インタビュー

20歳の新星、クボタカイのヒップホップがポップ・リスナーを惹き寄せる理由

クボタカイ『明星』

20歳の新星、クボタカイのヒップホップがポップ・リスナーを惹き寄せる理由

 MCバトルをきっかけに2017年よりラップを始め、さまざまな大会で好成績を収めたほか、〈KING OF KINGS〉の西日本選抜に勝ち残るなど、驚くほどのスピードでそのスキルを研ぎ澄ませてきた20歳のラッパー、クボタカイ。宮崎出身にして福岡在住、99年生まれの彼は、バトルでは飽き足らず、瑞々しく柔軟な感性を楽曲制作に投影。今年3月に自主制作で発表したEP『305』は、ヒップホップやR&Bの枠に留まらず、早耳のロック、ポップスのリスナーへと静かに、着実に広がっていった。

 「僕は最近のMCバトル・ブームど真ん中の世代なんです。いい意味でライトなリスナーだったというか、もともとはクリープハイプだったり、ヒップホップ以外の音楽を聴いていて、MCバトルをきっかけにヒップホップへのめり込んでいったので、いろんな音楽を楽しむ俯瞰的な視点は自然と備わったものだと思いますし、同じような感覚を持った人が共感してくれているのかなって」。

クボタカイ 明星 SPACE SHOWER(2019)

 そして、楽曲制作を始めてからまだ1年半ながら、日々大きくなる反響を受け、早くもリリースされるのが初の全国流通盤であるファーストEP『明星』。メロディアスなフロウのもとで、韻や比喩を交えた巧みな情景描写に秀でたラップと、歌心溢れるヴォーカルをしなやかに共存させる天性のバランス感覚は、特筆すべき彼の才能と言えるだろう。

 「多彩なトラックにラップのリズムを加えることで、リズムをより複雑に、豊かに膨らませて。さらにそのリズムを上手く抜き出して、メロディーに重ねるおもしろさを追求しているのが僕のラップです。ブラックでアンダーグラウンドな流れが主流の福岡のヒップホップ・シーンでは異質な音楽性なんですけど、同世代のSHUNくんやRin音くん、Mega Shinnosukeくんだったり、友達同士が繋がって、状況が少しずつ変わってきてますね」。

 20歳のラッパー/ビートメイカーのSHUNと共作した2曲——ヒップホップからシティー・ポップにアプローチした“ベッドタイムキャンディー2号”とシンガー・ソングライター的な叙情感を湛えた“せいかつ”では、すれ違う男女の思いにグッとフォーカス。18歳のクリエイター、Mega Shinnosukeがトラックを手掛けた“Wakakusa night.”ではチルなビートに故郷・宮崎のほろ苦い記憶の断片を散りばめるなど、音と言葉から醸し出されるメランコリックなムードに、彼の音楽がポップ・リスナーを虜にする秘密がある。

 「自分が主人公の曲が少ないように思うポップスに対して、ラップのリリックは自分が主人公ですよね。僕はラップを聴いていて、その人の人間性がポロッとこぼれ落ちてくるように感じられる瞬間が大好きだし、そのために、モヤモヤした気持ちを形にするのが自分にとっての音楽表現だと思っています。とはいえ、苦しかったり、辛かったりする気持ちをそのまま歌っても人に伝わりづらいので、リリックを書く時は自分の本音がより響くように、情景描写や比喩表現を大事にしています」。

 かたや、ヒップホップ色の強い2曲——展開するトラックと共にスキルを見せつける“TWICE”や、コンテンポラリーなビートを乗りこなす“真冬のショウウィンドウ”では自分の葛藤や音楽との向き合い方を掘り下げるなど、その才能の輝きは、この先さらに多彩な世界を映し出すことになるだろう。

 「チルな曲からハイファイで現代的な曲、サイケっぽいものやゴリゴリのトラップまで、いろんな曲をやりたいです。ただ、それがどういう曲であれ、歌うのは自分の思っていることだろうし、自分が思っているということは誰もが思っている普遍的なことだと思うので、それを自分なりの表現の仕方でフレッシュに響かせることができたらいいですね」。

 


クボタカイ
99年生まれ、宮崎出身/福岡在住のMC/トラックメイカー。2017年よりフリースタイル・ラップ、楽曲制作を開始。そこから3か月でTV番組「#ジューダイ」のラップ企画にて優勝、〈KING OF KINGS〉の西日本選抜にも勝ち残るなど、さまざまな大会で好成績を収める。2019年3月に自主制作の5曲入りEP『305』を限定リリース。同作は10月の〈カセットの日〉にはカセット化が、11月の〈レコードの日〉にアナログ化されている。さらに〈MOOSIC LAB 2019〉の短編部門で公開された映画「死んだほうがマシーン」では石川陸監督のオファーにより主題歌を担当。徐々に知名度が高まるなか、12月4日にファーストEP『明星』(SPACE SHOWER)をリリース予定。

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