小袋成彬×KEIJUとの刺激的なコラボレーションを経験し、また新境地へと踏み出したRIRIが瑞々しい新作をリリース。新しい時代の最初の夏にはこんな音楽がよく似合う!

 資生堂「アネッサ」のCMソングとして春先からオンエアされている話題曲“Summertime”で、小袋成彬とKEIJUという気鋭のアーティスト2人とコラボを果たしたRIRI。同曲をリードとする今回リリースの新作『Summertime EP』は、次世代を担うクリエイター/ラッパーを国内外から迎え、彼女の海外志向とグローバルに通じる才能を改めて伝えるEPとなった。イマドキのストリート感覚が溢れ出す今作を彼女はどんな思いで作り上げたのか。まずは気高い作風で高い支持を受けるプロデューサー/シンガーの小袋成彬、そして都会的な色香を放つメロウネスで人気のラッパー、KEIJUに対する印象から訊いてみた。

RIRI Summertime EP ソニー(2019)

 

過ごしたい一日の流れ

――“Summertime”を聴いた第一印象から教えてください。

「最初に聴いたときは爽やかでキラキラしてるなって思いました。フックでガラッと曲調が変わるところはオシャレだなと思ったし、そういう作り方が小袋さんらしいなって。いままでこういう雰囲気を持つ曲は歌ったことがなかったし、それを3人で組ませてもらってやれるのはすごく嬉しかったです」

――小袋さんとKEIJUさんにはどんな印象を持っていますか?

「小袋さんは歌詞の内容がすごく繊細というか、表現が知的なところがすごく好きで、かっこいいなと思ってたんです。曲だけ聴いてるとあまりふざけたりするタイプじゃないのかなと思ってたんですけど、実際にお会いするとすごくオープンマインドな方で、本当に自然に接してくださるのでレコーディングも全然緊張せずに済んで。アーティストとしてはもちろん、人としてもすごく尊敬できる人で、今回ご一緒できて本当に良かったです」

――KEIJUさんに対しては?

「今回は小袋さんと一緒に作ってることもあって、彼がもともとやっているような表現とも少し違っていて、それがすごく新鮮でした。こういうKEIJUさんのラップもかっこいいなって。あと、KEIJUさんは私服がすごくスタイリッシュなんですよ。ヒップホップだけどジェントルマンっていう感じ。いつも仲良くさせてもらっていて、お兄さんみたいな存在です」

――今回はどのようなEPを作りたいと考えていたんですか?

「“Summertime”をメインにして、EP全体としては爽やかな朝から始まって、昼下がり、夕暮れ、チルなナイトタイムみたいな休日の流れ。私が過ごしたい一日の流れをイメージしたんです。自分でも気に入ってます」

――新曲の“Better Days”はどのように作ったんですか?

「実はこれは去年、LAに3か月行ったときに最初のコライト・セッションで作った曲なんです。なので、これからがんばっていくぞ、ベターデイズを歩んでいくぞっていう気持ちがすごく詰まった曲になっていて。爽やかな雰囲気の曲だったので、『Summertime EP』というタイトルにも合ってるなと思って入れることにしました」

――今回のEPでは、ネリーとケリー・ローランドのクラシック“Dilemma”(2002年)を、JP THE WAVYを迎えてカヴァーしました。二人で日本語詞を書いていますが、どんな部分に気をつけましたか?

「今回はJPさんと一緒にスタジオに入れなかったので、JPさんがヴァースを書いて、私はフックの部分を書いて別録りで進めたんです。私は原曲の雰囲気を大事にしたかったから、ほとんど英語のままなんですけど、メロディーやサウンドの雰囲気を崩さずにうまく日本語を入れることを重要視して書きました」

――原曲はざっくり言えば浮気ソングなので、レコーディングでの感情移入は難しかったんじゃないですか?

「自分の経験にないことだし、最初は正直難しいなと思いました。なので、とにかく自分が過去に経験した恋心とか、当てはめられそうな気持ちを思い出してレコーディングして。ただ、昔から聴いてきたようなR&Bなので、歌っていて自分の中で原点に戻る感覚がありました。昔から好きなタイプの曲調なので逆に歌いやすいというか、気持ち良く伸び伸び歌えましたね」

 

経験がいまの自分を作ってる

――韓国の若手ラッパー、Junofloとコラボした“luv luv”のプロデュースは、ティナーシェやトリー・レーンズ、88risingのジョージなどを手掛けるライアン・ヘムズワースが担当しています。前作『NEO』ではスウィーティーとも共演していましたが、こういう海外コラボにプレッシャーや抵抗はもうないですか?

「自分が持ってるものをただ自信を持って表現するだけなので、そういった気持ちは全然ないですね」

――その心境に至ったのは、去年のLA留学が大きい?

「それも大きいと思います。もし日本だけでやっていたら、いまのRIRIにはなってないと思う。海外の方は意見がはっきりしてるし、〈じゃあ、RIRIはどうなの?〉って聞かれたときに自分のアイデアをちゃんと持っていなきゃならない。大抵、最初は〈よくわからない少女が来たなぁ〉みたいな感じなんですよ(笑)」

――セッションでは試されることもあるでしょうしね。〈あなたはこれにどう返す?〉みたいな場面もあったり。

「そうなんですよね。だから最初はすごく戸惑ったんです。ベースとなるトラックを作った後に、〈これをずっとループしておくから適当に歌ってみて〉って言われて。とにかくもう鼻歌でもいいから何か出さなくちゃと思って歌ったら、意外にいいメロディーが浮かんで、その場にいた作家さんも〈RIRI、やるじゃん!〉みたいに喜んでくださって。そこから作業がいい感じに進んだっていう経験から、やっぱり最初の第一歩が肝心だなって思ったんですよね、そこで自分を持っていたらみんな絶対に評価してくれる。そういう経験がいまの自分を作ってるなと思います」

――改めて、メジャー・デビューした去年は自分にとってどんな一年でしたか?

「かなり濃い一年でした。活動していると辛いこともいろいろあるし、負けずに闘わなくちゃいけない場面もたくさんあるんですけど、でも、そういう場面でも負けることなく自分なりにベストを尽くして毎日をがんばれた。私の2018年を漢字一文字で表すと〈覚醒〉の〈覚〉だと思ってるんです。いままで体験したことがないようなタフな経験がたくさんあったけど、それでいろんな学びができた年だったなって。今年はそれを活かしてもっと環境を整えていけたら。私には世界で活躍できるアーティストになりたいという大きな夢があるので、いろんな海外の方々とコラボレーションしていきたいです」

――最後にEPのタイトルに絡めた質問を。今年のSummertimeにぜひやってみたいことはなんですか?

「花火大会とか夏祭りにメチャクチャ行きたいです! 去年は花火をひとつも見られずに終わっちゃったので、そういう夏の風情をちゃんと感じたい」

――かき氷を食べながら花火とか?

「そう! みんなも今回のEPをお供に、そういう楽しみを味わえる夏にしてほしいなと思います」

 

RIRIの2016年のEP『I love to sing』、2017年のEP『RUSH』(共にTHE MIC-A-HOLICS)、2018年のフル・アルバム『RIRI』『NEO』(共にソニー)、オリジナルの“Dilemma”を収録したネリーの2002年作『Nellyville』(Fo'Reel/Universal)