次々と切られる強力なカードが築く圧倒的なオリジナリティー

 劇伴作家としての目覚ましい活躍ぶりはもちろん、近年はDo As Infinityや西川貴教らへの楽曲提供/プロデュースでも印象深い仕事を残している澤野弘之。その雄弁かつドラマティックなサウンドはいまや日本のポップス・シーンにおいて広く認知されているが、彼の音楽プロジェクトによる3作目『R∃/MEMBER』は、その記名性の高いオリジナリティーに溢れた世界観をさらに外へと広げる契機になることだろう。

SawanoHiroyuki[nZk] R∃/MEMBER SACRA MUSIC(2019)

 今作の最大の特色は、何といっても参加ヴォーカリストの豪華さ。前述の縁で実現した西川との荒々しくも深淵な“NOISEofRAIN”、初タッグのLiSAが歌う「機動戦士ガンダムNT」の主題歌“narrative”など、先行曲からして強力なカードを切っていたが、リード曲の“EVERCHiLD”では何とポルノグラフィティの岡野昭仁を召喚。彼のヒロイックな歌声とかつてないほどストレートに胸を打つメロディーが、理屈抜きで心を鼓舞してくれるニュー・アンセムだ。そしてアコギの響きが新鮮な“never gonna change”では、かつて澤野が“Ah Yeah!!”のリアレンジ仕事に携わったことのあるスキマスイッチとコラボ。他にも、さユり、ASCA、Uru、そして澤野とは縁深いAimerらが作品に個性的な色味を加えている。SUGIZOの電気ヴァイオリンとTosh(Survive Said The Prophet)の咆哮めいた歌声が激情感を高める“Glory-into the RM-”で始まり、TielleやGemieらこれまでのSawanoHiroyuki[nZk]作品を彩ったシンガーたちが結集した“REMEMBER”で締め括られる構成も熱く、間違いなく彼のキャリアを代表する傑作の誕生だ。 *北野 創

『R∃/MEMBER』に参加したアーティストを一部紹介。