ファンが待ち望んでいた『「寝ても覚めても」オリジナル・サウンドトラック』が3月にリリースされた。

改めて音楽だけを聴いてみると、ちょっと80年代の細野晴臣ライクなミニマルがあり(“netemo sametemo”)、リリカルなピアノの響きを活かした楽曲があり(“futari”)、アンビエントがあり(“dream”)、センチメンタルなフォーク・ロックがあり(“epoch card”)、軽快なフューチャー・ファンク/ディスコがあり(“in the club”)と、その引き出しの多さ、音楽的な豊かさに驚かされる。しかも、聴き心地はきわめて軽く、1曲1曲がものすごく短い。サウンドトラックというよりはある種の軽音楽というか、どこか柴崎祐二さんがブックオフで掘っている〈商業/俗流アンビエント〉にも似た趣があって、思わず何度も聴いてしまう(なんとなく「海がきこえる」のサントラを思い出したりも)。

そんな「寝ても覚めても」のサウンドトラックや、7インチ・シングル化もされた竹内まりや“Plastic Love”のカヴァーを経て、tofubeatsの新曲“Keep on Lovin' You”が発表。今回はサントリー食品の緑茶とのコラボレーション・ソングだとか。

歯切れのいいギターのカッティングから始まるイントロにすこしびっくり。彼の楽曲の多くは、tofubeatsが一人で演奏し、プログラミングし、歌うという過程で生まれているはずで、こういう例はあまりないからだ。ブリージンなギターを弾いているのはJINTANA & EMERALDSや数々の客演でも知られる、横浜・PanPacificPlayaのKASHIF。細かいフレーズや小技の妙が効いていて、あまりにも陳腐だけれど〈さわやか〉と形容したくなる。さらに、本当にごくさりげなくコーラスを寄せているのが、鍵盤ハーモニカを使った音楽で知られる大阪のゆnovation。とても自然体で、〈ちょっと遊びに来てみた〉くらいの雰囲気がいい。

サックスやフルートを模した電子音の重なりも初夏の空気にぴったりなフィーリングで、『RUN』(2018年)で見せたどこかシリアスでストイックなスタイルからはかけ離れている。このノスタルジックで気負いのない軽快さも、ものすごく魅力的だと思う。