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モグワイ
photo by Brian Sweeney
 

今回の〈HCAN〉はどんなところがスペシャルなのか?

去る5月12日に今回の第1弾出演アーティストがアナウンスされた際、筆者は真っ先に「なんか〈ATP〉っぽい顔ぶれじゃね?」という印象を持った。〈All Tomorrow's Parties〉を略した〈ATP〉は、毎回1アーティスト/グループがキュレーターとしてラインナップを選出するユニークなプログラムと、大手スポンサーが介在しないDIY主義のスタンスで知られ、ミュージシャンからも高く評価された伝説の音楽フェス。震災直前の2011年2月に、同フェスのスピンオフ〈I’ll Be Your Mirror〉が日本で開催されているので、現場に足を運んだという読者もいるだろう(ATP自体は2016年に財政難で終了)。

※過去にはマイブラやトータス、サーストン・ムーアといった大物に、ミュージシャンとしても活動する映画監督のジム・ジャームッシュやヴィンセント・ギャロ、「ザ・シンプソンズ」で知られる漫画家のマット・グレイニングなどがキュレーターを務めている

筆者は2010年と2011年にアメリカで開催された〈ATP〉に参加し、そこでビーク>やホラーズ、ファック・ボタンズらのライヴを目撃してきたのだが、モグワイはキュレーターとしても出演者としてもATPでお馴染みのバンド。それに、ホラーズの2作目『Primary Colours』(2009年)は、上述したジェフ・バーロウが共同プロデューサーを務めていたこともあり、〈師弟対決〉といった趣もある今回の〈HCAN〉のラインナップには〈わかってらっしゃる!〉と思わずガッツポーズしてしまった。過去にジェフは、ポーティスヘッドとして90年代に予定されていた来日公演や、2014年のソロ公演も直前でキャンセルとなっており、悲願の初来日となる〈HCAN〉が(環境的に)アウェー感ゼロで臨めるのは彼自身にとっても有意義なはず。

〈ATP〉を追ったドキュメンタリーのトレイラー。BGMに使われているのは、ファック・ボタンズの“Sweet love For planet Earth”
ホラーズ『Primary Colours』収録曲“Sea Within A Sea”
 

そういえば、2015年の〈HCAN〉開催直前に、筆者は主催者でクリエイティブマン代表の清水直樹氏と、Hostessのボスであるプラグ氏にインタビューを行ったことがあるのだが(Qeticに掲載)、そこで清水氏は「年々ポップ色が濃くなっていく中、〈HCAN〉のおかげで、今までのサマソニの強みでもあったインディー・ロックをしっかりとカヴァーできた〉と語ってくれたのを思い出す。今はなき〈ATP〉のオルタナティヴ精神を受け継ぐイヴェント――そんなアングルから〈HCAN〉にアプローチしてみるもよし。あるいは、ライドを起点にモグワイ~ホラーズ~ブランク・マスと、UK出自の轟音/シューゲイザーにおける文脈から楽しむこともできるだろう。いずれにせよ、〈サマソニ〉本編のポップ/パンクなカラーとは良い意味でコントラストを描く一夜となりそうだ。

〈HCAN〉予習用のプレイリスト
 

最後に注意事項をひとつ。過去2回の〈HCAN〉は〈サマソニ〉のリストバンドを付けていれば誰でも入場可能だったが、今回はすべての来場者が別売りのチケットを購入する必要がある。

とはいえ価格は〈HCW〉の2日通し券よりも抑えてあるし、〈サマソニ〉or〈SONICMANIA〉のチケット購入者限定で特別価格枠(数量限定)も用意されているので、参加障壁は決して高くない。それに、いやらしい言い方をすれば、欧米でも一夜でこのラインナップ&このチケット価格帯を実現したイヴェントはそうそう見当たらないので、関東近郊以外のファンも夏休みついでに遠征する価値は大いにある。ぜひ、レッドブルをカラダに流し込んででも、完徹覚悟で味わい尽くしてほしい。

 


Live Information
HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER(SUMMER SONIC 2017)

日時:2017年8月19日(土)
会場:千葉・幕張メッセ
共演:モグワイ/ホラーズ/ライド/ビーク>/シガレッツ・アフター・セックス/ブランク・マス/マシュー・ハーバート(DJ) ほか
開場/開演:22:30/23:30
料金:一般/9,500円、サマソニ・ソニックマニアチケット購入者限定割引チケット:5,000円
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