
デビュー・アルバム『TITY』(2020年)のリリース以降、まるで波紋が広がっていくかのようにじわじわと評判を呼び、ついにブレイクを果たしたミクスチャー・ファンク・バンド、BREIMEN。漫画家の尾田栄一郎からaiko、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、堀込高樹(KIRINJI)、小笹大輔(Official髭男dism)まで、その音楽は数々の著名人を虜にしている。
5人への期待が最高潮に高まっているなか、BREIMENがニュー・アルバム『Play time isn‘t over』をリリースした。〈仲間とともに遊びを続けていく〉をテーマに制作された本作は、コロナ禍のリアルな思いや希望、そしてこれまで以上に拡張したポスト・ジャンル的な音楽性がぎゅうぎゅうに詰め込まれた快心作だ。
そんな『Play time isn’t over』についてバンドのベーシスト/ヴォーカリストである高木祥太が、大いに語ってくれた。聞き手は、音楽を中心にカルチャー全般の執筆で活躍するライターの三宅正一が務める。

コロナ禍で考える〈ライブって何?〉
――祥太くんはいま、ベーシストとしてすごく忙しそうですね。そんななかでもBREIMENの作品を作ったりTempalayに参加したりと、音楽に身を投じてる充実感があるのでは?
「そうですね。去年はインナーな活動が多かったので。やっぱり配信ライブって、有観客のライブとは完全に別物なんですよ。あれはあれでよさがあるんですけど、〈ライブってなんだろう?〉って考えます。たとえば、この間Tempalayのライブ中、機材トラブルでベースの音が出なくなったんですけど、ライブってそういうのがおもしろいじゃないですか」
――まさに。
「Tempalayのライブで〈生きてる感じ〉みたいなものを得られて、バランスが戻りました。
去年は、制作する時間はすごくあったけど、時間があるから作れるかといったら、別にそういうわけでもない。これまでは、ライブというエネルギーの循環や通り道があったから作品を作れてたんです。いまは、たとえば、めっちゃメシ食ってるのにウンコが出せない、すげえニキビが出来ちゃう、みたいな感じで」
――(笑)。サイクルが崩れてるってことだよね。
「俺の場合、プレイすること――たとえばTENDREでライブするとか、そういうところでエネルギーをもらってたんです。だから、このアルバムを出して、ストックがもうないんですね」
――なるほどね。Tempalayの『ゴーストアルバム』(2021年)についてメンバーに訊くと、〈祥太がいたから刺激的なものを作れた〉って言うんですよ。それは、祥太くんにとってもエキサイティングな体験だったんじゃないですか?
「そうですね。ここ最近は、本当にやりたいことしかやりたくないと思ってて。自分で言うのもなんだけど、〈ベーシストの誰か〉じゃなくて、Tempalayは俺を俺として呼んでくれてるんですね。それって、俺のスタンスが伝わってるっていうことでもあって、ようやくそういう活動ができるようになったのかなと思います」

全部取っ払って、ただの〈ミュージシャン〉
――BREIMENが『TITY』というアルバムを出したことも大きいよね。祥太くんが何を表現したいかだけじゃなく、祥太くんがベーシストでありシンガー・ソングライターでもあることも伝わったと思うんです。
「俺はベーシストでもあるけど、いまは全部取っ払って、ただの〈ミュージシャン〉だなって思ってます。肩書きを分けると細かくなるけど、結局、全部俺かなって。たとえば、ドラマーに転身しても、たぶん同じことができる。もちろん、技術的には無理ですけど……」
――マインドとしてね。
「俺はたまたまベースっていうプリンターを手にして、それを使って自分の音楽をアウトプットしてるだけ。そのプリンターは現状、ベースとソングライティングに関しては、自分の頭のなかで思い描いているものを高い精度で精確に出すことができるんです。
もし俺がいきなり井口(理)くん(King Gnu)になったら、もっといろんなことができると思うんですよ。それは、彼の歌の技術力が圧倒的に高いから。でも、俺は井口理じゃない。制約があるからおもしろいなと思って。BREIMENは、すごく高い演奏力を持ってて、なんでもできる人たちだと言われてて、実際やろうと思えばなんでもできる。けど俺の声は、なんでもはできないんです。逆に言えば、BREIMENのジャンル感がどんなに広がっても、俺の声のレンジがいい意味で狭いから、何をやってもBREIMENになれるのかもなと」
最期まで音を止めないで
