天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週は衝撃的なニュースがありましたね。なんと、ダフト・パンクが解散してしまいました……。なんだか解散が似合わないバンドですよね」

田中亮太「23日の朝に起きたら、SNSはその話題一色でしたね。個人的に思い入れが深いのはやっぱり97年のファースト・アルバム『Homework』とその時期のライブを収録した『Alive 1997』なのですが、キャリアのいずれの時期においても、常にフレッシュな驚きと興奮を与えてくれるデュオでした」

天野「僕は最近再評価が進んでいる『Human After All』(2005年)で出会った世代で、思い出深いな~。さかのぼって『Discovery』(2001年)を聴いたときの衝撃も、いまだに忘れられません。ついでに、ミア・ハンセン=ラヴ監督の映画『EDEN エデン』(2014年)とそのサウンドトラックをこの機会におすすめしたいです。90~2000年代のフレンチ・ハウス・シーンを描いた青春映画で、ダフト・パンクと彼らの音楽も重要なシーンで出てきます。ところで今週は、BTSの〈MTV Unplugged〉でのパフォーマンスも話題でしたね」

田中生バンドをバックに歌う“Life Goes On”が最高でした。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

Wolf Alice “The Last Man On Earth
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉に選んだのは、現在のUKロックを背負って立つ人気バンド、ウルフ・アリスのニュー・シングル“The Last Man On Earth”です。タイトルからしてデヴィッド・ボウイを思い起こさせますね」

田中「すでにボウイの“Space Oddity”ビートルズの“A Day In The Life”と比べる声が多くて、〈たしかに!〉と思いました。60年代から続く英国ロックの伝統を受け継いだ、とても感動的な一曲で、バンドの新たな代表曲にふさわしいと思います。特に、エモーショナルに高まっていく後半が宇宙的で壮大。圧巻です」

天野「バンドのフロントに立つエリー・ロウゼル(Ellie Rowsell)によれば、『人間の傲慢さについての曲』で、カート・ヴォネガットの小説『猫のゆりかご』の一節『独特な旅の提案は神からのダンス・レッスン』がインスピレーションになっているそうです。この曲を収録した4年ぶりのサード・アルバム『Blue Weekend』は、6月11日(金)にリリース。とても楽しみですね!」

 

The Horrors “Lout”

田中「続いて、ホラーズの“Lout”。ダークなサウンドが特徴のUKロック・バンドによる、約4年ぶりの新曲です。ポール・エプワースのプロデュースによる前作『V』(2017年)が傑作でしたね。エプワースが得意とするエレクトロニック・ミュージック的なプロダクションと、バンド特有の耽美的な感覚を持ったインディー・センスが巧みに融合されていました」

天野「この“Lout”は『V』の延長線でありつつ、新たなモードを印象付ける一曲ですね。ブレイクビーツ風のドラムはマシーナリーですが、とにかくあらゆる音がハードでメタリックで歪んでいる。初期ナイン・インチ・ネイルズをほうふつとさせるインダストリアル・サウンドです。日本のTHE NOVEMBERSなど、ヘヴィー・ロックが台頭している潮流との共振を感じます」

田中「フロントマンのファリス・バドワン(Faris Badwan)は、“Lout”について『書きはじめたときから、このバンドが持っている――とりわけライブの際に露になる攻撃性へと舵を切ることは明確だった』と語っています。コロナ禍によってラジオやTVでのプロモーションなどを考えずにいられることが、バンドをラディカルな方向へと突き進ませているんだとか。3曲入りの新作EP『Lout』は、3月13日(金)にリリース。6作目となるニュー・アルバムも現在制作中とのことです。楽しみですね」