ヤセイの洋楽ハンティングをご覧の皆様、ヤセイコレクティブのキーボード、別所です。
久しぶりの投稿ですが、度々このブログでも名前が挙がっているJason Lindnerについて書きたいと思います。Jasonは今年の1月に亡くなったDavid Bowieの遺作『★』に参加したこともあり、世界的に注目を集めているキーボーディストです。今回は動画に加えて、少し譜面を交えて彼の音楽性について掘り下げてみようと思います。

★ジェイソン・リンドナーについても触れられている、冨田ラボがデヴィッド・ボウイ『★』の魅力を語った記事はこちら

まずはこの動画を。2013年のライブ映像ですが、2008年リリースの『Now Vs. Now』に収録されている“Big Pump”という曲です。大きい流れとしてはずっと11/8で進んでいますが、一聴しただけでは何拍子か、どこがアウフタクトかわからないような曲です。以下の譜面をご確認ください。

※小節の頭より前に入るメロディーのこと。例としてはTUBE“シーズンインザサン”の歌い出し〈ストップ・ザ〉ところ

Introのメロウな雰囲気から一転、Aに入ると細かい16分音符で激しい曲調になります。7/16 +7/16 + 8/16=合計22/16なので、11/8と同じ拍数になります。ヤセイコレクティブではこの手のコンセプトをかなり使っていて、最新アルバム『Lights』では、彼にインスパイアされたという意味で“Lindner”という曲を収録しています。各々のソロも圧巻ですね。Mark Guilianaはもちろん、ベースのPanagiotis Andreouのソロは、もはや合ってるのかどうかわからないです(笑)。

次に以下の動画をご覧ください。

こちらも一聴すると、ただナイスにメロウなコードを弾いているだけに聴こえるけれど、細かく拍をずらしています。

この手のずらし方は、譜面に書くとわかりづらいですが、
b//b /b// //// //// //// //// b/// /b//
上記のように16分音符の位置関係で考えるとわかりやすいです。

ちょっとどう書いていいのかわからなかったので触れてないですが、付点8分を4分音符とした8ビートへのリズムチェンジなどもやってます。

2000年代以降、ブラック・ミュージックを起点として、リズムをスリップさせるビートがポップ・シーンにも入ってくるまでになりました。だけど効果としてはある種同じようで、発想や手順が違うずらし方がポップ・シーンにおいても今後のトレンドになる気がします。Hiatus Kaiyoteも、もちろんJ・ディラとかの影響はあるけど、どちらかといえばこっちに近いように思います。

僕なりに咀嚼すると、そのままだと直球過ぎるコードやメロディーも、リズム的なアプローチ如何で面白くなるということです。ここで紹介した2曲も、コードは比較的シンプルだし。和声的なアプローチに関しては、ポピュラー音楽のシーンはかなり飽和感があるというか、大体、多くの人が好む和声の種類みたいなものが限定されてきているように個人的には感じています。演奏者や作曲者の側から見れば、面白いと感じるものに少し乖離がある。そんな中で、うまく自らの探求心とのバランスを取るには、まだ余地のあるリズム的アプローチを掘り下げるのがこれからの時代の健全な方向性のように思います。

込み入った話になったかもしれませんが、Jason Lindnerのように先進的でコアなミュージシャンもDavid Bowieの作品に参加する可能性があるアメリカの受け皿の広さと、世界最高峰のリズム・モンスターの凄さが少しでも伝わればと思います。

手前味噌ですが、2011年発表のヤセイコレクティブ“Kodama”において、既にドラムとベースが16分をスリップさせたビートをやっています。早過ぎたか。

★ジェイソン・リンドナーの話もちょっと出てくる、別所和洋×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)対談はこちら

 


~Yasei Collectiveからのお知らせ~

WE ARE ALL “LIGHT” TOUR 2016 開催中!

6月10日(金)名古屋・Heart Land with egoistic 4 leaves OPENING ACT:AWA
6月11日(土)浜松・G-Side with HUMANAME
6月12日(日)京都・nano with Gotch DJ:DAWA(FLAKE RECORDS)※昼夜公演あり

6月17日(金)東京・代官山UNIT
with katsina sessionタブソンビ日向秀和伊澤一葉柏倉隆史
DJ:mabanua

★詳細はこちら

Yasei Collectiveの2016年作『Lights』収録曲“Lights”