(左から)サトウカツシロ(ギター)、池田優太(キーボード)、林洋輔(サックス)、Kanno so(ドラムス)、高木祥太(ヴォーカル/ベース)

高木祥太(ヴォーカル/ベース)を中心とする新進気鋭の5人組、BREIMENがついにファースト・アルバム『TITY』を完成させた。2015年に6人編成のバンドとして結成された彼らは、ヴォーカリストの脱退を経て、リーダーでメイン・ソングライターの高木がヴォーカルも兼任する現体制へと変貌。今回のリリースを機に、バンド名を〈無礼メン〉から〈BREIMEN〉に改名し、あらためてスタートを切ることになった。

高木といえば、昨年までエドガー・サリヴァンというエレクトロ・ポップ・ユニットの一員としても活躍し、近年ではCharaやTENDREなどのサポートに抜擢されるなど、まさに今飛ぶ鳥を落とす勢いのベーシスト。そんな高木を筆頭に、メンバー全員がセッション・プレイヤーとして各所にいま引っ張りだこのBREIMENは、現段階ですでに同世代バンドを凌駕する演奏力を誇っている。オーセンティックなファンクを基礎としながら、ロックもトラップも躊躇なく飲み込んでいく彼らのセンスは、この国の音楽シーンにおけるジャンル間の垣根を今後さらに切り崩していくだろう。

では、早速そんなBREIMENの首謀者である高木と共に、BREIMENひいては高木というアーティストのここまでの歩みを振り返りつつ、この『TITY』という作品の全容に迫ってみよう。

BREIMEN TITY Pヴァイン(2020)

 

ベースってカッコいいじゃん

――高木さんのご両親はどちらも音楽家なんだとか?

「はい。父親がフラメンコ・ギタリストで、母親がフルート奏者なんです。なので、小さい頃から音楽はずっと身近にあって」

――じゃあ、小さい頃から高木さんも楽器を手にしていた?

「いや、僕はずっとサッカーばっかりでした(笑)。家のグランド・ピアノに触ったり、ドラムとかサックスをやってみようとしたりしたことはあるんですけど、なんだかんだ続かなくて。ベースを始めたのは高校2年のときなんで、わりとスタートが遅かったんですよね」

――高2でベースを始めたのは、何かきっかけがあったんですか?

「僕、それこそ本気でサッカー選手になろうと思ってたんですけど、やっぱり高校生くらいになると、自分よりも上手いやつがどんどん出てきて、徐々に現実を知り始めるんですよね。あと、僕どっちかというと先輩とかに目をつけられるタイプだったんで(笑)。それがちょっと面倒くさかったのもあって、何か新しいことがやりたいなと」

――そこで目をつけたのが、じつはいちばん身近にあった音楽だったと。

「他にもスケボーやったり、ダンス同好会にも入ってみたりしたんですけど、1日で辞めちゃって(笑)。それで家に帰ったら、地下室に赤いベースと黒いギターが置いてあって。当時の僕はベースとギターの違いもわかってなかったんですけど、俺は赤が好きだし、こっちのほうが大きくてカッコいいなと(笑)。それでベースを手に取ったのが始まりですね」

――見た目で選んだわけですね。

「そう。要はたまたまだったんです」

――でも、そんなベースに高木さんはのめり込んでいったわけですよね?

「そうですね。これもたまたまなんですけど、ベースを始めた頃によく聴いてたのが、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)とかジャミロクワイだったんです。そういう音楽のおかげで、ベースってカッコいいじゃんと素直に思えたし、そこからどんどんブラック・ミュージックに傾倒していって。

仮にこの時点でベースが映えない音楽しか知らなかったら、多分すぐギターに持ち替えてたんじゃないかな」

――今こうして音楽を本格的にやっているなかで、ご両親からの影響は感じていますか?

