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プリンス、ケンドリック・ラマー、カマシ・ワシントンのドラマー、ソロ・デビュー作では歌も披露!

 昨今LAのジャズ・シーンが活況を呈していることは、カマシ・ワシントンの人気ぶりやマイルス・モーズリーのアルバムの充実ぶりから明らかだが、そんなシーンの真打ち登場とぶちあげたくなる作品が届けられた。プリンスやケンドリック・ラマーとの共演歴があり、サンダーキャットことステファン・ブルーナーの実兄であるドラマー、ロナルド・ブルーナー・ジュニアの『トライアンフ』である。カマシやサンダーキャットの他に、マック・ミラー、実兄でジ・インターネットのジャミール・ブルーナー、ジョージ・デュークらが参加した本作は、LAという土地の音楽的豊穣さを体現した自由でのびやかで開放感溢れるアルバムに仕上がっている。

RONALD BRUNER JR. Triumph World Galaxy/rings(2017)

 聞けば、彼のルーツは幼少期に通った教会だという。なるほど、ゴスペル・チョップス系などと呼ばれる重量級のドラミングは、本作でも存分に味わうことができる。派手なフィルで装飾されたプレイ・スタイルはいわゆる“超絶ドラマー”のイメージに近く、たっぷり用意されているドラム・ソロも要所でアクセントになっている。そのパワフルなドラムは時にジョン・ボーナムがジャズに挑戦したような感触すらあるのだ。

 また、ロナルドのヴォーカルも本作の聴きどころ。歌い始めたきっかけも教会が大きかったそうだが、ゴスペル的なフィーリングが印象的な歌声は、彼がいちヴォーカリストとして稀有な魅力の持ち主であることを示す。特にブラック・フィーリングが強い曲では陰影の深い表情を湛えており、メロウなうたものの輪郭を際立たせている。例えば彼の敬愛するプリンスと較べても、そのポテンシャルはひけをとっていないだろう。

 ジャズやフュージョン、ソウルやR&Bなどがシームレスに溶け合いながらも、教会で培った豊富な音楽的ヴォキャブラリーを投入した本作は、 LAのジャズ・シーンの歴史に名を残すだろう。アルバムのリリースに合わせてライヴも予定されているというから、来日公演を含めて楽しみに待ちたいところだ。