先日〈ゼロ年代に聴いていたアルバム〉について書くという仕事を受け、改めて時代と音楽の関係について考えていました。せっかくだからそういった〈時代〉的なものの頭数に入るような作品が作れたらいいなと思って日々過ごしていますが、そんなことを考えながら聴いた3枚を今回はご紹介。

PIZZICATO ONE わたくしの二十世紀 ユニバーサル(2015)

前号で大特集のボックス購入後いてもたってもいられなくなり、小西康陽さんの著作を入手して貪り読みながらこちらを改めて聴いていたのですが、なんとも言い得て妙なタイトルです。テレビ、映画、電話、あと資本主義、戦争、恋愛など小西さんの取り上げてきたモチーフが少しづつ変化しつつある今世紀。これがNetflix、スマホとかに言い換えられるのだとしたら、なんだか切ない気もしてしまいます。シンプルなアレンジがまた、そんな〈いま〉との差を余計に浮かび上がらせます。

 

パソコン音楽クラブ DREAM WALK パソコン音楽クラブ(2018)

そんな〈いま〉の新譜をご紹介。ワインとサックスが並ぶ名AORのジャケを思わせるデザインですが、こちらの写真は熱海のジョナサン。懐かしさはチェーン店に、思い出はショッピングモールにある我々世代の金字塔がついにリリースされました。90年代の音源モジュールなどを中心に使うスタイルはデジタル風味でありながらノスタルジック。全体的なまとまりも素晴らしいですが“Inner Blue”の絶妙な寂寥感には特にヤラれました。名曲です。ちなみに〈どんなフザけた野郎どもやねん〉と秋葉原に観に行ったライヴで衝撃を受けたのも数年前になります。界隈で久々に出た決定打。

 

KIRINJI 愛をあるだけ、すべて ユニバーサル(2018)

らしからぬ、と言っていいのかわかりませんがタイトルに意表を突かれた新作、素晴らしかったです。メジャー・デビュー20周年、50歳も近いというのにこの〈新曲が良い〉という現役感にはヤラれます。“非ゼロ和ゲーム”という単語をこんなサラッとポップソングにできますか普通!? 某ラジオで「トーフさんのこと45歳くらいだと思ってました」と言われてショックでしたが(笑)tofubeatsと同い年の弓木氏のヴォーカルが絶妙な“After the Party”もクセになります。

 


tofubeats(トーフビーツ)
90年生まれ、神戸在住のトラックメイカー。向井太一、TENDRE、堀込泰行、m-flo、大比良瑞希、藤井隆、平井堅、NGT48らの楽曲を手掛け、劇伴と主題歌をプロデュースした映画「寝ても覚めても」も9月1日よりいよいよ公開! さらに7月27日には“ふめつのこころ”に続くニュー・シングル“RUN”も配信リリース! 多忙な夏を越えるといろいろ動きも加速していきそうなので、〈tofubeats.persona.co/〉にて以降の最新情報も常にチェックしておきましょう!