ずっと真夜中でいいのに。のこれまでの作品からは、他人と線を引くことで自分を保ちながらも時に強がったり、時に本当の強さを出したりと、弱さに抗う〈強さ〉を垣間見ることができた。本作でも同様の姿勢は、“秒針を噛む”や”居眠り遠征隊”の歌詞から感じ取れる。

一方で、本作ではその〈強さ〉のほかに、〈寂しさ〉という感情がプラスされ、より人間味が増えたように感じられる。例えば”Dear Mr「F」”で〈僕なりに演じてるよ ひとりぼっちが叫んでるよ ねえ気付いてた 知らなかったよ どこに居ても答えなど無いな〉と相手の頭の中にすら入ることのできない寂しさを嘆いてみたり、”蹴っ飛ばした毛布”で〈傷つくことでしか自分を保てないのは嫌だよ〉と呟いたり。相手に気持ちが伝わらない悔しさやもどかしさ、つまりは〈寂しさ〉を、本作では〈強さ〉以上に1つ1つ大切に表現しているように思える。

もしかすると、いままでずとまよが言語化し続けてきた〈強さ〉というのは、この〈寂しさ〉を乗り越えていくための必殺技だったのではないだろうか。そしてその必殺技に頼らずに、ありのままの姿で向き合おうとする様子が本作から伝わってくる。そんなことを考えながら、ライヴで彼女が不器用ながらも音楽を通して私たちと会話しようとしている姿が、ふと脳裏に浮かび上がった。