(左から)Atsuo、シュガー吉永
取材協力:Junkafelic
 

Borisの新作『W』がリリースされた。2020年の前作『NO』から1年半を経ての作品だが、Borisらしさを極めた爆音轟音のヘビーなラウドロックアルバムだった『NO』に対して、『W』は、その対極にあるようなドローン〜アンビエント〜プログレッシブ〜シューゲイザーを極めたような静謐で繊細で美しい世界を展開している。彼ら自身は『NO』を〈轟音の癒し〉、『W』を〈ささやきによる覚醒〉と称している。その両極を無難に融合するのではなく極端なまま鋭く対峙させることで、コロナ禍の世界の実相を鮮やかに描き出しているのだ。なお、リリースは元銀杏BOYZの安孫子真哉がチーフプロデューサーを務めるインディーレーベル、KiliKiliVillaからである。

その『W』をプロデュースしたのが、2021年に新作『We Are The Times』(2021年)をリリースしたBuffalo Daughterのシュガー吉永だ。一見意外な起用にも見えるが、実は以前からお互いに影響を受けあった仲。Borisもバッファローもほぼ同時期に結成され、共に比類なき個性と強固な自主独立の精神を持ち、日本よりも海外での活動を重視してきた(せざるをえなかった、という面もある)点でも共通している。BorisのAtsuo(ドラムス)とシュガーの対談は今回のプロジェクト実現の経緯、双方の音楽観、日本と海外の音楽事情の違いなど多岐に及んだ。

Boris 『W』 KiliKiliVilla/Sacred Bones(2022)

ただヘビーなだけじゃない、空間系の音楽

――お二人が知り合ったそもそものきっかけは何だったんですか。

Atsuo「僕らはもともと3人ともBuffalo Daughterのファンで、昔『New Rock』(98年)のレコ発とかも観に行ったりしてて……」

シュガー吉永「恥ずかしい!」

Atsuo「で、この間Wata(Boris、ギター)のシグネイチャーモデルのファズペダル〈Hizumitas〉が出たんですけれど、それを作ったEarthQuaker Devicesってアメリカのペダルブランドがありまして。数年前にYAMAHAで国内流通することが決まったタイミングで懇親会があって、そこでお話しさせてもらって、(『W』にゲスト参加した)TOKIEさんもそのとき来ていました。そこからですね」

シュガー「私、Borisの『DEAR』(2017年)ってアルバムがすっごい好きで、そのジャケットデザインを河村(康輔)くんがやってたんです。河村くんは今回のバッファローのアルバム(『We Are The Times』)のジャケットデザインもやってくれていて。で、河村くんが〈今度Borisのレコ発があるんですよ。ヤバイっすヤバイっす〉と言ってて、〈えっ私も行きたい〉って」

Atsuo「あれ、そっちが先ですか?」

シュガー「そっちが先。そのとき初めてAtsuoくんと喋った」

2017年作『DEAR』収録曲“Absolutego”
 

――もともとBorisみたいな音楽は好きでしょ?

シュガー「好きよそりゃ(笑)!」

Atsuo「フフフフフ」

――メタル魂が刺激される。

シュガー「そうそうそう!」

Atsuo「そのときのライブの感想では、アコーディオンをめっちゃ褒めてもらいましたよね」

シュガー「なんかバランスが私の中ですごいハマった。すごい轟音でヘビーじゃないですか。なんだけど突然静かになって。静かなんだけどサーッてノイズがずっと流れてるんだよね。煙がワーッと出てきて、すごい小さい音でアコーディオンが鳴りはじめた。〈なにこれ、アコーディオンの音?〉と思いながら煙が晴れるとWataちゃんがアコーディオンを弾いてるっていう。その変なバランス! 轟音でギターもベースもダーンと鳴っているのに、ここでアコーディオンがくるんだ、みたいな」

Atsuo「ははははは」

シュガー「そういうバランスも含めて好きで。ただヘビーなだけじゃないっていうかさ。そういう空間系の音楽ですよね、Borisって。このアルバムもまさに空間系じゃないですか。きた! 好き!と思って」

――そこにハマったわけだ。

シュガー「ハマったハマった。だっていいアルバムだよね。もう私が何かする前から完璧に出来ていたんですよ。曲順も決まっていたし、全て出来上がった段階できたんで、このままでいいじゃんって私は思ったんだけど」

Atsuo「いやいやいや~」

シュガー「なんかできることがあるかな、みたいな感じで受けたんだけど」

Atsuo「そうしたらひと皮もふた皮も向けた感じになって」

『W』収録曲“数に溺れて -Drowning by Numbers-”