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R&Bと現代音楽に耽溺した少年時代からアンサンブル・モデルンとの最期のコンサートまで
その軌跡を追ったドキュメンタリー映画がいよいよ公開!

 フランク・ザッパが1993年にわずか52才で亡くなってから30年近く経つが、この間も絶え間なく彼の作品はリリースされ続けてきた。生前に出たものと合わせるとアルバム120枚以上になる。そんな怪物の人生の、常人の理解を超えた強度と密度と速度を再確認させてくれるドキュメンタリー映画がやっと公開される。様々な形で遺された本人のインタヴュー音源やライヴ映像を軸に、バンド・メンバー(マイク・ケネリー、ルース・アンダーウッド他)や妻ゲイルなどの証言をはさみながら、ザッパの軌跡が綴られる。R&Bと現代音楽に耽溺した少年時代からアンサンブル・モデルンとの最期のコンサート(92年)まで、その音楽は恐ろしく幅広く、実験性に富んでいる。彼が常に挑み続けたのは自分自身の中で鳴っている音だった。「俺の願いはシンプルさ。作った曲全てについていい演奏といい録音を残し、それを聴くことだ。聴きたい人が他にもいれば更に良し。簡単に聞こえるが、すごく難しい」(ザッパ)。「彼は自分の内なる耳の奴隷だ。独自の方法で音を聴き、世界に示そうとする」(スティーヴ・ヴァイ)。商業音楽とは全く別のヴェクトルの純粋音楽を探究し続けるザッパの厳格さ、明晰さ、冷酷さは、関係者たちを困憊させたが、その一方、彼は人情家であり、強烈な正義感の持ち主でもある。偽善や欺瞞を激しく憎んだその目は常に自由と真実だけを見つめていた。だからこそザッパは世界中で今も聴かれ続けているわけで。ビロード革命~独立期(89~91年)のチェコでザッパがいかに尊敬されていたかを映画の冒頭と最後で描いた監督もそのことを言いたかったのだろう。「バンドでの僕は作曲家フランクの道具だった」と嘆きつつ「彼がすごく汚いコードを書いても、そこには常に希望の光があった」というヴァイの言葉が特に印象的だ。

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 なお、本映画の公開と前後して、初CD化音源を多数含む3枚組の同サントラ盤『Zappa』、ザッパ自身が監督した映画「200 Motels」の50周年記念2枚組、傑作ライヴ盤『Fillmore East: June 1971』として知られる2日間のライヴ音源全てをぶち込んだ8枚組『The Mothers 1971』が日本発売される。ザッパ・ワールドの熱量の凄まじさに古参ファンも感嘆するはず。そして評伝「フランク・ザッパ」(バリー・マイルズ著)も出たばかり。ザッパに関する書物は多いが、質・量(400p弱)共にこれぞ決定打と言っていい内容。特にキャリア初期に関する詳述は、ザッパという人間の背景、米国の文化や風土との密接な関係についての理解を深めてくれるはず。映画と共に是非読んでいただきたい。

 


FILM INFORMATION
映画「ZAPPA」
監督:アレックス・ウィンター
音楽:ジョン・フリッゼル
出演:ブルース・ビックフォード/パメラ・デ・バレス/バンク・ガードナー/デヴィッド・ハリントン/マイク・ケネリー/スコット・チュニス/ジョー・トラヴァース/イアン・アンダーウッド/ルース・アンダーウッド/スティーヴ・ヴァイ/レイ・ホワイト/ゲイル・ザッパ
配給:ビーズインタナショナル
(2020年|アメリカ映画|128分|原題:ZAPPA)
2022年4月22日(金)よりシネマート新宿・シネマート心斎橋にて、ほか全国順次公開
https://zappamovie.jp/