3人編成でのバンド・サウンドに回帰した〈大文字〉名義での新作は、彼らが築き上げてきた深い世界への入り口となる〈開かれた〉一枚に!

 ニルヴァーナに多大な影響を与えたことでも知られる伝説のヘヴィー・バンド、メルヴィンズの楽曲から取ったバンド名のもと、過去22年の活動を通じて、ナイン・インチ・ネイルズやルー・リード、ポーティスヘッド、フレーミング・リップスらを魅了するワールドワイドな存在へと昇り詰めた3人組〈ボリス〉。バンド名義をロックの中心に向かう大文字の〈BORIS〉とロックの外側に向かう小文字の〈boris〉で使い分け、その多面的な音楽性は、パンク、ハードコア、ハード・ロック、サイケ、プログレ、ストーナー、スラッジ、ドゥーム、ノイズ、ドローンを呑み込み、パワー・アンビエント、ヘヴィー・ロック、ローファイ・メタルなどなどと形容されてきた。

「ボリスは、時期によって、アルバム、曲によって、いろんな側面が顕在化するので、私自身、第三者的に楽しみつつ、ヴォーカルをやることになったり、他のメンバーには新たな引き出しを開けてもらって、いろんな経験をさせてもらってきましたね」(Wata、ギター/ヴォーカル)。

 そして2011年には、フェティッシュな域まで世界観が構築されているという意味において、ヘヴィー系のサウンドと親和性が高いボカロやヴィジュアル系、アニソン、同人音楽さえをも呑み込んだ初のメジャー・アルバム『New Album』を発表。聴き手はコンテクストが複雑に絡み合った唯一無比の音楽迷宮へと誘われた。

 「僕らのなかでは必然性と時系列に則って、整理しながら、順当にリリースしてきたつもりなんですけど、リスナーは追いかけるのが大変だったかもしれないですね」(Takeshi、ベース/ギター/ヴォーカル)。

2011年作『New Album』トレーラー

 『New Album』と時を同じくして、海外では2枚のアルバム『Attention Please』と『Heavy Rocks』を発表。昨年にはバンドのエクスペリメンタル・サイドを追求するboris名義でヴァイナル・オンリーの新作『praparat』、新作『extra』を含む限定CDボックス『目をそらした瞬間 -the thing which solomon overlooked- chronicle』『vein』という3作連続リリースを経て、アディショナル・プレイヤーを加えない3人編成のバンド・サウンドへと回帰した。

 「boris名義の流れを受けて、次の作品はめちゃめちゃハーシュなノイズ・アルバムになりそうな予感があったので、タイトルも『NOISE』がいいだろうな、と。ところが制作を終えたら、予想に反して、僕らの作品のなかでいちばん音楽的なアルバムが出来たので、BORIS名義の作品として発表することにしたんです。ただ、僕らにとっての音楽が他の人にはノイズかもしれないし、その逆もある。そう考えて、タイトルはそのまま『NOISE』にしました」(Atsuo、ドラムス)。

BORIS 『NOISE』 tearbridge(2014)

 みずから録音を手掛けた新作には、『New Album』 に劇的な化学変化をもたらした成田忍がサウンド・プロデューサー、中村宗一郎がミックスで参加。攻撃的なギター・リフが襲いかかるヘヴィー・ロックやスローモーなストーン・ナンバー、美しく禍々しいドローン・アンビエントやシューゲイザーを彷彿とさせる分厚いウォール・オブ・ノイズ、静と動を行き来しながら、18分を超えて広がるエピック・チューン“Angel”など、BORISの進化過程やノイズの神髄を凝縮したかのような、奇跡的な一枚がここに完成した。

 「経験上、ノイズは相容れない要素の潤滑剤として機能することが多かったですし、ノイズがあるからこそ、今回も楽曲のなかに自分たちが思い描く要素を全部入れ込んで、過去にやってきたことのちょうど真ん中くらいに位置付けられそうな作品が出来た。これから僕らの音楽を聴き始める人はここから過去の作品を紐解いてもらえたら嬉しいですね」(Atsuo)。

 

▼BORISの参加作品

左から、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのトリビュート・アルバム『Yellow Loveless -JAPAN-』(High Fader)、DEAD ENDのトリビュート・アルバム『DEAT END Tribute -SONG OF LUNATICS-』(motorod)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

BACK PAGES

 ここではボリスの近作を紹介します。Wataのヴォーカルを全編でフィーチャーし、2011年に国内で発表されたBORIS名義での『New Album』(tearbridge)は、海外でリリースを予定していた2枚のアルバムから選曲/リアレンジした作品で、その大本となった2枚『Attention Please』(Daymare)『Heavy Rocks』(同)は同年5月に発表されました。その後、断続的なワールド・ツアーを経て、2013年春には新録アルバム『extra』を含む4枚組CDボックス『目をそらした瞬間 -the thing which solomon overlooked- chronicle』(完売)、ヴァイナルのみのリリースとなった『praparat』(同)、2006年にヴァイナルのみでリリースされた作品を特殊アートワークも含めてCDで復刻させた『vein』(同)と、boris名義による3作を発表しました。 *bounce編集部
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