ジャズ・ピアニストでありながらメタル・ファンとしても知られる西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、96年のPlayer誌を古本で手に入れたことから、スーパー・ギタリスト、スティーヴ・ヴァイに想いを馳せます。皆様も、久しぶりに見た古い雑誌からいろんな記憶が蘇ること、あるんじゃないでしょうか? *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


少し前に、これを古本で見つけて買ったんですよ。

表紙はスティーヴ・ヴァイ様! Player誌の96年10月号、このヴァイ様とネコちゃんの表紙は忘れられない。当時持っていて、ボロボロになるほど読んだ記憶があります。

一度買ったことのあるものを、古本で倍の値段で買うというノスタルジー・メタラーとなってしまいましたが、再会したからには永久保存版にしようと思っています。もう売らない!

ウルトラ超絶ギタリストでありながら、とても深く幅広い引き出しを持ち、マクロとミクロの両方の視点を持って音楽を創造する芸術家、スティーヴ・ヴァイ。この号は、スティーヴ・ヴァイが『Fire Garden』(96年)をリリースする時の号で、私はこのアルバムが大好きで大好きで、ものすごく影響を受けています。

私は2012年に『Astrolabe』という作品をリリースしたのですが、これはこのアルバム『Fire Garden』の芯になる“ファイヤーガーデン組曲”のような、音楽で旅をする体験になるような組曲を作ってみたいという欲求のもとに、物語を紡ぐように1年3か月かけて作曲していったものでした。即興演奏で紡いでいくジャズの本質から少し外れますが、一度やってみたかったことでした。

また、この時代のPlayer誌を読みたくてずっと探していたんです。70年代の「ミュージックライフ」、80年代の「ヤングギター」も持っているので、次は90年代の音楽誌を掘ろうと思って、あちこち出かけるたびに探していました。

古い音楽誌は、広告が面白い。楽器屋の広告はその当時最新だった機材、人気のあった機材が沢山載っているし、レコード会社の広告は、今では名盤とされているものの発売当時の空気を感じることができる。文章や批評の流行りも感じることができて、一冊手に入れたらしばらくこれで飲めます。

Player誌といえば、メンバー募集欄。高校の時、バンドもやらないのにメンバー募集欄を見るのがとても好きだったこともあり(当連載第17回参照)、それをまた見たいと思って、この90年代で自分が見ていた頃のPlayerを探していたんですよ。日本のどこかで音楽の情熱を滾らせている人がいる、その熱量の集積を見るのが本当に楽しかったのですが、久々に手に取ってみると、あまりの情報量の多さに驚きました。1ページあたり約54件のメンバー募集が載っており、それが19ページもあったので、毎月1000人以上のメンバー募集を掲載していたのですね。インターネットのない当時は本当に貴重な掲示板でした。

2021年にこの過去の掲示板を眺めていると、きっとこの中からプロになった方もいて、すれ違ったことのある方もいるのかも、などと考えます。