リミエキが20年続いた理由
――『perfect ME』はリミエキがいまのラインナップになって2枚目のアルバムですよね。
「でもいまがいちばん楽しいってまだ言えていて、常に新しいことをやれている。それは恵まれてますよね」
――バンドとして新しいことをやり続けられるのはどうしてでしょう?
「そもそもリミエキのはじまりは、コピーをやっていたんです。ただ、わたしたちの大学の2個上がくるりなんですよね。くるりが同じサークルの先輩なんです。くるりがどんどん人気が出ていくんですよ。で、あるとき〈先輩たちは卒業したらどうするんですか?〉と訊いたら〈音楽をやるよ〉と言っていて。そこで〈ありゃ、音楽をやり続けるっていう選択肢もあるのか〉って。わたしは大学出たら就職して、というイメージだったから。
そのあと京都のインディー・ブームみたいなものが来て、先輩とかが青田買いされていくんですよね。そのときに、〈音楽ってずっと続けられるんだな!〉となった。ちょうどその時期に自分たちもオリジナルの曲を作りはじめていて、ライヴハウスにも出はじめるんですけど。そこでボアダムスやPANICSMILEに出会って。当時大阪にTagRag RecordっていうレーベルがあってKIRIHITOとかを出してたり、こんなにおもしろい音楽が世の中にあるんだと思った。
自分たちのオリジナルをやりはじめたときにそういう音楽に出会ったから、〈音楽ってのは新しいものを作るものだ、バンドってのは新しい音楽を作り出すものだ〉って思いでそのままずっと来ている感じですね。〈誰も聴いたことのないものをやりたい〉って」
――曲はどうやって作っているんですか?
「うちら4人とサポート・メンバー1人(小森良太/サックス)の5人でやってるんですけど、4人のうち3人、わたしとギターの飯田(仁一郎)とあとベースの谷ぐち(順/YUKARIの夫)が曲を作れるんで、交互にみんなでやりたい感じの曲の軸だけ持っていって、あとはスタジオで時間をかけてこねるって感じですかね」
――色彩豊かでフレッシュな曲が粒ぞろいのアルバムだと思います。
「わたしたちがそれをできているとすれば、その要素はメンバーの多様性からきているのかなって思います。好きなものは全然違うんですよね。ギターの飯田とわたしは長くやっていますけど、彼の作りたい音楽がすごくイヤなんですよ(笑)。イヤだから、以前はそれに添うまいとベースラインを付けていってたんです。彼のイメージは彼が保ちつつ、わたしは違うイメージを持ってできるような音楽にしようと思って……。
いまはベースが私じゃなくなったことで、ギターやドラムのフレーズに寄り添いながらやれるようになったと思うんですけど、当時は〈噛み合っているようで噛み合っていなくで、でも噛み合っているフレーズ〉とよく言われていて、その流れがいまでもずっと生きていて。あまり同じものを観聴きしていないのがいいのかもしれないです」
――飯田さんとも趣味が合わないんですね。
「彼は音楽関係の仕事をしているので幅広くすごくいっぱい聴いていて、ほんとに音楽好きって感じなのに対して、わたしはすごく偏っているから。そこでよくケンカになりますよ(笑)。視点が違う人たちが集まっていることが新しいものを作れる要素かもしれない」
――今回のアルバムでの新しい試みは?
「わたし前々作まではベースとヴォーカルだったから、それが歌だけになって、やっとちょっと自分のスタイルをできたかな、みたいなのはあって。歌い方というか表現の仕方を、すっごい試して。いままでは作った通りにしか歌えなかったけど、今回は一回のレコーディングで何通りも試して。
簡単に言えば、〈もっとここはパンキッシュにやってみよう〉とか、〈もっと歌い上げてみよう〉とか、そういうヴァリエーションを自分でも出したうえで選ぶことができるようになってきたので、ライヴとはまた違った歌い方ができてるかなぁと思います」
――確かにヴォーカルの表現の幅が楽しめるアルバムになっていますね。
「自分でもやっとヴォーカリストになれたかな、みたいな感じがありますね」
――谷ぐちさんがベーシストとして加入されたこともバンドにとって大きかったのでは。
「そうですね。それこそメンバーの多様性があるからいいってのと一緒で、いままでなかったハードコアの要素とかも彼がいるから入ったし」
――加入の経緯は?
「それはね、前の前のアルバムが出たあとに、〈なんとなくドラム抜けんじゃないかな〉みたいな空気だったんですよ。当時の3人でやりきったな、みたいな感じがあった。
そのときに〈次、新しいことは何ができるかな〉と迷っていて、じゃあ次はどんな形でやるかなとなったとき、飯田が私をピン・ヴォーカルにしたかったみたいなんです。じゃあベースは誰がいいかなってときに、なんだよ、近くにいるじゃん、となったのかな(笑)。ただ違う要素を入れたかったってのはありました」
――サポートの小森良太さんのサックスも大きなアクセントとして効いてますよね。
「ですよねー! 彼はジャズ・プレイヤーなので、バーッてレコーディングに来てバーッで吹いて、〈好きなとこ使って〉って帰っていくんですよね。存在がすごい刺激的」