5時間を超える前作『ハッピーアワー』が国内外で高い評価を得た濱口竜介の商業映画デビュー作。性格は対照的だが同じ顔をした男二人をヒロインがどちらも好きになってしまうという荒唐無稽な物語を、濱口は厳格な視線のサスペンス劇として見事に撮り上げた。分かり合えない人間同士の煉獄の物語は、ほとんどホラー映画のようですらある。同じ顔が出会うレストランのシーンや土手の疾走シーンの素晴らしさ! 主演の唐田えりか、東出昌大から脇役の仲本工事に至るまで役者陣も絶品。テン年代の日本映画を代表する傑作だ。