〈バンドリ!〉でも活躍する声優のロックな初アルバム!

 白いフェンダー・テレキャスターを手に柔和な眼差しを向ける姿は、ギター女子のような趣だが、彼女の本職は声優。この夏に第2期の放送を控える人気アニメ「その着せ替え人形は恋をする」のヒロイン・喜多川海夢役などで知られる直田姫奈は、いまやマルチな才能がひしめく声優シーンにおいても注目の存在だ。保育士から声優に転身し、2018年のデビュー作「消滅都市2」では声優ユニット・SPR5の一員としても活躍した彼女は、2020年より「BanG Dream!(バンドリ!)」発のリアル・バンド、Morfonicaのギタリスト・桐ヶ谷透子役を担当。YUIに憧れて中学時代から趣味で練習していたギターの腕前を活かして実際にライヴ活動を行い、Zeppツアーやアリーナ公演も成功させている。

直田姫奈 『FEVER -僕たちの計画-』 コロムビア(2025)

 そんななか2024年4月にコロムビアよりアーティスト・デビューし、これまで配信シングルを届けてきた彼女が、初めてCDリリースする作品が今回のファースト・アルバム『FEVER -僕たちの計画-』。全10曲のうち9曲の作曲およびアレンジは、petit miladyをはじめ数多の声優アーティストのライヴや作品に携わってきたリアジュボーンの面々が手掛け、なんと直田本人が歌唱のみならずギターでも参加。ライヴで演奏を行う声優は増えたが、音源で楽器を弾く例はかなり珍しい。

 音楽性としてはポップで耳心地の良いバンド・サウンドが中心。とはいえ曲調はさまざまで、夏色のギター・ロックに失恋の感傷が滲むデビュー曲“ラベンダー・ブルー”や、その前日譚となる重い想いが渦巻く“My Truth”、そんな思い出を振り返る淡いミディアム“ばっかだな”という3部作をはじめ、主役のほどよく色づいた歌声が着せ替え人形のように装いを変えながら甘く切ない景色を描いていく。本人というより作り手側のロック趣味が透けて見えるパワー・ポップも多く、マンチェっぽい“ASTRO ESCAPE”なんて曲も。ガール・ポップ好きなら間違いなく手にしておきたい一枚だ。

直田姫奈の参加作。
左からMorfonicaの2025年作『Polyphony』(ブシロードミュージック)、声優を務めた映像作品「ひとりぼっちの異世界攻略 1巻」(ポニーキャニオン)