フランスから越境のアコーディオン奏者 ーー友愛と自由はジャズの響き
語りかけるように歌うようにアコーディオンを奏でるクリストフ・ランピデキア。日本デビューアルバムには、ワルツミュゼット、ナポリ歌謡、エキゾチックなジャズetc...多様性に富んだ曲が並ぶ。
クリストフの曽祖父はナポリルーツで漁師として仏領時代のアルジェリアに渡った。そこで祖父が生まれ、父ジャン・ランピデキアは名アコーディオン奏者として活躍した。1950年代に父と叔父が組んだユニット〈ハバネラ〉は現地で人気バンドに。(アルバム収録曲《ハバネラ》はオマージュでつくったオリジナル曲だ)1962年アルジェリア独立後 ランピデキア家は南仏に渡り、1974年クリストフはマルセイユで誕生。8歳からアコーディオンを習い始め、13歳でプロの舞台に立っていた。中学生時代は学校を休み家でアコーディオンの自主トレ。1日8~9時間練習し、アコーディオンと一緒に眠った。「僕にとって最初の恋人はアコーディオン。その初恋の人に人生を救われました。貧しい時もありましたが、アコーディオンさえものにすればなんとかなると信じて励みました」。
10代の頃は、ジャズを愛聴した。「チャーリー・パーカー、デューク・エリントンetc...父が持っていた33回転盤や78回転盤を聴き漁りました」。
コンセルヴァトワール入学後は、クラシックを集中して聴く。古楽から近現代まで多くの作曲家の作品に触れた。22歳でアルバム制作。1999年にアコーディオン世界チャンピオンに輝き、2009年にはフランス音楽著作権協会から作曲の功績も高く評価された。
友愛と自由を愛し、音楽仲間との演奏では、バンドマスターは決めない。「僕はソリストだけど、マスターではない。みんな平等に」。ジャズ精神にフランス実存主義。アルバムのラスト収録曲《アンディフェランス》を聴いて納得する。「差別しない。中立でありたい。僕にとっては“無関心”という意味ではなく、あるがまま」。
現在は、マルセイユから40km離れたサン・マキシマムで暮らす。豊かな自然環境で瞑想するとインスピレーションを得られ、創作活動に専念できる。 「パリのアーティストとは〈what's App〉(SNS)でやり取りします。ギタリストのドミニック・クラヴィクと共作の《スケートと月とラグーナ》は〈what'sApp〉で動画セッションして作曲しました」とデモ記録音声を披露。超絶技巧即興ホットラインに驚く。
友も家族も、離れていてもいつも繋がっている。「長女はイスラエルにダンス留学中。長男はマルセイユのコンセルヴァトワールでピアノ修行中。家族でコラボも楽しみです」。演奏中は父の教えを胸に秘めいつも一緒にいると感じている。国境を越え世代を超えて。