――そうやってBREIMENが認知され評価されてく過程で、「ONE PIECE」の尾田栄一郎先生にレコメンドされて「週刊少年ジャンプ」に載るという、それこそ漫画みたいな話もありましたね。
「びっくりしましたね。BREIMENは完全にインディペンデントで、チームの仲間たちだけでやってるんです。だから、政治とかなしに、ただ〈好き〉っていうことで繋がったのが、すごくうれしい」
まじか! pic.twitter.com/yzzt54yZ4z
— k a n n o s o (@so_kanno) July 5, 2020
――それが、いまのBREIMENの立ち位置にも繋がってますよね。(赤い公園の津野)米咲がBREIMENのことを好きなのもよくわかります。
「うれしかったですね。米咲ちゃんって、もちろん会ったことはあるけど、2人で飲んだこともないし、知り合いぐらいの距離感だったんですよ。でも、本当に〈いい〉って思ってくれて、『関ジャム』で紹介してくれたんだと思う。
彼女が亡くなって、もちろん悲しかったんですけど、〈もっと仲良くなりたかったな〉という気持ちしかないんですね。去年は、そういうことを考える時間がありましたね。自分の人生って自分で選べるものだから、その選択に否定も肯定もないって俺は思ってます。
自分、お腹空いてたんですかね。
— つのまいさ (@kome_suck) October 11, 2020
美味しい音楽です☺️ https://t.co/oomQZ1Q7Bb
“Play time isn’t over”に〈最期まで音を止めないで〉という歌詞があるんですね。赤い公園の全部を知ってるわけじゃないので勝手な主観ですけど、米咲ちゃんにもし次にやりたいことがあったら、もしかしたら死ななかったのかもしれない。〈やりきってしまったのかな〉と思ったんです。亡くなった後にリリースがありましたよね(2020年作『オレンジ/pray』)。だから、最期のギリギリの状態まで、ずっと音を作りつづけてんだろうなって。その姿勢が、すごくミュージシャンだなって思いました。
もちろん、そのことから直接アルバムの曲を作ったわけではないですよ。最初に出来た曲は“utage”です。去年の頭に、〈戦争が起こるかも※〉ということがあったじゃないですか。“utage”は、大々的に発信するつもりはないですけど、反戦歌というか、戦争の歌なんです」
――プロテスト・ソング的なところがある?
「う~ん……。俺的には、たまの“さよなら人類”。俺は他人に強要したくなくて、〈みんなこうすればいい〉というカルトがやりたいわけじゃないから、〈俺はこうするよ〉ってだけなんですよ」
――それは、Kroiの内田(怜央)くんとの対談でも言ってたよね。〈提案〉じゃなくて、〈提示〉だって。
「“utage”もそうですね。自分に対する戒めというか。“utage”は唯一コロナ禍になる前にあったんですけど、それ以外は全部コロナ禍になってから作った曲なので、去年の一年間を取り切ってるんです」

〈楽しい〉をみずから見つけ、作り出す
――歌詞を読むと、室内にいる感じが強いですしね。表題曲の“Play time isn’t over”がアルバムの真ん中にあって、あの曲をいかに拡張するかがテーマであるようにも感じたんです。“Play time isn’t over”をでっかく歌うために他の曲も存在してるというか。
「今回は、早い段階からアルバムを想定して曲を書きはじめました。『Play time isn’t over』というひとつのアルバム単位を考えて作品を作ったんですね。だから、繋がりとか仕掛けとかがめちゃくちゃあるから、ぜひ通しで聴いてもらいたくて」
――1曲目の“aaA”から2曲目の“utage”への繋がりで、それは如実にわかりますね。
「頭の“aaA”と“Play time isn’t over”と最後の“Zzz”の3つが、このアルバムの核だと思ってます。
“aaA”は、いろんなことに気づけるか――それは、たとえば政治のおかしさかもしれないし自分が楽しいと思えることかもしれない、ネガティヴでもポジティヴでもいいけど、そのいろんなことに気づけるかがテーマになってるんです。センサーを張ってればいろんなことに気づけて、そこから広がっていくことがあるよね、という」
――感度を高く持ててるかという。
「そう! “Play time isn’t over”の〈聞こえるか遊びの鳴る方〉っていう歌詞もそうで……。自分の作品のことってあんまり説明したくないんですけど、このアルバムに関してはちょっと説明したくなっちゃうんですよね(笑)」
――どんどん言っていいと思う!