「最近ちょっと感じます。親が普段聴いてるのは、クラシックとかジプシー・ジャズとか、そういう他の家庭ではまず流れていないような音楽ばかりだったんですけど、最近になって僕もあらためてクラシックが好きだなと感じてて。

今作の“By my side”にはそれがちょっと表れてると思います。もしかしたら自分が歌うようになったのも、いま思えば両親がどちらもリード楽器をやってた影響なのかもしれない」

『TITY』収録曲“By my side”

 

コミカルな〈無礼メン〉からリアルな〈BREIMEN〉へ

――結成当時のBREIMEN(無礼メン)は高木さんではなく、他の方がヴォーカルを担当されていたんですよね。音楽性とバンドの佇まいも、当時と現在ではまた少し違うというか。

「以前のヴォーカルがいた頃に僕らがやろうとしてたのは、たとえるならプリンスにジャパニーズ・メロディーが合わさったような……まあ、岡村靖幸みたいな感じですね(笑)。で、そこにコミック的な要素を加えるっていう。

当時はそういうコンセプトがあって、そのコンセプトやヴォーカルのキャラクターを踏まえて、僕が歌詞を書いてたんです。でも、自分が歌うようになってからはそうもいかなくなって」

――というのは?

「つまり、自分で歌うならフィクションじゃなくて、リアルなことを歌いたいなと思ったんです。いわゆるシンガー・ソングライター的な課題とそこで初めて対峙したというか」

――『TITY』はそのリアルを突き詰めた作品ということなのでしょうか? 今作の収録曲って、主に女性関係をモチーフとしてますよね。

「僕もそれ、収録曲を並べたときに気づいたんですよ。ノー・コンセプトで作ってたはずなのに〈俺、女の子のことばっかり歌ってるじゃん!〉って(笑)」

『TITY』トレイラー

――基本的にはどの曲も、女の子に翻弄されている様を歌ってて。最終的には“By my side”で女の子にフラれるっていう流れも面白いなと(笑)。

「このアルバムに登場する女の子って、じつは全員ちがう人なんですよ。というのも僕、去年の頭くらいにずっと付き合ってた彼女に浮気されちゃって。それからちょっと荒れちゃって、いろんな人を好きになっちゃったんですよね(笑)。なので、アルバムはその流れに沿った曲順にしようかなと。

つまり、出会いの曲から始まるんだけど、結局は別れてしまって、最後は回想で終わるっていう。もちろん誇張したところもあるんですけど、今作の流れはそういう時系列にしてみたんです」

『TITY』収録曲“IWBYL”

 

音楽とセックスは似ている?

――この〈TITY〉というアルバム・タイトルは何を意味してるんですか?

「僕、みうらじゅんさんの『アイデン&ティティ』という漫画がめちゃくちゃ好きなんですよ。で、これは僕なりの解釈なんですけど、『アイデン&ティティ』における〈ティティ〉というのは、主人公の彼女を指してるんじゃないかなと思ってて。つまり主人公が〈アイデン〉で、そこに彼女がいることで〈アイデンティティ〉が成り立つってことなのかなと。

それでアルバム・タイトルをまず〈TITY〉に決めて、それから“IDEN”という曲を作ったんです」

『TITY』収録曲“IDEN feat. AAAMYYY”

――なるほど。“IDEN”の〈ティティを探す〉という歌詞は、そういう意味だったんですね。

「そうなんです。いろんな女の子が目の前に現れたけど、俺が探してるのは〈ティティ〉なんだっていう。そういう感じで自分のドキュメンタリーとしていろんなシーンを切り取ってたら、結果的に今回はコンセプチュアルな作品になったんです。まぁ、後付けではあるんですけど」

――かなり私小説的なんですね。ちなみにこの記事の担当編集者は〈もしかすると、この「TITY」というのは「TITTY(おっぱい)」なんじゃないか〉と推測していたようです。

「うわ、その解釈めっちゃいいですね! 今後はそれでいこうかな(笑)」

――セクシーな表現というか、エッチな描写がちょくちょく出てくるところも、たしかに今作の特徴かなと思ったのですが、その点はいかがですか?

