©Van Cliburn

磨き抜かれたタッチと、ファツィオリで際立つスクリャービンの色彩美!

 2010年の仙台国際コンクールの1位を経て、2013年のクライバーン・コンクールで優勝したヴァディム・ホロデンコ。コンクール覇者ならではの磨き抜かれたテクニックに加え、その抑制された情感がひっそりと滲み出るようなバランス感覚がじつにいい。

 86年ウクライナ生まれ。モスクワ音楽院では、「もっとも影響を受けた」という名教授ヴェラ・ゴルノスタエヴァに師事した。彼女のモットーであった「ステージの上で正直であること」は、聴衆の前で演奏する時にはいつも心がけているという。

VADYM KHOLODENKO スクリャービン: 前奏曲、練習曲ほか Harmonia Mundi(2018)

 今回リリースされるスクリャービン・アルバムは、陰影感をたっぷりと含んだ、濃厚な色彩美が際立っている。これらの音楽には、子供時代から慣れ親しんできたが、数年前にこの作曲家を〈再発見〉したのだという。そのきっかけとなったのは、《24の前奏曲op.11》だった。「この作品は私の持っていた考えに色々な変化をもたらし、演奏を違ったレベルに導いたように思います。ペダルの使用の仕方、音色、鍵盤のタッチなどなど。スクリャービンは私のレパートリーの重要な部分を占める作曲家なのです。現在も、彼の他の作品に取り組んでいます」

 アルバムは、初期に書かれた前奏曲集、そして中期の充実したソナタが2曲含まれ、晩年の詩曲「焔に向かって」で締めくくられる。作風の変化を強く意識させる構成だ。「スクリャービンの作風は多くの変遷を辿りました。音楽学者は、彼の作風の大転換が少なくとも2回あったと指摘しています。彼の作風変化の特徴の一つひとつについて話すことは容易なことではありませんが、一つ確実に言えることは、彼ほどに素晴らしい後期の作品を残せるまでの変化と発展に成功した作曲家は少ないということです。彼の後期の作品は音楽史上ユニークな創造物であり、その当時の人々にとって〈神秘的〉でありましたが、現在も尚、そうあり続けているのです」

 ホロデンコは、ファツィオリ社のピアノに魅せられたピアニストの一人でもある。「このCDの録音で私が目指したことを達成するために、ファツィオリは最適な選択でした。ファツィオリは非常に幅広い音の色彩、ペダリングの柔軟性とタッチを備えていました(いくつかの曲ではファツィオリ独自の第4ペダルも使用したんですよ!)。現代の多くのピアノが備える標準的なソリューション以上のものを提供してくれるので、このピアノを弾くのはいつも楽しみなんです」

 ハルモニア・ムンディ・フランスからリリース相次ぐホロデンコ。プロコフィエフ作品集の第2弾も近々発売されるという。

 


LIVE INFORMATION

オンドレイ・レナルト(指揮)プラハ放送交響楽団
○6/21(木)19:00 盛岡市民文化ホール
○6/22(金)18:30 リンクステーションホール青森
○6/24(日)19:00 サントリーホール

ヴァディム・ホロデンコ リサイタル
○6/26(火)浜離宮朝日ホール
○6/30(土)ザ・シンフォニーホール
fazioli.co.jp/news/2017/11/Vadym-Kholodenko-2018-Tour