多ジャンルの融合、クリエイティビティ――どれを取っても新たな音楽シーンを牽引するバンド
2019年のっけからヤバいアルバムが到着した。
King Gnuはギター/ヴォーカルの常田大希を中心に2017年結成。SuchmosやNulbarichといったヒップホップやジャズ、ソウルやファンクの要素を取り入れたバンドの潮流も汲みつつ、しかし彼らと全く異なるのは、弦楽や、ゴスペルにも通ずるコーラスワークを多数取り入れていることだろう。
弦楽に関しては、かつて常田があの小澤征爾のアカデミーにチェリストとして籍を置いていたと言えばうなずけるかもしれない。本作でも多くの楽曲でチェロ奏者としての腕前を披露している。一方メンバーの井口理(ヴォーカル/キーボード)は、大学で声楽を専攻。これがKing Gnuの複雑で幾重にも重ねられたコーラスワークに結びついてくる。
このように、これまでにないほど多様なジャンルを取り入れた音楽は結局、〈King Gnu〉としか言い様のない独自のジャンルを確立しており、いつしかそれは〈トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル〉と称されるようになった。
そこには常田大希らによるクリエイティブ・レーベル〈PERIMETRON〉が手掛けるアートワークやロゴ・デザイン、MVにおける独特のセンスも多分に含まれているのだから、向かうところ敵なしだろう。
また、リード曲“Slumberland”のように、怒りや悲哀に溢れ、その中に希望というよりは祈りのような光が差し込む歌詞も特徴的だ。このオーケストラルなロックは、近年のJ-Rockよりもむしろロックオペラなどへの共通点を見出せるかもしれない。
兎にも角にもKing Gnuが、〈平成以後〉の新たな音楽シーンを牽引するバンドなのは間違いないだろう。