Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯による、最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉は、毎週火曜(歌謡)日に更新中。今週は第64回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部
【酒井優考】
ふたりの文学 “シティライナー”
POLLYANNAの対バンで観て以来すっかりファンになってしまった辻林美穂さん、そしてそのPOLLYANNAの斎藤モトキ、ドラ内山(ビーチ・バージョン)、五十嵐琢馬(Riverside Creature)からなる4人のシティ・ポップ・バンドが初のミニ・アルバム『曲集』を配信でリリース。どの曲も最高なんだけど、セカンド・シングルのこの曲が個人的にはいちばん好きです。盤で欲しい。
【天野龍太郎】
Dos Monos “Fable Now”
音像の奥深くから、ひしゃげてもつれた“God Only Knows”が聴こえてきて、ひっくり返りました。〈新たなる監獄の誕生〉とディストピアの到来を告げる荘子it。〈本当の敵〉はどこにいるのか、この曲を聴いた者それぞれが自分自身に問うてみるべきだ、とDos Monosの3人はリスナーを挑発してみせる。〈今こそ寓話を〉。想像力の死に直面したいま、〈現実〉と〈空想〉とのほつれを改めて縫い合わせるために。
Tsudio Studio feat. Neibiss “After Awas”
ぐわっとうねるシグネチャーなシンセの音を聴いて、〈あっ、ツジオさんだ〉と安心するイントロ。世界が一変してしまったいま、〈夏〉を待ち望むフィーリングでいっぱいのこの曲は、なにか特別な響きを持って聴こえてきます。〈なんでもないような時間/止められた流れ今更実感〉。Tsudio StudioとNeibissの7インチ・シングル『After Awas/エアコンディショナー』は、神戸Otohatobaが立ち上げたレーベル〈HOOK RECORDS〉から7月にリリース。
D.A.N. × Mogwai “Bend (Mogwai Remix)”
〈D.A.N.とモグワイ〉という驚きのコラボレーション。そして運命的な組み合わせでもある、とこの曲を聴いて思いました。D.A.N.の櫻木大悟さんにご協力いただいた映画「アボカドの固さ」についてのインタビューも、この機会にぜひ。
Kan Sano “DT pt.3”
“DT pt.2”(2018年)の続編だというシングル。Kan Sanoさんはもちろんご自身の歌声やヴォーカリストとのコラボレーションも素晴らしいのですが、こういったインストで真価を発揮する音楽家なのでは、と思っています。この削ぎ落とされたビートとグルーヴ、研ぎ澄まされたエディットの妙。プロデューサーとして未踏の領域に踏み入っているのではないかと思いました。ダンサーたちから募集した動画を編集して後日ミュージック・ビデオを制作するとのことで、そちらも楽しみ。Kan Sanoさんの音楽は、たしかに身体を揺らすものだと思います。
のろしレコード “のろし”
折坂悠太+松井文+夜久一によるレーベルでありグループでもある〈のろしレコード〉が、“のろし”のニュー・ヴァージョンを配信リリース。すがすがしく、リラクシンでフレッシュなフォーク・ソング。〈ニッポン〉に息づく〈アメリカ〉を感じます。
mori_de_kurasu “After”
Local Visionからリリースした『Forest Room』や〈Yu-Koh β版〉でのライブも素晴らしかった森で暮らすさん(mori_de_kurasu)の新曲。ニューエイジとジャズが出会ったかのような独特の陶酔的なムードと質感、センチメンタルなメロディーラインは、森で暮らすさんならでは。細かく刻まれるビートも森で暮らすさんらしいのですが、今回はいつも以上にエレクトロニカ的。エイフェックス・ツインや2000年代のレディオヘッドなどなどを思い出しました。
ヨルシカ “春ひさぎ”
ヒットした昨年のアルバム『だから僕は音楽を辞めた』と『エルマ』から気になっているヨルシカ。彼らが7月29日(水)にリリースするニュー・アルバム『盗作』から、“春ひさぎ”がリリースされました。ゴシックなムードとブルージーでオールド・タイム・ジャズ調のサウンドで、ヨルシカのおとぎ話のような、シアトリカルな音楽世界に引きずり込まれます。
【小峯崇嗣】
碧海祐人 ”Comedy??”
