2023年1月29日に亡くなった不世出のロックギタリスト、鮎川誠。彼の一周忌企画としてアルバム『VINTAGE VIOLENCE~鮎川 誠GUITAR WORKS』が発表された。ジャンルを超えて愛された才能によるギターの名演を、レーベルを横断して集めた本作はリリース前から話題になっていた。鮎川の仕事をこれから知る若いリスナーも古くから追ってきたファンも必携の本作について、ライターの桑原シローが聴きどころを紹介する。

なおタワーレコードは、鮎川の〈NO MUSIC, NO LUFE.〉ポスターを全店で掲示中。新宿店では特設展示コーナーも展開されている。ぜひお近くのタワレコで『VINTAGE VIOLENCE』を手に入れ、ポスターもご覧いただきたい。 *Mikiki編集部

鮎川誠 『VINTAGE VIOLENCE~鮎川誠GUITAR WORKS』 ビクター(2024)

 

世界に誇るロックアイコンのギターにフォーカスした充実作

日本が世界に誇るロックバンド、シーナ&ロケッツを牽引した日本が世界に誇るロックアイコン、鮎川誠。氏のギタリストとしての仕事ぶりにフォーカスしたコンピレーションアルバム『VINTAGE VIOLENCE~鮎川誠GUITAR WORKS』がようやく届けられた。

年頭に告知が成され、春頃には届くのではないかという話だったので首を長くして待っていらっしゃった方も多いと思われるが、シナロケ、サンハウスといった彼の所属チームの楽曲のみならず、色とりどりな客演曲もふんだんに散りばめた充実作になっており、これはもう待った甲斐があったというもの。

 

ロックンロール文化の継承者

つねにルーツにリスペクトを示しつつ、たえず新しい領域をめざして挑戦をし続けたミュージシャンであった鮎川誠。そんな氏の特性が顕著に現れているのが、めんたいロックの雄、サンハウスの代表曲“レモンティー”から、YMOの名盤『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』に収められていた“Day Tripper”へとつながるオープニングだ。

クラシックロックに精通していらっしゃる人ならばご存じのはずだが、前者においてはヤードバーズの“Train Kept A-Rollin’”(あるいは“Stroll On”)とおんなじギターリフが飛び出してくる。そもそもヤードバーズの場合、ギタリストのジェフ・ベックが、“Train Kept A-Rollin’”を十八番にしていたロカビリーのレジェンド、ジョニー・バーネットへのリスペクトを示すべく、ジョニーの別の曲“Honey Hush”からリフを拝借してカバーに臨んだという経緯があった。

ロックンロールの文化には、先達たちのスタイルや方法論を模倣しつつ新たな視座を加えながら継承することで発展を遂げた歴史があるわけだが、それに対して自覚的であった鮎川誠にとってこのリフを採用することは、自身が正統なる継承者であるという存在証明に他ならなかったのだと。

こういうロジックに嬉々として反応してしまうのが、すべてのロックンロール野郎どもならではの性分でもあるがそれはさておき、鮎川が人生のすべてをかけて構築してきたロック道を振り返れば、数々の選択や決断からそういった強い信念を感じ取らずにいられない。