「俺は去年、ようやくBREIMENのチームを作れたんですよ。いまマネージャーをやってくれてるのは、もともと舞台監督をやってたけどコロナで仕事がなくなっちゃって、それからウチに遊びに来るようになったやつで、流れ流れてマネージャーに〈降格〉したんです(笑)。本人がそう言ってるから、そのまま〈降格〉って言うけど(笑)。音楽業界の人たちが暇になっちゃったり、そういうことがあったからチームが出来て、とにかく遊びまくりました。しんどいときもあったんですけど、みんなのおかげで楽しめてはいたんです」
――なるほどね。
「その〈楽しい〉ってなんなんだろう、って考えたんですね。たとえば、フェスがなくなっちゃったら、他人が作ったものに頼らないで俺ら自身で遊びを考えよう、という。俺らは共同生活をしていて、ウチでよく変なオリジナルの遊びを自発的に作ってるんですね(笑)。そういうことなのかもな、とも思ったりして。
俺、ずっと音楽のことを仕事って思えなくて、いまだに遊びだと思ってるんです。その遊び=音楽があるから、救われてる部分がある。コロナで予定が飛んでも、音楽で遊べるからやれてるんだなって。俺はたまたま音楽に出会えたから、それに気づけた――そういうことが、“aaA”に繋がってます。いま疲弊してても、自発的に楽しめることを何か見つけられれば楽しいよ、って提示してる感じです。だから結局、このアルバムは俺の記録なんですね。
最後の“Zzz”の歌詞に〈気付けば終わりを迎えているだろう〉とありますけど、それは楽しいことをいろいろやってたら、気づいたら終わってる、ということなんですね。それは、もしかしたら〈死〉かもしれない。実は、“Zzz”は“aaA”に繋がっていて」
――〈Z〉から〈A〉だしね。
「曲名だけじゃなくて、音もなんです。サブスクの場合、(ループ再生にしていると)頭に戻るじゃないですか。それで繋がるように調整しました」
――じゃあ、ずっと円を描いていくんですね。
「小さな流れで見たら“Zzz”で死んで終わるのかもしれないけどで、大きなサイクルで見たら、〈さよなら〉で終わったとしても、センサーを張ってれば何か新しいものに出会える。だから、人生なのかもしれないですね、このアルバムは」
2020年に得た仲間たちと作り上げたアルバム
――輪廻転生とも考えられるしね。2020年に祥太くんがそういう思考になれたのは、すごくよかったことですよね。
「それは、仲間たちがいたからですね。おおっぴらには言いづらいですけど、ウチはオープンに誰でも来ていい家なので人が集まるんです。そしたら、すごい広いレンジのやつらが集まってきて。で、そいつらと一緒にMVを作ったり。このアルバムのジャケット写真に写ってるのも、ほとんどそいつらなんですよ。
いまになって気づいたけど、俺はそれにかなり救われてたから、アルバムに仲間たちを出したくなったのかなって。俺ら(バンド・メンバー)だけで作ったアルバムじゃないなって思うから」
――そういう幸福なコミュニティーの在り方について聞くと、表題曲がまた活きてきますね。あのMVもグッときます。いまは、大勢の人が横に連なって声を上げてるのを見るだけで感動してしまいますから。
「MVは、本来音楽のライブやコンサートで使われてる場所で撮影したんです。そこで舞台セットを作ることで、何かを作っていくことを見せたかった――監督も含めて、チームのみんなでそういう話をしました。みんなで作った舞台でみんなで歌うという、俺にとってそれは遊びでもあるんだけど、それがなかなかやりづらい時代になっているからこそ、というのはあるかも」
――最近、クワイア的なコーラスは音楽的なアプローチとして多いけど、“Play time isn’t over”は〈合唱〉の強さを感じましたね。
