Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第69回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部
【小峯崇嗣】
Morningwhim ”Smoke from Cigarettes”
名古屋を拠点に活動する男女4人組インディー・ポップ・バンド、Morningwhimがカセット・シングル『Talking to Myself / Smoke from Cigarettes』をリリース。今回は ”Smoke from Cigarettes”をご紹介。駆け抜けていくような爽やかなギター・サウンドと、鮮やかな色を纏ったシンセが混ざり合った極上のジューゲイザー・ソング。そこに男女混声の歌声が加わり、淡い10代の青春模様の一幕を描いたような一曲です。
Morningwhimには、TOWER DOORSからメール・インタビューを行っています。彼ら初のインタビュー記事なのでぜひ!
non albini “Kyoto(feat. Lil Soft Tennis)”
関西を拠点に活動するバンド、R4のヴォーカルによるソロ・プロジェクト、non albiniのファーストEP『Nostalgia King』をリリース。その収録楽曲からLil Soft Tennisをフィーチャリングに迎えた”Kyoto”をご紹介。エモ・パンクからの潮流を感じられるギター・サウンドですが、オートチューンを使用するなどヒップホップやエレクトロニックなサウンドも取り入れながらも、ポップな一曲に仕上げています。ジャンルに捕らわれない自由な発想とエクスペリメンタルさが感じられます。
Faded old city “Patchwork”
奈良出身のバンド、Faded old cityが新曲をリリース。スロウなリズムと共に、静寂の中に鳴り響くダークなシンセ・サウンド。徐々にエモーショナルな展開に導かれる壮大な一曲に仕上がっています。
The Boring Tapes “Resonance”
東京を拠点に活動するインディー・ロック・デュオ、The Boring Tapesが7月22日(水)にリリース予定のEP『Pulsation』から、先行で”Resonance”を公開。今回の新曲はニューウェイヴ感溢れるシンセとビートが刻まれていき、彼ら特有のアングラで幻想的な世界が感じられる楽曲に仕上がっています。
gato “GO”
都内で活動する5人組エレクトロ・バンド、gatoが去年以来の新曲”GO”をリリース。BPMをあげたハイスピードな多数のビートと、トロピカルな電子サウンドが鳴り響く一曲。
昨年gatoには、TOWER DOORSからメール・インタビューを行っていますのでお見逃しなく!
【田中亮太】
Jun Kamoda “Escape the Night”
イルリメとしての活動でもおなじみ鴨田潤が、エレクトロニック・ミュージックの名義〈Jun Kamoda〉として新曲をリリース。ジャッキンでアシッディーなロウ・ハウス・サウンドが魅力だった過去の楽曲と比較して、今回はよりメロディアス。艶やかな鍵盤の音色と、鴨田さんの端正な歌い口が耳に残ります。ヴォーカル・ハウスの新たな名曲ではないでしょうか。在日ファンクをサンプリングしたカップリング曲“Funky Protection”もお聴き逃しなく。
XTAL/Gonno “Steps On The Wind(Retake feat. Sauce81)”
そんな鴨田さんとは(((さらうんど)))で活動を共にするTRAKS BOYSのXTALが、久しぶりのアルバム『Aburelu』(大傑作!)に続いて、先週の〈Bandcamp Friday〉に新シングルを発表。Gonnoとの合同名義で、Inner Scienceも参加しています。こちらは、XTALが2016年にリリースした『Skygazer』収録曲“Steps On The Wind”のリメイク。Sauce81の鍵盤を新たに加え、甘美さ極まるブレイクからの、ドープでファンキーな展開がすごい。
RILLA “Just A Second(Torei’s Psy-Hall Remix)”
若手DJ/プロデューサー、Toreiの主宰するレーベル〈Set Fire To Me〉より第2弾リリースが到着。東京から関西へと拠点を移したベース・ミュージックの異才、RILLAによる初の音源『SFTM002』です。〈こんな引き出しもあったのか!〉と驚かされる厳かなダウンテンポ”First Drop“を筆頭に、いずれもナイスな4曲を収録。確かに〈マニア向け〉? しかしながら知らないではもったいないEPかもしれませんよ。Toreiによる上部掲載のリミックスが、セカンド・サマー・オブ・ラヴなヴァイブもあって個人的には超お気に入り。
【酒井優考】
劇場アニメーション映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』特報
5年という長き沈黙を破ってCAPSULEが帰ってきました。新曲“うつせみ”、明らかに新境地です。そして7月10日にはいよいよ全作品がストリーミング解禁。期待大。
【天野龍太郎】
DAOKO “帰りたい!”
ノイジーな8ビット・サウンドに〈やべー〉となりました。作編曲はChip Tanakaさん。DAOKO、(リリックも)振り切れていますね。
RYUTist “ALIVE”
蓮沼執太さんが作詞・作曲・編曲を担った、爽やかなポップソング。2番のラップのような、ポエトリー・リーディングのような、ドラムや他の楽器のリズムとユニゾンした見事なヴァースに鳥肌が立ちました。すごい! し、超いい。し、泣ける……。MVがとってもいいです。RYUTistのニュー・アルバム『ファルセット』は7月14日(火)にリリース。それまでは『ファルセット』特集第1弾の、柴田聡子さんとの対談を読んで待ちましょう。
川本真琴 “Savannah”
川本さんが突如Bandcampで秘蔵音源をリリースしてびっくり。『川本真琴 and 幽霊』(2012年)収録曲“DEVELOP”の初期デモ・ヴァージョン、だそうです。川本さんが録音とミックスをしたというこの曲。サイケでアシッドな、ぐるぐる回るエコーがものすごい。一度こういう方向性でライブやアルバム制作をしてほしいです!
