Testing Positive 4 The Funk
来日も話題になったジョージ・クリントン率いるPファンク軍団から、実に38年ぶりとなるパーラメント名義でのニュー・アルバムが登場! 圧倒的なヴォリュームでマイペースに迫る『Medicaid Fraud Dogg』は、終わりなきファンク宇宙をさらに拡大していく怒涛の2枚組だ!!

PARLIAMENT Medicaid Fraud Dogg C Kunspyruhzy/Pヴァイン(2018)

 

〈P〉の名の下に古今のグルーヴが集った作品

 38年ぶりの新作とは言っても、2014年にはファンカデリックの33年ぶりの新作アルバム『First You Gotta Shake The Gate』があったし、何より幾度かの来日やライヴを含めたジョージ・クリントンの活動が賑やかなこともあって、ここ数年における宇宙ファンク成分の摂取量には十分なものがあった。それでも、彼らのファンクに〈P〉が冠される理由のひとつであり、長らく空白のピースであったパーラメントの帰還には期待を高まらずにはいられない。コンセプトありきのパーラメントの伝統に則り、今作にも〈大手製薬会社の欺瞞に対する唯一の解毒ドラッグ音楽〉……というざっくりしたテーマがあるようだが、知っていても知らなくても問題なし。1時間半に渡りネバネバ、ダラダラ、ワサワサと繰り返されるグルーヴの快楽は、ポップなゴッタ煮だったファンカデリックの先述作に比べると、核心を掴めるようで掴めない奥行きにハマり込む気持ち良さがある。マッドボーンのメロウな歌声にジュニーを重ねてしまう“I'm Gonna Make U Sick O'Me”があれば、トラップを意識したと思しき“Mama Told Me”もあり、ピー・ウィー・エリスを迎えたホーン隊のキレがあれば、クリス・デイヴを迎えたジャジーなもたつきと粘りもある。〈P〉の名の下に古今のグルーヴを集わせた、御大の舵取りの冴えは健在だ。 *池谷瑛子

 

いつも通りのヌルヌルした良さ

 ファンカデリック名義による33年ぶりのアルバムだった3枚組の『First Ya Gotta Shake The Gate』(2014年)もまだ聴ききれていない気がするが、ともかくパーラメント名義を用いた38年ぶりの新作『Medicaid Fraud Dogg』がリリース。その4年の間にはバーニー・ウォーレルやジュニーの訃報があり、そのバーニーやブーツィー・コリンズのアルバムも出ていたが、世間的には総帥ジョージ・クリントンがケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』(2015年)に客演したことが何より重要なのだろう。コンスタントに訪れる再評価の波を捕まえるのがうまいジョージはそこを契機にブレインフィーダーとソロ契約を結び、レジェンドらしい一つの区切りを迎えんとしているわけだが、もちろんPファンクのグルーヴは延々と続いていく。この『Medicaid Fraud Dogg』はそのようにズルズルと続いていく終わりなき運動体としての意志の表明と言えるのかもしれない。

 今回は全24トラック仕立ての2枚組。ヴォリュームこそ『First Ya Gotta Shake The Gate』より少ないものの、コンピ的な側面も強かった同作に比べれば、曲ごとの船頭はさまざまながらも一つのユニット感をキープしながらまとめられているように思う。引き続きジョージと息子のトレイリュード(トレイシー・ルイス)の主導曲も多いが、それ以上に注目なのは件のファンカ盤から頭角を表してきた孫のトレイゼイ(トレイシー・ルイス・クリントン)による舵取りだ。ジュニーも絡んだ冒頭の“Medicaid Creep”は古今の円環がル−プになった逸曲と言えるだろう。ジョージの孫世代ではキャンディ・アップル・レッドを組むトニーシャとパタヴィアンも目立っていて、その脇でブラックバードをはじめとするお馴染みのヴェテランたちが要所を固める作りも盤石……とか書いてはみたものの、トラップというよりはノー・リミットな“Mama Told Me”、“Aqua Boogie”を連想させる“Kool Aid”、バーニーの過去曲をリメイクした“Insurance Man”などなど聴きどころは曲の数だけあるので、大仰に構えず時間のあるときにヌルッと聴くのがいいと思われます。 *出嶌孝次