Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、新着楽曲を軸にマイブームな音楽を紹介していきます。今回は特別ゲストとして、Mikikiで更新中のブログでもお馴染みなタワーレコードのサブミッション・メディア、〈TOWER DOORS〉を担当している小峯崇嗣さんが登場してくれました! 小峯さん、ようこそ。

紹介した楽曲は下記SpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyのプレイリスト
 
YouTubeのプレイリスト

 


【小峯崇嗣】

週末CITY PLAY BOYZ “day & night”

ご紹介いただきました、〈TOWER DOORS〉担当の小峯です! 僕がピックアップしたのは、〈TOWER DOORS〉のブログでメール・インタヴュー〈6つの質問〉も公開している4人組ヒップホップ・グループのファースト・アルバム『Tonight.』からの一曲。

冒頭、Mild High Clubの“Tesselation”をサンプリングしたメロディーが流れた瞬間、〈最高……!〉と心の中でガッツポーズしました。この元ネタわかる人多いのではないでしょうか? 原曲のままのユルい雰囲気+メンバーのラップの掛け合いがたまりません。ちなみに〈TOWER DOORS〉ではアルバム収録曲“FOUND”も紹介しているので、併せてチェックしてみてください。

 

【天野龍太郎】

んミィバンド “放火”

先週の“知らないパレード”に続いて発表された、んミィバンドのアルバム『知らないパレード』収録曲“放火”。もちろんライヴでも演奏されており、んミィさんのソロ・アルバム『Growing Fainter』にも収められていた一曲なのですが、山田光のミックスによるこの録音では奇妙にねじれた壊れそうなファンクへと変貌。んミィバンドの盟友、というとあれなんですが、唯一の隣人といいたい〈ゆめであいましょう〉の山本“ヘル”治之によるおそろしいファズ・ギターが、専制的なまでの暴力性をもった異物感で左耳(Lチャンネル)を支配します(ちなみに、んミィさんは演奏に参加していないんだとか)。Come on baby, light my fire. ボリス・ジョンソンに聴いてほしい。

 

inochi “消失点(2019年9月6日)”

yumboのギタリストでもある仙台の音楽家・皆木大知さんを中心としたバンドがこのinochi。アルバム『闘争』(2018年)を聴き、ひかりのうまでライヴを観たときには驚かされました。7月のライヴでも披露されていた彼らの新曲は、物語性をもった4部構成の組曲。ライヴでも皆木さんが話されていたこの曲のストーリーは、大変おもしろいです。

 

CVN feat. 玉名ラーメン “舌下 Zekka”

元Jesse RuinsのNobuyuki Sakuma=CVNがOrange Milkからリリースしたニュー・シングル。6月のアルバム『I.C.』収録曲に、玉名ラーメンを迎え入れています。CVNの神秘的でありながらも具象的なサウンドもすばらしいのですが、ウィスパー・ヴォイスやつぶやきを使い分ける玉名ラーメンのヴォーカリストとしてのすごさを強烈に感じます。

 

メトロノリ “櫂(HOB15)“

ベルギー(?)のエクスペリメンタル・ミュージック・コレクティヴ/レーベル、Slagwerkからメトロノリが発表したシングル。ひとつの曲のなかで自在に展開し、ぶわっと広がり、ぐにゃっと変化していく私的な音の情景には、いま見ている現実をゆがめてしまいそうなほどの眩惑感が。陳腐な言葉でいえば、天才。

 

その他の短編ズ “オチャンパー”

10月5日(土)の〈tiny pop fes〉開催に合わせたコンピレーション『tiny pop fes disc 1』からまた一曲、公開されました。先週はんミィさんで、今週はその他の短編ズの新曲。ふわっとしたコーラスや謎の言語をしゃべる宇宙人風のヴォイスを重ねたこの“オチャンパー”は、いつも以上にアヴァンで自由で、どことなく不穏。

 

Daichi Yamamoto “Brown Paper Bag”

Daichi Yamamotoのファースト・アルバム『Andless』から。ピアニストの桑原あいを迎えたドラマティックな〈Dress〉で幕開けし、〈Undress〉で幕を閉じる同作。ほんとうにすばらしいです(彼は桑原あい ザ・プロジェクトの『To The End Of This World』(2018年)にも参加していました)。ビデオが発表された“Brown Paper Bag”は、レゲエ風のドラム・ブレイクやディアンジェロへのオマージュなど、ぐっとくる瞬間が詰まった艶やかでソウルフルなラップ・ソング。彼のラップには嘘がないパーソナルな感じがあって、ものすごく惹かれますね。

