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「大人のクラシカロイド」、8人の楽聖が織りなす現代音楽絵巻を楽しむために

 NHK Eテレで放送開始と共に大きな話題となったアニメ作品「クラシカロイド」。タイトルからも察せられる通りクラシック音楽をモチーフとしており、8人の作曲家が登場人物になっているが、全員が一癖も二癖もある人物にアレンジされている。餃子創作に命を燃やすベートーヴェン、いたずら好きで奔放なモーツァルト、人嫌いで引っ込み思案のショパンらが洋館でシェアハウスをしながら巻き起こす珍騒動を描く。

 しかしここまでの説明ならばいわゆる普通のアニメ作品では? と思われるが、この作品の最大の特徴は音楽にも並々ならぬこだわりが詰まっているということ。全話に渡って、登場する楽聖たちが指揮棒を振りアレンジされたクラシックの名曲=「ムジーク」を奏でる。登場する名曲もストーリーごとに変わり、数多の楽曲がアニメ自体を盛り上げていく。さらに珍しいのは作曲家毎に編曲者が割り振られているということ。ベートーヴェンには布袋寅泰、モーツァルトにはtofubeats、バッハ・チャイコフスキー・バタジェフスカにはつんく♂と、錚々たる面々が「ムジークプロデューサー」に就任しており《田園》《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》《夜想曲》《トッカータとフーガ》などの名曲を個性的な楽曲にアレンジしている。

 そんなクラシック音楽への愛が詰まったアニメ「クラシカロイド」であるが故に、サウンドトラック作品にも並々ならぬこだわりが盛り込まれ、多数の音盤が企画されている。劇伴曲を収録した「クラシカロイド Original Sound Track」、前述のムジークを収録した挿入歌集「クラシカロイド MUSIK Collection Vol.1~3」、そしてこの「“ClassicaLoid” presents ORIGINAL CLASSICAL MUSIC No.1~3」。まずジャケットを見ていただきたい。既にこの時点で強いこだわりの一片が垣間見え、クラシックファンならば必ずニヤリとしてしまう構図。前述の「ムジーク」の原曲であるクラシックの楽曲をWarner Classicsが所蔵する極上の演奏音源で収録するサウンドトラック集である。

 サヴァリッシュ、ラトル、リパッティやシュヴァルツコップの名演が楽しめるほか、No.2ではバダジェフスカ《乙女の祈り》を今注目の若手ピアニスト小林愛実が新規に録音。さらに最新No.3では本編最終回で圧倒的クライマックスを築いたベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付》を佐渡裕の熱演による第4楽章と、「バイロイトの第9」全楽章の両方で収録。ジャケットのオリジナルである大巨匠フルトヴェングラー1951年の歴史的名演をボーナスディスクにしてしまう2枚組という歓ばしい仕様。「第9は第1楽章から通して聴いてもらいたい」という企画者の愛に近い強いこだわりが涙を誘う、実に素晴らしい!

 登場する楽曲を原曲で楽しむにはうってつけで、クラシック入門者から愛好者まで楽しめる「大人のクラシカロイド」の名にふさわしい豪華な企画なのだ。

 4月からは再放送、さらにアニメ第2シリーズも予定されており、なおも盛り上がりを見せる「クラシカロイド」。まず色彩豊かな音楽へと生まれ変わったクラシック音楽の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろう。

 


TV INFORMATION

「クラシカロイド」再放送決定
4月9日から Eテレ 毎週日曜午前0:00(※土曜深夜)