傑作盤『リスト: 超絶技巧練習曲集』はつい最近のことの様な気がしていたが、もう10年も前のことだったか。ドイツ・グラモフォンでのメジャーデビュー10周年を迎えるアリス=紗良の新作は久々のピアノ・ソロで、夜の帳をテーマにしたオール・フランス・プログラムである。協奏曲や物珍しい選曲、あるいは他アーティストとのコラボレーションで異彩を放っていた彼女だからこそ、あえてのオーソドックスな選曲でその底力を感じる。“ベルガマスク組曲”と“夜のガスパール”の熱量と、“夢想”“ジムノペディ/グノシエンヌ”“亡き王女のためのパヴァーヌ”ら小品のアクセントがなんとも心地いい。