 

CHIYORI with LOSTRAINS “Space Operation”

TAMTAMの高橋アフィさんがドラマーとして参加しているCHIYORI with LOSTRAINSのファースト・アルバム『Five Waves』がリリース。その収録曲“Space Operation”は、センシュアルなCHIYORIの歌に思わずぐっと引き込まれるソウル・チューン。ドラムの音色がかなりマシーナリーな感じだなって思っていたところ、実はプログラミングでした。神戸で活動するCosmicbathというグループのYuke Myrasが手掛けているようです。ビートだけとってみてもクール。

 

South Penguin “air feat. 荘子it”

岡田拓郎がプロデュース、レコーディング、エンジニアリング、ミキシングしたSouth Penguinのファースト・アルバム『Y』から(ちなみに、マスタリングはPADOK)。この曲では、先日ブラック・ミディのサポート・アクトも務めたDos Monosの荘子itがラッパーとしてフィーチャーされています。荘子のラップがいいんですよ。〈幼年期の終り〉〈フレデリックとワイズマン〉〈The Tarnished Angels〉〈動くな、死ね、甦れ!〉〈恐るべき子供たち〉〈TOKYO!〉……と、シネフィルらしいリリック、ライミングが満載。というか、〈コンドーム〉と〈サントーム〉で韻を踏むラッパーなんている? まさに文系ラッパー(もちろん、いい意味で)の急先鋒、と呼びたくなる。今度会ったらそう呼ぼう。Keifruscianteが撮ったインディー映画っぽい手触りのビデオも超かっこいい。

 

KANDYTOWN “HND (feat. MUD, BSC & DIAN)”

KANDYTOWNが10月23日(水)にリリースするフル・アルバム『ADVISORY』から。Neetzのパワフルなブーンバップ・ビートに惹かれる一方、MUDの巧みなラップにものすごい勢いを感じますね。

 

ゴールデンボンバー “LINEのBGMにしてるとモテる曲”

実はこれが〈今週の一曲〉。この、ほとんど意味のない歌詞ときたら! ナンセンスの極みです。すばらしい。ブラヴォー。マグニフィセント。感動すらおぼえる、すがすがしいまでのユーモア。

 

米津玄師 “馬と鹿”

これぞ米津節炸裂!なドラマティックでシリアスでシアトリカルで(ちょっと大仰な)新曲。アウトロはさりげなく“A Day In The Life”?

 

【田中亮太】

中村佳穂 “Rukakan Town”

馬喰町バンドのメンバーを加えた配信シングル・シリーズ第3弾は、弦楽器の爪弾きと手拍子が小気味よく重なるカントリー調のナンバー。最初は穏やかな草原にいると思ったら、彼女ならではの不思議なリズム感覚に誘われるまま、気が付いたら彼岸の世界に連れて行かれていた……。こうしたさりげなく聴こえる楽曲にこそ〈実は怖い中村佳穂〉を感じます。

 

【高見香那】

東京塩麹 “live well”

話題の人力ミニマル・ミュージック集団が11月3日(日)にリリースする7インチ・シングルの表題曲(シングルには、A面・B面に収録された2曲+2曲の計4曲入りダウンロード・コードが封入されるとのこと)。工場(『FACTORY』)のように音が反復・連鎖していくのが不気味でいて心地良く、「ピタゴラスイッチ」や「事の次第」(ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス)を久しぶりに思い出したりもしましたが、それはちょっと違うかな。

 

【酒井優考】

“丸の内スクラム 〜集まれ #ボーダーうぇい 〜”

精神状態は落ち着いているのに、今週はなぜかハイテンションな3曲が集まりました(いいでしょ、この編集部は割と落ち着いた曲ばかりなので)。Wiennersの玉屋2060%が作曲、アサミサエが歌唱したWEB CM。玉屋さんの提供曲は、どこに行っても「あ!」って分かる個性が宿っているから好きです。

 

DIALOGUE+ “はじめてのかくめい!”

今週の提供曲シリーズ②。作詞作曲ユニゾン田渕、編曲田中秀和。田渕さんらしいメロにイキスギコード、冒頭のファンファーレにBメロのボサノヴァと要素が多すぎるのに、歌う側も聴く側もそれらがまるで標準装備であるかのように受け入れていて、日本の音楽ってすごいなあって思いました。

 

DJ後藤まりこ “Breeeeeak out!!!!!”

なんだかどうしても目が離せない存在です。