Photo by Yuka Yamaji

 

ジャズ、エレクトロニック・ミュージックからアラブ音楽も! 常に挑戦し続けたい

 デヴィッド・ボウイ『★』にダニー・マッキャスリンらと参加したキーボード奏者のジェイソン・リンドナーは、自身のメイン・プロジェクトであるNOW VS NOWで待望のニュー・アルバム『ザ・バッファリング・コクーン』をリリースした。

NOW VS NOW Buffering Cocoon P-VINE(2018)

 「このプロジェクトは、初めてRolandのエレクトリック・キーボードを買った2000年まで遡る。それでビートを作り、仲間と実験的なセッションをしたんだけど、2006年にドラムでマーク・ジュリアナが参加したときにしっくりきて、グループを結成したんだ」

 リンドナーもジュリアナも、ジャズはもちろんのこと、エレクトロニック・ミュージックにも大きな影響を受けてきたミュージシャンだ。

 「僕らはIzzy Barというところで、ミュージシャン、DJ、ラッパーとセッションを繰り広げていた。みんな、ジョジョ・メイヤーからエイフェックス・ツインまで、新しいビートを作る人達に影響を受けたんだ」

 NOW VS NOWは2000年代のニューヨークでの試行錯誤から生まれたプロジェクトなのだ。リンドナー、ジュリアナ、それにベースのパナヨティス・アンドルーでスタートし、その後、ドラムがジャスティン・タイソンに変わり、新作を作り上げた。

 「マークに子供ができてツアーに参加できない時期があって、いろんなドラマーとやったけど、ジャスティンが最高だった。エレクトロニック・ミュージックへの理解もあるしね」

 今回のリリースが、ノルウェーのジャズ・ピアニスト、ブッゲ・ヴェッセルトフトのレーベルJazzlandからであることも興味深い。彼もまたヘンリク・シュワルツやプリンス・トーマスとコラボレートしてきた、リンドナーたちの先駆者ともいえる存在だ。

 「ブッケはこのサウンドをとても気に入って、応援もしてくれた。僕も彼の作品を気に入っていて、ピアノとエレクトロニクスを使うという共通点があるから、ノルウェー在住のお兄さんを見つけた感じだよ(笑)」

 リンドナーのいまの好みはティム・ヘッカーやアルカのようなエクスペリメンタルなサウンドだというが、それも多彩な音楽遍歴から来ている。

 「僕の音楽的な歩みは他の人と違うユニークなものだ。ジャズを学んでいた時はルーツのアフリカ音楽を研究し、さらにそれが影響を与えた音楽も学び、ニューヨークにいるイスラエルのジャズ・ミュージシャンからアラブの音楽も学んだ。友達には“ジャズ・ピアノなら身体一つでツアーできるのに”と言われたよ。ビッグバンドもやってたからね。でも、いつも自分で自分を挑戦的な方向へ持っていってしまうんだ(笑)」