ピアソラ没後25年に満を持してリリースされる、愛を込めたオマージュ
昨年パブロ・シーグレルとのリハーサルのためにNYを訪れた時、寺井尚子は、ふと「ピアソラをやるのもいいかもしれない」との思いが頭を過ったという。シーグレルは、ピアソラが晩年の10年間一緒に演奏したピアニストだ。リハーサルを終えて、あらためて9月の東京JAZZで彼と共演した後、「新作はピアソラで」と決めた。ピアソラ没後25年という事実がまたジャズ・ヴァイオリニストの背中を押すことになった。
「ピアソラの楽曲というのは、メロディに力強さがあり、曲の構成は、コンツェルトがギュッと凝縮されたようなドラマティックな展開があって、聴き手を飽きさせない。革命児と言われただけに独創的で、懐深く、その独自の世界観に、私は魅了されています」
生前のピアソラに会う機会はなかったが、これまでに何度も共演してきたリシャール・ガリアーノやパブロ・シーグレルを通して、ピアソラを感じてきたという。その彼へのリスペクト、彼のおかげでめぐりあった数々の大切な出会いへの感謝、そして愛を込めて、新作『Piazzollamor』は制作された。アルバムの前半でピアソラの遺した楽曲が演奏される。
「いくつか候補曲がある中で、結果として曲調、テンポの異なる5曲になりました。その中で、《リベルタンゴ》の新たなアレンジをピアニストの北島さんにお願いをして、その他は私が手懸けました。1曲目の《アディオス・ノニーノ》は、途中で4ビートの演奏が挟み込まれていますが、ジャズからタンゴのリズムにスムーズに戻るのが難しく、冒険でもありました。そのアレンジの作業が終わる頃に、《Piazzollamor》のメロディが浮かんだこともあり、全編ピアソラではなく、ストーリー的に成立するのであれば、オリジナル楽曲があってもいいと思い、この編成になりました」
収録12曲中6曲がオリジナル楽曲になるが、《Piazzollamor》以外の5曲をピアニストの北島直樹と佐山雅弘がそれぞれに書き下ろしている。
「北島さんにピアソラに触発された曲を書きませんか、と声を掛けたところ、1週間後に《まだ見ぬブエノスアイレス》が出来上がってきて。さらにその後、佐山さんからタンゴの新曲が出来たからと届いたのが《アモーレ・グランデ》でした。2人のピアニストが刺激しあったことで、素晴らしい曲が生まれました」
レコーディングは、レギュラーバンドと一緒に行われた。入念なリハーサルを経て、スタジオでは原則ワンテイクのみ。それがいい緊張感のある一体感を生み出し、スリリングで情熱あふれる官能的な“ジャズ・ミーツ・ピアソラ”になった。そのバンドとはアルバム発売後の4月から一緒にコンサートを行う予定だ。
LIVE INFO
寺井尚子 Piazzollamor ツアー2017
○4/23(日) 16:00 開場/16:30 開演 会場:仙台市民会館小ホール
○5/20(土) 15:00 開場/16:00 開演 会場:日本橋三井ホール
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