愛知県を拠点に活動するSSW、碧海祐人が新曲”Comedy??”をリリース。R&Bやポップスをブレンディングさせた繊細なメロディーが特徴の彼の音楽性。また気怠げでシルキーな甘い声で歌われる独特な世界観の歌詞にも注目です。君島大空や松木美定など好きな人にぜひおすすめです。
そんな彼にTOWER DOORSからメール・インタビュー〈6つの質問〉も行っていますのでお見逃しなく。
Takara Araki “Hate”
トラックメイカー/シンガー・ソングライターのTakara Arakiが新曲”Hate”を6月5日にリリースしました。ダークで不穏なサウンドが特徴的な本楽曲は、重低音のシンセと雷や嵐の音をなどをサンプリングしたサウンドが絡み合う実験的な面もみられた新鮮な一曲です。〈吐けよ 全部 これで終わりか〉という歌詞のフレーズが頭から離れません。
佐々木海真 ”夜の帳が下りたら”
名古屋を拠点に活動する宅録音楽家、佐々木海真が新曲”夜の帳が下りたら”をストリーミングで配信開始しました。ローファイなビートに、メロウなギターやシンセのサウンドが絡み合った1曲で、ノスタルジックでロマンティックな雰囲気がたまらないです。
chillbill. “hitori hour”
先週も紹介した〈夜のネオトーキョーを歩く〉ちる井とorocodatのデュオ、chillbill.が6月20日(土)にEPリリースする『night remote』からYouTubeで”hitori hour”を先行で公開。彼らの特徴的な淡く切ないチル・ポップに、今回はトラップ・ビートを取り入れた新鮮味を感じさせる一曲。ちなみに新作EPは、彼らがお互いコロナの中で自宅待機が強いられる中で、初のリモートで制作した楽曲を集めたとのこと。
chillbill.に行ったメール・インタビューも併せてぜひ読んでみてください。
RUBY LEMON “Mary Madelaine”
福岡を拠点に活動するベッドルーム・アーティスト、RUBY LEMONが約半年ぶりとなる新曲をリリース。ヴェイパーウェイヴさも感じられるレトロ・ポップなシンセ・サウンドによるサイケデリックな雰囲気と、涼しげでキュートなメロディーが同居した一曲です。
気になった方は、去年RUBY LEMONへ行ったメール・インタビュー〈6つの質問〉も併せてチェックしてみてください。
【田中亮太】
HANDSOMEBOY TECHNIQUE “抱きしめた feat. 曽我部恵一”
森野義貴さんのソロ・ユニット、HANDSOMEBOY TECHNIQUEが超久しぶりの新曲をリリースしました。いったいいままで何やってたんでしょうかね、天才なのに! ともあれ曽我部さんをフィーチャーしたこの曲も、HBTならではの優美で清廉な天上音楽に仕上がっています。合わせて過去のアルバム2作(いずれも名盤!)もサブスク解禁。久しぶりの人も初めての人も聴きましょう。
ミツメ “ダンス”
4月の“睡魔”に続いて、ミツメが早くも新曲をリリース。複雑なリズム・パターンとムーディーなギターのリフレイン、それに憂いを帯びたメロディー。これはミツメ流のエモかも。洋次郎くんのドラムがすごい。
PunPunCircle “Spring”
そんなミツメのライブ・サポートでも知られるSSW、PunPunCircleが4年ぶりのEP『Spring』を発表。表題曲のMVが公開されました。エキゾティックでサイケデリックなPunPun節は変わらずも、いつになくビートが立っていてダンサブル。現在進行形のラテン・ポップスへの和製解釈としてもおもしろい。
KONCOS “I Like It”
“All This Love”で新モードを告げたKONCOSからのさらなる新曲。シカゴ・ラップ/ソウルを3ピースのアンサンブルに昇華せんとしてきた近年の彼らにとって、これはひとつの完成形でしょう。加えて、ストリングスの参加によって初期のKONCOSが取り組んできたチェンバー・ミュージックの要素も合体。過去と現在が手を取り合いながら、未来へと向かう。そのさまがとても感動的。