澁谷浩次 “Lots of Birds”
yumboの澁谷さんのソロ新曲。とても感動的です。基本的にはピアノの弾き語り。そして、とつとつと歌う澁谷さんの歌に折り重なるヴァイブとシンセの響き。志賀理江子さんのミュージック・ビデオが素晴らしすぎます。
Chiriziris “Lv30 (Quruli Cover)”
Chirizirisによる、めちゃくちゃChirizirisらしいくるりのカヴァー。こうやって聴くと、“Kurokawa no Jikan”との共通点をすごく感じますね。ChirizirisはニューEP『GOODMORNINGLAND!』を7月16日(木)にリリース。去年のインタビューも読んでみてくださいね。
Boris “Anti-Gone”
完全にインディペンデントで制作され、Bandcampオンリーでリリースされたニュー・アルバム『NO』から。いま私たちを覆いつくしている閉塞感を打ち破り、振り払おうとするかのようなロック・ナンバー。
Michael Kaneko “Tides”
origami PRODUCTIONSより、Michael Kanekoのニュー・シングル。初めてピアノで作曲したということで、どこかランディ・ニューマンのような切ないメロディーがぐっとくる。セカンド・ヴァースがラップで、そこもまたいい。〈I know that living won't be easy〉というラインが素晴らしい、と思いました。
PUNPEE feat. KREVA “夢追人”
ご結婚おめでとうございます! な、PUNPEEの新作『The Sofakingdom』から最高の一曲。〈MPC買ってから四半世紀/でもマインドはいまだに未完成品〉とラップするKREVAに惚れる。
KEIJU “Bound For Glory”
なんとCharaの“Junior Sweet”をサンプリング! それだけで感涙ものだけど、とにかくいい曲。ノスタルジックなサウンドに乗せて、真摯で実直で前向きなリリックを聴かせるラヴソングです。KEIJUの新作『T.A.T.O.』は7月29日(水)にリリース。
dodo “Fo”
〈コロナで会いたい人に会えない君へ!〉とキャプションにあるdodoのひさしぶりの新曲! さらにニュー・アルバム『normal』を7月17日(金)に発表!! ついに新作を出すんですね。めちゃくちゃ楽しみです。
【鈴木英之介】
七尾旅人 “七夕の人”
七夕当日ということで、この曲を。
大人になり生活に追われて、いつしか夢を見ることもなくなった男。だが彼は、路地裏に飾られた短冊を見てふと七夕に連なる甘美な記憶に触れる。これはそんな一連の情景をアコースティックなアレンジでしっとりと表現した、切なくも美しい一曲である。ちなみにこの曲が収録されたアルバム『リトルメロディ』には、先週ご紹介した“サーカスナイト”のオリジナル版も収録されているので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。
イヤホンズ “記憶”
高野麻里佳、高橋李依、長久友紀による声優ユニットの新曲。これを聴いたとき、誇張でもなんでもなくフリー・ジャズを初めて耳にしたときと似た衝撃を受けた。典型的なブレイクビーツの制約を逃れて久しいヒップホップというジャンルは、今日において多様なリズムに彩られているが、そのなかにあってもこれほどまでに自由な形式を持った作品はそうそうないように感じられる。だがそれでいて混沌とした印象はなく、あくまでクリアで耳に心地好い。
そうした印象を支える、実験的でありながら整理されたサウンド・デザインは□□□の三浦康嗣によるもの。コーネリアスのファンにもおすすめだ。
山村響 “Suki”
これを聴いたとき、山村響の肩書である〈声優〉というワードから最初ステレオタイプなアニソン・イメージを想起していた自分の浅はかさを恥じた。
作詞、作曲、プロデュースをすべて山村自身の手で行ったというこの曲は、アリアナ・グランデの“Imagine”などを思わせる、エレガントで高品質なアンビエントR&Bである。音数は少なく、隙間が多くとられているが、音色一つ一つの選択から鳴りのタイミングに至るまで考え抜かれているためか、物足りなさは全く感じない。
声優としてのみならず、一人のシンガー・ソングライターとして今後要注目の逸材である。
おとぎ話 “HELP”
スライ&ザ・ファミリー・ストーン不朽の名盤『There’s A Riot Goin’ On(邦題:暴動)』を思わせる、モコモコとした独特の音響が耳をひく。
前のアルバム『眺め』からこの曲を含む最新アルバム『REALIZE』までの間、彼らにいったい何があったんだと驚いてしまうほど、その変身ぶりは大胆であり鮮やかだ。
今後このバンドがどういう方向へ舵を切っていくのか、楽しみで仕方がない。