COLUMN

ザ・クレイプール・レノン・デリリウム『サウス・オブ・リアリティ』 ショーン・レノンとレス・クレイプールによるプロジェクト、注目のセカンド・アルバム!

ザ・クレイプール・レノン・デリリウム『サウス・オブ・リアリティ』 ショーン・レノンとレス・クレイプールによるプロジェクト、注目のセカンド・アルバム!

「レスと僕は魔術師のジュースを作っていたのさ。現実が解明されていくのを目の当たりにしながら、穏やかになろうとしていたんだ」(ショーン・レノン)

 プライマスのフロントマンにして、超絶技巧のベーシストでもあるレス・クレイプール。ソロ活動に加えて、ザ・ゴースト・オブ・ア・セイバーの活動でも知られるマルチ楽器奏者のショーン・レノン。このちょうど一回り年の離れた2人が、“ザ・クレイプール・レノン・デリリウム”としてのファースト・アルバム『Monolith Of Phobos』をリリースしたのは、2016年のこと。当時は1回限りのプロジェクトと見る向きもあったが、2人は各自のプロジェクトと並行する形で活動を続け、17年8月にはライヴで披露していた曲を中心とした4曲入りのカヴァーEP『Lime And Limpid Green』をリリースした。その4曲のカヴァーとは、ピンク・フロイドの“天の支配”、ザ・フーの“ボリスのくも野郎”、キング・クリムゾンの“クリムゾン・キングの宮殿”、フラワー・トラベリン・バンドの“SATORI PARTⅠ” と、すべて60~70年代のロックの名曲だ。このカヴァーの選曲が物語っている通り、ザ・クレイプール・レノン・デリリウムは、プログレッシヴ・ロック志向を打ち出したオルタナティヴ・ロック系プロジェクトとして、各方面から注目を浴びてきた。

 そんなザ・クレイプール・レノン・デリリウムのセカンド・アルバムが、『サウス・オブ・リアリティ』である。前作に引き続き、本作も2人の共同プロデュースだが、今回は作詞と作曲もすべてレスとショーンの共同名義になっている。また、今回は2人だけでほぼすべての楽器を演奏しているが、全9曲のうちの3曲にはライヴ活動を共にしてきた元Cakeのパウロ・バルディ(ds)が参加している。

THE CLAYPOOL LENNON DELIRIUM South of Reality ソニー/Ato(2019)

 アルバム・カヴァーの絵は、SF関係の書籍や雑誌の表紙を数多く手掛けている安田尚樹の作品。そしてファースト・シングル“ブラッド・アンド・ロケッツ”も、宇宙絡みの曲である。アメリカのロケット開発に尽くしつつも、アレスター・クロウリーが興したカルト宗教にはまって失脚したジャク・パーソンズを題材とした曲だ。ちなみにアレスター・クロウリーは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ…』のアルバム・カヴァーに登場している一人である。こうした背景を持つ“ブラッド・アンド・ロケッツ”は、67~68年頃のビートルズ、より具体的に言うと、“ベイビー・ユーア・リッチマン”や“アイ・アム・ザ・ウォルラス”などの流れを汲むポップである。ただし、〈Blood and Rockets:MovementⅠ, Saga of Jack Persons-MovementⅡ Too the Moon〉という原題が示しているように、シングルであるにもかかわらず、2部構成による約6分30秒の長尺ナンバー。イントロからスペイシーなシンセサイザーの音が聞こえてくるし、レス・クレイプールのメロディとグルーヴをどんどん編み出していくベースも、〈中~後期ビートルズ×カンタベリー系プログレッシヴ・ロック〉的な雰囲気を醸し出している。ただし、前作と比較すると、今回のアルバムはメロトロンが目立たず、その分、プログレっぽさは減退している。が、その代わりにビートルズの音楽的遺伝子が随所に組み込まれていて、また、SF的なモチーフや意匠が目につくアルバムになっている。

 “クリケット・クロニクルズ・リヴィジット”も、注目すべき曲だ。これも原題は〈Cricket Chronicles Revisid:PartⅠ, I Ask Your Doctor PartⅡ, Psyde Effects〉という2部構成の曲で、長さは6分30秒弱。栄養をサプリメントなどの薬に依存しがちな現代社会に対する批評を込めた曲だという。音楽的特徴は、前半がインド音楽と北~西アフリカ音楽を混ぜ合わせたようなグルーヴに貫かれていることで、しかもシンセサイザーのメロディはアラブ風。こちらは、〈中~後期ビートルズ×レッド・ツェッペリン〉的な曲と言えるだろう。

 なお、日本盤には、前述の『Lime And Limpid Green』がまるごと追加収録されている。よって日本のフラワー・トラベリン・バンドの“SATORI PARTⅠ”で締め括られるが、このザ・クレイプール・レノン・デリリウムによるカヴァーが醸すある種の禍々しさは、本編のエコーのようでもある。

TOWER DOORS
pagetop