「“Play time isn’t over”で歌ってるやつは、全員俺の友だちなんですよ。歌がうまいやつにも、めっちゃ音痴なやつにもがんばって歌ってもらって(笑)。50人ぐらいバラバラに録ってて、だんだん声が重なっていくそのレコーディングにもグッときましたね。MV監督のやつ(2025)なんか気持ちが入りすぎちゃって、〈フル・コーラス歌いたい!〉って言いだして。録音が終わってブースから出てきたとき、なぜか泣いてました。結局、最後のとこだけ切り取って使うんだけど(笑)。ほんと、みんなで作った作品です」
――チームがいてくれて総力戦で作れたからこそ、祥太くんが〈自分にとっての音楽とはなんぞや〉というところに立ち返れた側面もあったわけですね。“Play time isn’t over”は、音楽的な多様性を持ったBREIMENのオープンなマインドや独創的なポップスの強さが明確に表れている曲だと思いました。かと思えば、1曲目の“aaA”は〈Corneliusか!?〉みたいな強烈なエディットで。
「あれは、一個一個の素材は宅録で、みんなで録ってるんです。あとはオンラインで録ったりとか、ご時勢的なことも絡んでます。それと、“aaA”にはアルバムの他の曲で使った音色もそのまま使ってるんです」

BREIMENと赤い公園とTempalayに共通する姿勢
――欠片を散りばめてるんですね。ジャンルに囚われないコラージュ・ポップである一方で、しっかりと肉体性を落し込んでいることも伝わってきますね。
「1枚目では〈ミクスチャー・ファンク・バンド〉と言っていましたが、その時点で、いわゆる〈ファンク・バンド〉ではなかったんです。もちろん俺らはもともとファンクやR&Bのセッションをしてきたからファンキーにはなるんですけど、〈俺たちのジャンルってなんなんだろう?〉と思ってました。でも、総合的には〈BREIMENらしさ〉ってあると思う。俺らが意図してなくても、一個一個の選択にはそれがあって」
――音色とかアレンジとかの選択にね。
「そうです。たとえばポップスによくある安パイ的なフレーズは、別にBREIMENでやる必要ないよね、みたいな。いまは、俺がやりたいこととバンド・メンバーのみんながやりたいことがぶつかって混ざりあったら、何をやってもBREIMENっぽくなるようになってて。だから、〈BREIMENっぽさ〉の理由をジャンル感には置いてないんです」
――それこそが、最高のポップスを作れる条件なんじゃないかなと思いますね。米咲は、BREIMENのそこに惹かれてたんだと思う。彼女もロックがベースにあったうえで、祥太くんに近い発想で音楽を作っていたと思うし。
「たしかに、そこは近いのかもしれません。俺も根本にファンクやR&Bがあるけど、〈そのうえで〉っていうことをやっているわけだし。音楽をジャンルで分けてないから、そこは大きいかもしれないですね」
――その姿勢は、Tempalayにも感じるんですよね。
「Tempalayは、BREIMENのことをめっちゃ好きでいてくれるんですよ。(小原)綾斗はツアー中、1日に1回BREIMENを褒める時間があって(笑)。それは、三宅さんが言ってくれたようなことを感じてくれてるからかもしれません。
絶対に、ロジックからスタートしないようにはしてます。BREIMENはわかりやすく〈業界最前線プレイヤーが集まってる〉と書かれますし、それにはなんの異議も唱えません。事実、そうなんです。ただ、〈プレイヤー〉ってオーダーを受けてそれに対して自分の演奏をするイメージだけど、俺らは〈これしかやりませんよ〉みたいなスタンスじゃないんですよね」
――スタジオ・ミュージシャン的な発想ではないってことだよね。
「そうです。〈業界最前線プレイヤーが集まったバンド〉として聴いたら、たぶん〈なんじゃこりゃ〉って思われるんですよ(笑)。それもいいかなって、最近は思ってますね」
自作プリズマイザーの“noise”、ミスも愛す完全一発録り“色眼鏡”
――ただ、トレンドには敏感でいたいというニュアンスは感じました。同時代性は、やっぱり意識していますか?
