COLUMN

スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)『ヴァイデオロジー』プレイヤーならではの視点がわかりやすい、ギタリストのための音楽理論書

スティーヴ・ヴァイが自ら解説する、ギタリストのための音楽理論書の日本語版が登場!

STEVE VAI ヴァイデオロジー ギタリストのための初級音楽理論 シンコーミュージック・エンタテイメント(2019)

 世間的にスティーヴ・ヴァイの印象を問えば、メタル、ハードロックのジャンルで活躍する超絶技巧にして孤高のギタリスト…という感じではないだろうか? その彼が解説する“ギタリストのための音楽理論書”というと、テクニカルな内容が中心で「速弾きギター小僧御用達」かと思われそうだが、内容はいい意味で全く異なる。

 ヴァイは幼少よりオルガンなどに親しみ、12歳でギターを始め、高校で楽典を学び、バークリー音楽大学卒という来歴を持っている。故に本書では、青年期や現在までの研究を通して培われた理論・知識(学問的研究)と、第一線で活躍するプレイヤーとしてのアドヴァイス(経験的研究)という2つの視点から各テーマを論じられており、それが他書との大きな違いといえる。

 例えば冒頭に解説される「ネック上の音」。まずほとんどのギター入門書において記述される通り、指板上の音を覚えましょう、という物理的=学問的な導入が用意されているが、次項では、それぞれの音には異なる色合いや特徴、性格、感情的な落としどころなど、1音1音が持つ意味に言及し、指板上の音を単なる記号に留めておかないための心構えを大切にしている。このように多くの演奏者が漠然と感じてきたことに大きな気づきを与えるヒントが随所に散りばめられている。

 また初級音楽理論と銘打たれているが、基礎的な楽典だけでなく、コードやリズムにおいてはかなり高度な内容が盛り込まれている。アッパーストラクチャーや複雑なポリリズムなどの譜例はフランク・ザッパ門下生としてのヴァイが垣間見られるファンにとっても嬉しい解説ではないだろうか?

 音楽を作り上げるための手段として、またミュージシャン同士のコミュニケーションを円滑にするための楽典を目的に書かれており、90ページ程度と読みやすい厚さであるが、長年付き合える深い内容になっているのは、さすがスティーヴ・ヴァイ! ギター以外の演奏家にもオススメできる理論書だ。

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