コラム

降谷建志 『THE PENDULUM』 振り子のように、感情が動いた分の残像も含めて描かれる〈弧〉みたいなものを表現したい

降谷建志 『THE PENDULUM』 振り子のように、感情が動いた分の残像も含めて描かれる〈弧〉みたいなものを表現したい

さまざまな客演参加、そしてDragon Ashのフロントマンとしてロックシーンの最前線で邁進し続ける降谷建志。約3年を経て完成したソロ2枚目のオリジナル・アルバム『THE PENDULUM』は、オーガニックな高揚感とやわらかな歌声が溢れ出す、ブログよりも日記よりも赤裸々で美しい、日々の感情の物語。

ほんの一瞬見た景色や書物の細部までを、映像のように鮮明に記憶する能力を、映像記憶と呼ぶ。幼い頃には備わっているその能力は、わずかな人を除き、思春期の前に消失してしまう。だから画家は感情のまま色を重ね、音楽家は旋律やリズムを奏でる。降谷建志の2枚目のソロ・アルバム『THE PENDULUM』に綴られているのはまさに、一人の人間として生きる降谷自身の日々の感情と心象風景だ。それは彼のソロ・デビュー・アルバム『Everything Becomes The Music』の題名にも刻まれていた、日常のすべてが音楽になるという、音楽家としての彼の命題でもある。

降谷建志 THE PENDULUM Getting Better(2018)

「動きが激しくなるほど、反動でその反対側にも揺れる振り子(PENDULUM)のように、感情が動いた分の残像も含めて描かれる〈弧〉、みたいなものを音楽で表現したいという思いがあるんだよね。だから今回は感情の浮き沈み、潮の押し引きみたいな両端をきちんと表現していくのはテーマでもあった。その都度その都度、感情を抑えずにポジティブもネガティブも書き留められたと思う」

遠くの街まで夜行バスでやって来るファンと過ごした夜のこと(“Prom Night”)、今夏のフェスで見た光景(“落日”)やそこで交わした約束(“セントエルモ”)、美しい轟音ラヴソング(“All I Want Is You”)など。疾走感あるキーボードの音色を合図に、美しい高揚を描くオーガニックなバンドサウンドとやわらかな歌声がさまざまな物語を描いていく『THE PENDULUM』は、1stソロ・アルバムと同様、詞曲はもちろん、楽器演奏や録音もすべて降谷が一人で制作している。ただし今回は、“Playground”にHEY-SMITHがホーンで参加。“Minesweeper”と“ぼくらの逆襲”ではPABLOがギターソロを奏で、“ワンダーラスト”の冒頭では降谷の愛息が弾くセンチメンタルなキーボードのリフがループされるなど、他者の要素も少し増えた。

「自分でホーンを演奏出来ないなら素晴らしいバンド仲間に参加してもらえばいい。ソロだから全部一人で……がルールでもないからね。ソロでライヴ経験を積んだことも大きいよ。今は演奏するメンバーの顔を浮かべて曲も作ってる。だからライヴユースな曲も増えたと思う。そこは1stと大きく違うよね」

数々の名曲を生み出してきた降谷の神髄でもある、日本語詞の割合が増えたことも今作の大きな変化だろう。10月22日からはThe Ravensと名付けられたバンド(PABLO、武史、渡辺シュンスケ、桜井誠)とともに初の全国ワンマンツアーを開催。ソロアーティスト、降谷建志の本領発揮がいよいよ始まる。

関連アーティスト