〈BRIAN SHINSEKAIの壺〉第3回! 今回が最終回です。最後なので、音楽性の論理などから外れた感情の部分を抽出して、思いっきり語らせてください。
僕は、10代の頃は友人関係や恋愛関係などに悩んでいる人が羨ましいと思うくらい、(他人に)干渉さえできない自分に苛立ったり、憤りを感じたりしていました。そんななか、音楽や映画や漫画などが、時にリアリズムな鋭い言葉で、時に非現実的でロマンティックに優しく、いつでもどんな時でも僕を救ってくれました。誰しもそうだと思いますが、尊敬するロック/ポップスターたちというのは、父のようであり、母のようであり、友人のようであり、兄弟のようであり、教師でもあり、牧師でもあり、そして何よりも最大の理解者なのです。重要な局面を迎えた時、僕がみずからを奮い立たせるために必ず聴くのは、そのアーティストがこの世を去る直前に出した、最後の魂の結晶のような、エネルギーが凝縮された歌です。
まず、クイーン“The Show Must Go On”です。フレディ・マーキュリーが存命中の実質的なラスト・アルバム『Innuendo』(91年)のラスト・ナンバーであるこの楽曲は、立つこともままならないフレディのためにブライアン・メイが書き下ろした渾身の一曲で、〈死〉と向き合わなければならない悲痛な詞をフレディは受け入れ、ヴォーカリストとしてのすべての技術とソウルを余すところなく出した絶唱の曲になっています。ブライアン・メイのレッド・スペシャル(ギター)も、咽び泣いています。
そして、ジョージ・マイケル“Let Her Down Easy”。フレディの追悼ライヴでの音楽史に残るパフォーマンスからクィーン繋がりもありますが、彼が亡くなったのは2016年のクリスマス。“Last Christmas”のままにこの世を去られました。この楽曲は2012年のリリース、ラスト・アルバムにしてライヴ盤『Symphonica』の収録楽曲で、その後のみずからの運命をすべて理解していたのではないかと思うほど、ここまで優しく〈許し〉を悟った声を僕は聴いたことはありません。この歌を聴くと、愛に悩み続けたアーティストの最後に出した答えがわかるような気がします。
最後に、デヴィッド・ボウイ“Lazarus”。2016年に火星に還っていった彼のラスト・アルバム『Blackstar』(2016年)収録のこの楽曲は、MVで自身の死をも芸術として昇華し、作品にしてしまうという、本当に〈地球に落ちてきた男〉――愛溢れる宇宙人としての格好良すぎる幕引きで勇気づけてくれました。MVのラストでクローゼットに入っていくのは「ナルニア国物語」のオマージュ。きっと、次の世界でも音楽に新しい価値を生み出していることでしょう。
今回ご紹介したアーティストの気迫や想いに突き動かされ、それが細胞となって制作したのが僕のファースト・アルバム『Entrée』です。偉大なる遺志を引き継ぎ、僕は僕で、自分にしか作れないSHINSEKAIを皆さんに証していきたいと思います。全3回、ありがうございました! BRIAN SHINSEKAIでした。またお会いしましょう!
BRIAN SHINSEKAI
2枚のミニ・アルバムを残したブライアン新世界、バンドのBryan Associates Clubとしての活動を経て、2017年9月に現名義でのプロジェクトを始動。その第一歩となるファースト・アルバム『Entrée』(ビクター)がいよいよリリース!
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