Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載がスタートしました! 更新は毎週火曜(歌謡)日。数無制限でNEWな楽曲を中心に、ときには新着モノに限らず個人的ブームな楽曲も紹介します、というユルいスタンスでやらせていただきます。毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません! *Mikiki編集部

 


【酒井優考】

H ZETTRIO "Lovely"

連載をやっているチアキに〈毎週勉強のために全部聴いてるよ!〉と言われドキリ。まずは2019年も勢いが止まらないH ZETTRIOが、ホワイトデーにPVを公開した新曲を。H ZETT NIREの軽やかなウォーキング・ベースを始め、心躍る〈ラヴリー〉な感情を巧みに表現した正統派ジャズ曲。クール!

 

加納エミリ “ごめんね”

友人(って言ってもいいですか?)であり、2週前のこのコーナーでも紹介したラブワンダーランドのドラマーでもあり、本日休演やツチヤニボンドのPVも手掛ける奇才映像作家・小池茅くんが監督をしたというので観てみたら……思わずズコーッとコケそうな最高のセンスの音&映像だったのでご紹介を。実際、本日休演のPV(これも強烈)を観た加納さんご本人からオファーがあったそうで、そのお名前は南波一海さんの〈アイドル三十六房〉で聞いてはいましたが、まさかここまで強烈な人とは思いませんでした。作詞・作曲・編曲・振付を全部セルフでやっているそうです。

 

Omodaka “ひえつき節”

もう8年前の楽曲ですが、先日ようやく初めてライヴを観れたので。要素が多すぎるので手短に話すと、日本ハウス・ミュージックの祖でもあるミュージシャンの寺田創一が、〈テクノ民謡とモーショングラフィックスの融合実験企画〉として始動させたプロジェクトがOmodaka。“イエロー・サブマリン音頭”で知られる民謡歌手の金沢明子が歌う民謡と、チップチューンのビートを掛け合わせ、斬新!だけどどこか懐かしい楽曲を生み出しています。宮崎の民謡“ひえつき節”に、篳篥と8bitサウンドをトッピングしたこの曲のPVは、文化庁メディア芸術祭でエンターテイメント部門新人賞を受賞。

巫女装束と仮面(!)を着用し、金沢明子が映し出されたモニターを楽しそうに操りながら、PSPやDSなどのゲーム機やカオシレーターでメロディーを奏でる圧巻のライヴ・パフォーマンスも必見です(濃い要素が多すぎですが……でもそれら以前に曲がいいんです)。ぜひ検索してライヴ動画も観てください。天才。

 

【天野龍太郎】

RIRI “luv luv feat. Junoflo”

RIRIは完全にグローバル(アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、そしてアジア)な音楽市場に向けて歌っている。きっと彼女のチームも同じ考えなのだろう。その力強い姿には90年代や2000年代前半のJ-Popにおける、いわゆる〈歌姫〉像を更新するものを感じる。そんな彼女がK-Popや韓国のラップ・シーンを無視できるはずもなく、この新曲“luv luv”でラッパーのJunofloと共演したことは確信的で、かつ自然な流れだと思わせる説得力がある。“luv luv”の素晴らしいところは、韓国語ヴァージョンも制作されているという点。プロデュースはライアン・ヘムズワースだ。

 

ゆるふわギャング & Ryan Hemsworth "Fresh All Day"

そして、こちらもライアン・ヘムズワースの仕事。ドラッグが日本の音楽の世界に大激震をもたらしているなか、ゆるふわギャングの"Fresh All Day"は超ストレートなマリファナ賛歌でブレなさすぎ。〈頭のネジがbreak/ぶっ壊れてるbrain〉。聴いているこっちがビビってしまいます。2月、KID FRESINOのライヴで観たNENE(fka Sophiee)は完全にスターだった。

 

RAITAMEN “Tongue Thug”

