WOLFの新譜が出る年は、メタルはとりあえずそれ聴いときゃ間違いないのだ!という非常に乱暴な持論がございます。およそヘヴィ・メタルが好きだという人でもしこのバンドが合わない人が居たら、それは実はヘヴィ・メタルが好きではなかったのだと結論づけても良いくらいに真っ当なメタルをやり続けている素晴らしいバンドです。…今年の夏にね、出るんですよ新譜が。もう僕は楽しみで楽しみで、我慢ができないから超フライングでここに思いのたけをぶつけてしまいます。
バンドの結成は1995年ですから、もはや中堅の域すら脱して立派なベテランですね。ギター兼ボーカルのNIKLAS STALVIND(正確にはSTALVINDのAの上に○みたいなのが付いています)が今も残る唯一のオリジナル・メンバーとなりますが、この人=WOLFという認識で間違いはないでしょう。
セルフタイトルのデビュー作は地元スウェーデンのNo Fashion Recordsから2000年にリリースされました。
うわー、若いなー…ってな感想はどうでも良くて、お聴きの通りIRON MAIDENからの影響丸出しなところからスタートしています。しかしですね、2000年といえばまだNWOTHMなんてぇ言葉が出てくる以前のことでありますから、こういう音は相当性根が据わっていないとなかなか出せなかったのです。然るにこのアルバムが一部好事家の熱心な支持を得るに留まってしまったのも、時代的にむべなるかなといったところでした。
2枚目、『Black Wings』が出たのは2002年。キャリアを積んだ分、順当な成長を聴かせてくれる好作です。
これもMAIDEN臭さ満載ではありますが、若さ故にどこか歯止めの効かない無謀さがあって、その暴走っぷりがそこはかとないオリジナリティに昇華されつつあるように感じます。また、本作にはMERCYFUL FATEの“A Dangerous Meeting”のカバーが収録されていて、僕のような聴き手の信頼度は大きくアップしました。うん、こいつ等は分かっている!ってなもので。
2004年発表の3枚目、『Evil Star』はIRON MAIDENの影響下から抜け出し、もっと広義なクラシック・メタルの再構築に成功したアルバムです。加えてサウンドのアウトプットについては本作でほぼ固まったと見て間違いないでしょう。
このアルバムにもカバーが2曲、SLAYERの“Die by the Sword”とBLUE OYSTER CULTの“(Don't Fear) The Reaper”です。特に歪みまくったギターでガシガシ演奏される後者はかなり秀逸。こういうサウンドアレンジは、僕にはちょっと発想できません。
そして遂に訪れたブレイクスルーは2006年。4thアルバムの『The Black Flame』は押しも押されぬ大傑作です。NIKLAS STALVINDの、歌い手としての飛躍的成長がWOLFを一流のメタル・バンドへと変身させました
初期の頃にあったフラフラ感は皆無で、実に堂々とした歌唱じゃありませんか。プロダクションの向上と相俟って大物の風格さえ漂わせる始末です。これを最初に聴いた時、僕は思わず、こりゃ凄ぇことになった…って声に出してしまいましたもの。
で、このバンドのナニが凄いって『The Black Flame』以降、ずーっとピークの状態を維持しているのですよ。2009年の5枚目、『Ravenous』ではアルバムトータルで各曲の緩急を自在に操り、もはや手の付けられない状態に突入しています。
因みにこのアルバムのプロデューサーはROY Zでしたね。
続く6thアルバム『Legions of Bastards』(2011)に至っては、いともさりげなくJUDAS PRIEST的なリフ・ワークさえも繰り出して見せました。
これを要するに、ヘヴィ・メタルをヘヴィ・メタルたらしめる要件を完全に自家薬籠中のものとしたってことです。これね、実は大変なことなのですよ。IRON MAIDENとJUDAS PRIEST、その両方を取り込んで破綻なく成立させたのって、実はWOLFが初めてなんじゃないですかね?…すみません、思い入れが激しくてちょっと大袈裟に書き過ぎましたw
まぁ、そんなこんな。ことほど左様に物凄いバンドの新譜が出る訳です。これを期待せずに居れましょうか? 否、それは絶対無理です。最後に先日公開されたばかりの新曲を貼り付けて、『Devil Seed』と名付けられたアルバムが8月末にリリースされるのを待ち侘びることといたしましょう。
あれぇ、今回はちょっと落ち着いた感じ?と一瞬油断させておいて実はメインリフが7-7-7-8の変拍子。しかもハットを半分しか刻まないので異常に気持ち悪いノリになっています。お披露目にこんな変な曲を持ってくる辺りのふてぶてしさがもう、好き者には堪りませんですよ。