メタルファンのジャズピアニストとして知られる西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。2025年もよろしくお願いいたします! 新年第1回目は、リイシューされたNHORHMの初期2作について。メタルの曲をピアノトリオでジャズアレンジする、という西山さんの異色プロジェクトの作品を振り返ってもらいました。なおNHORHMは、今週末1月10日(金)に東京・赤坂Jazz Dining B-flatでライブを開催。詳細は記事の後半部分でチェックしてください。 *Mikiki編集部

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先月12月4日、NHORHMのファーストアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』(2015年)とセカンドアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal II』(2016年)が、リマスターで再発売となりました。今こうしてMikikiでメタルの連載を持っているのも、このアルバムがきっかけです。

このファーストとセカンドは、リリース当時、ジャズとしてはかなり話題にして頂いたのですが、しばらく入手困難になっていました。その間に、Mikikiでの連載や、その他様々なメタル関連の雑誌やイベントで皆さんに知ってもらう機会が増えたのに、ずっと大事な1枚目がなかったんですよ。

そもそも、〈きっとジャズ方面からもメタル方面からも、怒られるであろう〉と思って出発した企画。1枚リリースして、怒られて終わると思っていたので、1枚目は必然的に私の青春を濃縮したものとなっています。

NHORHM 『New Heritage Of Real Heavy Metal』 APOLLO SOUNDS(2024)

続く2枚目は、ほとんどが1枚目の選曲時にすでに候補に挙がっていたもので、アレンジしてリリースする順番が、たまたま後になっただけという部分が大きいです。

NHORHM 『New Heritage Of Real Heavy Metal II』 APOLLO SOUNDS(2024)

この最初の2枚が、無事どこでも手に入るようになって、とても嬉しいです。

 

NHORHMというアルファベットの並びは、ご存知ない方には〈なんだこれ?〉と思われるでしょうが、メタラーにしかわからない符牒のようなもので、NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)からきています。

NWOBHMとは、1979年頃から起こったヘヴィメタル史における大事なムーブメントで、ヘヴィメタルという音楽を形作った一大革命期。

ディレクターや関係者と企画会議中、「バンド名どうしようか……」と悩み、メンバー3人の名前を並べて紙に書いていたところ、西山瞳(NH)、織原良次(OR)、橋本学(HM)で、字面がNWOBHMそっくりに。「ああああっ!」と声を上げたのを覚えています。

しかも私、1979年生まれよ! 持ってるかも! これよ!

今思えば、陰謀論みたいですね(笑)。

 

元々、このアルバム制作のディレクターであるAPOLLO SOUNDSの阿部淳氏と、仕事の打ち上げの席の雑談から始まった企画。バンドメンバーもいなければ、メタル系のレパートリーもゼロからのスタートでした。あるのは、メタルファンとしての私の頭の蓄積だけ(笑)。

阿部さんは現在、君島大空やCRCK/LCKSなど、とても格好良くアーティスティックなJ-POPのリリースやマネジメントをしていますが、ずっと阿部さんの周りにはとても優秀なジャズミュージシャンが集まっています。

フレットレスベース奏者・織原良次もその一人。東京ザヴィヌルバッハ(坪口昌恭)や橋爪亮督グループでAPOLLO SOUNDSと関わりが多く、ドラムス橋本学も橋爪亮督グループのメンバー。阿部さんも含め皆同世代で、あの時代、1990年代の音楽の流行、バンドをすること、楽器をすること、雑誌文化、メタルの見られ方などを共有できて、かつコンテンポラリージャズシーンで活躍し、オープンマインドなメンバーで始めることができました。

曲のアレンジの解説は、当時沢山インタビューを受けていたので、Mikikiの過去インタビューをぜひご覧下さい。