「うん。それこそ“PINK”は風俗嬢の歌ですし(笑)。エロって面白いですよね。エロい表現っていろんなことに紐付いてくるし、それこそ音楽とセックスって似てますから。

言ったらセッションなんてワンナイト・ラヴみたいなもんじゃないですか。まったくプレイ・スタイルがわからない相手と、お互いの様子を探りながら一緒に音楽を作るんだから、これはもうセックスだなと」

――たしかに。

「セッションでいちばん大事なのは、その人のプレイアビリティーじゃなくて、まわりの音が聴けるかどうか、なんですよね。つまり、独りよがりな人はセッションに向かない。だから僕もセックスのときはすごく献身的になるんですけど」

――(笑)。

「でも、本当はそれすら一切考えずにお互いのフィーリングだけでしっかりハマっていくのが一番いいんですよね。あ、もちろんこれはセッションの話ですよ(笑)」

 

踊っているつもりだけど、踊らされているだけ

――『TITY』は私小説的であるのと同時に、現代の若者像を描いた作品でもありますよね。それこそ歌詞には〈インスタ〉や〈タピオカ〉も出てくるわけで。

「昔だったら〈ポケベル〉みたいな感じですよね(笑)。そういう言葉を入れるかどうかの判断って、作る人にもよると思うんですけど、僕はどっちもアリだなと思ってて。100年後も違和感なく聴ける歌詞も素晴らしいし、〈『ポケベル』ってなんだろ?〉みたいなのも面白いなって。昔の写真を見返して、〈俺この頃こんな服着てたの?〉みたいなのもリアルだと思うし。実際、僕もインスタやってますしね。タピオカの行列には並ばないけど(笑)」

――それこそタピオカの写真をインスタにあげるような、ソーシャル・メディアに依存したライフスタイルの空虚さも、恐らく今作のテーマだったのでは?

「ぜんぜん意識的じゃなかったけど、たしかにそうかも。その点でいうと、“ODORANAI”に関してはフィクションで、とにかくこの曲ではいま言いたいことを言ってみたんです。

それこそみんな本当に自分の意思でタピオカを飲みたいと思ってるのかなって。じつはそれって何かのステマだったりするし、“ODORANAI”はそういう何かに自分たちが踊らされてるっていうのと、女の子に踊らされてる状態をかけた曲なんです」

『TITY』収録曲“ODORANAI”

――“ODORANAI”は現行のラップ・ミュージックにアプローチした曲でもありますよね。

「途中でトラップに切り替わるっていうアイデアは僕が出したんですけど、あのトラック自体は新加入したドラマー(Kanno so)が作ってくれたんです。彼はいま21歳で、それこそ感覚がいちばん若いから、ドラマーだけどふつうにトラックも自分で作れちゃうんですよね。彼が加わったことで、僕もこのバンドに打ち込みの要素を持ち込みやすくなったし」

――“A・T・M”の骨が抜けてふにゃふにゃになったようなファンクネスからは、ちょっとサンダーキャットも連想しました。海外で生まれた新しいファンクとの同時代性を感じるというか。

「たしかに海外では80年代リヴァイヴァルの時期を踏まえて、ファンクを更新しようとする流れがありますよね。感覚としては僕もそう在りたいと思ってます。

とはいえ、海外の流れに乗っかりたいとも思ってなくて、あくまでも日本のバンドとして何か新しいものを提示できたらなって。それに僕ら、いうほどファンクでもないし(笑)。どっちかというと、BREIMENはミクスチャー・バンドなんじゃないかな」

『TITY』収録曲“A・T・M (album ver.)”