Sweet Williamは僕がいま日本でいちばん好きなプロデューサーの一人で、彼が作るサウンドを聴くたびに驚かされてしまう。この“Tongue Thug”もやっぱりユニークで、イントロの変なノイズや訛りすぎたノリのビート、ベースが挑発的。実はこの曲を聴くまでRAITAMENというラッパーのことは知らなかったのだけど、Sweet Williamと同じ〈Pitch Odd Mansion〉というクリエイター集団(not クルー)に所属しているらしい。

 

食品まつり a.k.a foodman “Moyashi Kids”

ele-king編集長の野田努さんいわく〈世界的にみたら、いまいちばん評価されている日本のアーティストは食品まつりでしょう〉。エレクトロニック・ミュージックの世界では確かにそうかも。そんな食まつさんの新作『ODOODO』は、なんとあのディプロのレーベル、マッド・ディーセントからリリース。この新曲“Moyashi Kids”はちょっと懐かしさも感じるミニマル・テクノやクリック・ハウス、エレクトロニカを思わせるものではあるけれど、foodman流のユーモラスな調理法によって得体の知れないサウンドに仕上がっている。

 

おとぼけビ~バ~ “Don't light my fire”

Bandcampではなぜかけっこう前から聴けていたおとぼけビ~バ~の新曲“Don't light my fire”。食品まつりさんやCHAIにしてもそうだけど、彼女たちのことは〈Otoboke Beaver〉として〈Pop Style Now〉のほうで紹介するほうがいいのかも。洋楽/邦楽という(市場的な理由による)区分けを無効化するようなパワフルな活躍を見せているおとぼけビ~バ~。まるで世界を相手取って挑発し、喧嘩を売っているかのよう。彼女たちの音楽からは、どこか昭和な感じとネガティヴな衝動を感じる。この曲だって〈ハートに火をつけないで〉だ。それが関西のロック・バンドらしいエクストリームな突き抜け方とユーモアで、遠く彼方まで貫通してしまっている。

 

【田中亮太】

NOT WONK “Down the Valley”

彼らがセカンド・アルバム『This Ordinary』(2016年)以降に取り組んできたソウル/ファンク志向の歌唱と演奏。個人的に、実はそこまで掴みきれない(率直に言うといまいちノリきれない)なーという感じもあったんですが、この新曲にはもうひれ伏しました。バンドの背骨にあたるエモ/ポスト・ハードコア的な起伏の多いアンサンブル、尖ったギター・サウンドを押し出したうえで、近年のブラック・ミュージック的な方向性も完全に血肉化されています。いやー、本当に凄い。世界のどこにこんなバンドいますか?

 

Keishi Tanaka “Breath”

ケイシくん(という呼び方がしっくりきますよね)が、10年代きっての和製ブルーアイド・ソウル・シンガーであることに異論を挟むものはいないでしょう。この曲は、彼が5月8日(水)にリリースするニュー・アルバム『Breath』のタイトル・ナンバー。十八番であるブラスや鍵盤を配した華やかなサウンドに、シカゴ産のそれと空気感をシェアするゴスペル・ムードを加えて……という時代への目配せもバッチリ。その一方で、半径5メートルのコミュニティーを祝福するかのような心地よいスモールサークル感を持ったメロディーには、いつになくインディー・ポップ味もあって。ベン・リーの“Catch My Disease”みたいなTHE良い曲。

 

【高見香那】

フィロソフィーのダンス “スーパーヴィーニエンス”

今週のトキメキはこれだあ。プロデュースを手掛ける加茂啓太郎氏の〈マーク・ロンソンやブルーノ・マーズ、ファレル・ウィリアムスみたいな音楽をアイドルに取り入れたらどうか?〉というアイデアを元に生まれたグループ、フィロソフィーのダンス。彼女らが4月にリリースするニュー・アルバム『エクセルシオール』からの、超フレッシュでニュー・ジャック・スウィングな一曲です。歌唱力と個性を併せ持ったメンバーがそれぞれに聴かせるのですが、とりわけいわゆるアイドルっぽさとはかけ離れた日向ハルさんのソウルフルなヴォーカルが癖になりますね。ライヴもスゴイと噂をよく聞くので、観てみたいです。