョージの分も自分は歌ってるという感じがする」

森川「だから“A Hard Day’s Night”もやったのだろうし、“Please Please Me”もポールじゃなくて、ジョンがメインの曲じゃないですか。それをポールがやるというのがね。そうすると今度の武道館でも、ポールがメインじゃなかった曲を聴いてみたい」

湯川「聴きたいですね」