佐山雅弘の新バンドがいよいよ本格始動。若手2人を従えてのピアノトリオは必聴!

 数多くのアーティストと日常的にセッションを行うジャズミュージシャン達は、あまり〈バンド〉という形態にこだわらない。自らの活動への時間的な制約も発生するし、またメンバー全員が〈バンド〉を継続させる覚悟を持つ必要があるからだ。

 ここしばらく、自己の原体験やルーツを摸索するような作品が多かった佐山雅弘。体調不良なども伝えられ、心配したファンも多いと思う。しかし、皆さんご安心を! 彼の新しい音楽が、なんとその〈バンド〉という気合の入った形で届けられたのだから。メンバーは、佐山の他、織原良次(フレットレス・ベース)、福森康(ドラムス)。いま、シーンで最も勢いのある2人を従えたトリオ編成だ。佐山よりバンドの音楽監督に任命された織原は、本アルバムの制作にあたり幾つかのことを念頭に置いたという。

B’Ridge 『B’Ridge』 Paddle Wheel/キング(2018)

 〈佐山雅弘のトリオに今までと違う新しい音楽性を注入すること。懐古的にならず、エネルギー漲る作品にすること。現代的でアグレッシヴな福森のドラムの上で、佐山雅弘の「極めて美しいピアノ」に焦点を当てること〉

 これらはしっかりと本作に反映されている。カヴァー曲を除いた10曲のうち、佐山と織原で5曲ずつ提供し、それぞれに新曲を用意。過去のトリオ楽曲や代表曲、スタンダードではなく、あくまで新しい音を追求した姿勢が伝わってくる。

 昨年2月に新宿ピットインで行われたB’Ridgeのお披露目ライヴは凄かった。若手2人に触発された佐山の美しくも破壊力抜群のピアノ。そこにはベテランの鷹揚さではなく、完全なる対等が存在した。きっとこれこそが〈バンド〉という形態にした理由なのだろう。また今まで何度も聴いたことのある織原の楽曲に佐山・福森が加わることで、楽曲のスケール、奥行が数段広がったことにも驚かされた。このトリオの魅力は、しっかりと結合できる3つのピース(個性)であるということ。誰が欠けてもこのサウンドには成り得ない。まずは挨拶代わりの1stアルバム。これからさらにどう進化するのか、久しぶりに行く末楽しみな〈バンド〉ができた。

 


LIVE INFORMATION
佐山雅弘ニュー・トリオ“B’Ridge”CD発売記念ライヴ決定!
2018年9月18日(火)東京・目黒 BLUES ALLEY JAPAN
出演:佐山雅弘(ピアノ)、織原良次(フレットレス・ベース)、福森康(ドラムス)
www.bluesalley.co.jp/