――なるほど。

「ジャンルというより、スタンスとしてっていう意味ですけどね。たしかに僕はブラック・ミュージックが好きだけど、そのテンプレには乗っかりたくないんです。ひとつのリファレンスに収めたくないというか、必ずそこになにかを混ぜたくなっちゃうんで」

――たしかにファンクが基礎ではあるけど、BREIMENにはロック・バンド的な側面もあると僕も思います。

「僕、銀杏BOYZが大好きなんですよ。もしブラック・ミュージックと出会ってなかったら、たぶん僕はパンク・バンドのヴォーカルになってたんじゃないかな。

というか、いま自分が歌いたいことがバンドの音に合わないなと感じることが時々あって、そこに関しては今ちょっと悩ましいんですよね。まあ、女の子のことを歌ってる分にはまったく問題ないんですけど(笑)」

――いま高木さんが歌いたいこと、というのは?

「簡単にいうと、政治批判的なことですね。僕がいま個人的に関心があるのは、女の子と政治(笑)。僕は映画の感想を言うくらいのノリで政治の話をしてもいいと思ってるし、何よりもお口にチャックされてる感じがいちばんイヤなんですよね。

ただ、それと僕らのサウンドが醸し出すフィールには少しギャップがあるような気もするので、ちょうどいい塩梅を見つけ出したいなと。それが今のテーマですね」

――政治とはちがうかもしれないけど、僕は『TITY』も社会的な作品だと思いましたよ。たとえば“A・T・M”は恋愛をモチーフとしたユーモラスな曲だけど、その背景には都市で生きる若者の貧困も透けて見えるし。

「ああ、そう思ってもらえたのは嬉しいですね」

 

CharaやTENDREとの共演を経て、〈もっと成長しなきゃ〉と思った

――『TITY』はまさに名刺代わりの一枚になると思うんですけど、同時にBREIMENのみなさんはそれぞれサポート・ミュージシャンとしても活動されてますよね。そうした各々の活動もきっとBREIMENの音楽性に還元されてると思うんですが、いかがですか?

「もちろんそれは大きいと思います。というか、元々僕はこうしてバンドを始める前から、好きなミュージシャンと一緒に音楽を作れるようになりたいって気持ちがすごく強かったので、今後もそういう活動はどんどんやっていけたらなと」

――好きなミュージシャンといえば、2013年に高木さんはツイッターでCharaさん宛に熱いメンションを送ってるんですよね。そして本当にそれを実現させてしまったと。

「高校を卒業した頃、完全に深夜テンションでつい送っちゃったんです(笑)。そしたらCharaさんからまさかの返信がきて。5年後にCharaさんとお会いできた時にそのツイートのスクショを見せたら、Charaさんが〈これはデスティニーだね!〉って」

――本当にそれ、夢みたいな話ですよね。

「でも、CharaさんやTENDREとのツアーを回ってみて、自分はもっと成長しなきゃダメだなと思いました。それこそCharaさんは俺を呼んでくれたけど、俺からCharaさんを呼ぶわけにはいかないじゃないですか。正直、有名になりたいとかぜんぜん思ってなかったけど、もうそんなこと言ってられないというか、俺もそういうミュージシャンになっていかなきゃなって。今はそう思ってますね」

 


LIVE INFORMATION
『TITY』RELEASE TOUR

BREIMEN 〜TITY RELEASE ONE MAN〜
2月15日(土)東京・下北沢 GARAGE
開場/開演:18:30/19:00
チケット:前売り3,000円/当日3,500円(いずれもドリンク代別)

BREIMEN × DinoJr. × Kroi 〜TOHANMEI TOUR〜
2020年3月7日(土)東京・六本木 VARIT.
出演:BREIMEN/DinoJr./Kroi/ヘンショクリュウ
開場/開演:18:00/18:30
チケット:前売り3,000円/当日3,500円(いずれもドリンク代別)

2020年3月8日(日)大阪・南堀江 SOCORE FACTORY
出演:BREIMEN/DinoJr./Kroi/トライコット
開場/開演:18:00/18:30
前売り/当日:3,000円/3,500円(いずれもドリンク代別)

2020年3月9日(月)愛知名古屋CLUB UPSET
出演:BREIMEN/DinoJr./Kroi/ペンギンラッシュ
開場/開演:18:30/19:00
前売り/当日:3,000/3,500(いずれもドリンク代別)

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