「そうですね。2021年に出すことの意味は考えてます。ねらったわけじゃないんですけど、歌詞も含めてリアルな音楽だなって思いますし、音選びにもいまの自分たちがハマってる音が自然と入ってますし。ほんとに無理なくやってるんですよ。邪念があんまりない感じというか」
――では、デジタル・クワイアっぽいヴォーカル・エフェクトが使われた“noise”も、自然とああなったんですか?
「そうですね。あれはプリズマイザー※っぽいんですけど、俺はプリズマイザーを持ってなくて、デモのときはLogicで無理やりヴォーカルのデータを分けて貼って作ったんです(笑)。
制作当時はSNSが大荒れで、ヘイト地獄で。あの曲に関しては、そこから来た〈noise〉が大きいですね。その歌詞が、プリズマイザーっぽいデジタルな感じに合うなって思ったんです」
――“色眼鏡”は異彩を放ってますね。怒気を感じますが、どうやって出来たんですか?
「この曲の怒気って、ギターの(サトウ)カツシロのラップによるものな気がしてて(笑)。俺は〈提示〉タイプだから〈色眼鏡を壊したらハッピーだぜ〉くらいのニュアンスなんだけど、カツシロはマイクを持つとちょっと大きくなるところがあって、物申す〈提案〉タイプなんですよ(笑)。それがよくって、すごく好きなんです。
去年お金がなくなりすぎて、仲間がやってる中古楽器屋さんでバイトを始めたんですね。そこに、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)のフリーが使ってるミュージックマン・スティングレイっていう、俺が人生で初めて弾いてたベースが入ってきて。俺のは数年前に売っちゃったから、バイト先の人に〈お金が入ったら代金を払うから、持って帰って弾いてもいいですか?〉って訊いて譲ってもらって、ひさしぶりにスティングレイを弾くタイミングがあったんです。あのベース、ほんとにレッチリみたいなバッキバキの音が鳴るんですよ」
――まさにそういう音だね(笑)。
「それでうれしくなっちゃって、いろんなしがらみは全部置いといて、〈令和のレッチリみたいなグルーヴ作ろうよ!〉っていうノリで、〈せーの〉で完全一発録りをしました。
バンド陣の演奏は、一個も直してないんです。なんなら俺はBメロでミスってるんですけど、それもそのまま残してて。たとえば、昔のソウルの音源を聴くと〈これ、ミスってね?〉って部分があるんですけど、あれ、めちゃくちゃ愛せますよね。いまの時代、レコーディングしたものを直すなんて当たり前だから、そうじゃないものをやろうという思いもあって、一発録りの直しなしでいこうと」

〈ちがう〉ことがスタート、そこからどうするか
――“赤裸々”は、BREIMENならではのソウル、リズム&ブルースだと感じました。
「あの曲は俺の周りのことを歌ってるんですけど、でもけっこう普遍的なことだと思ってて。六畳半の部屋から世界平和を願ってる、みたいな感じの曲ですね。結局、六畳半の部屋でもいざこざって起こっちゃうわけで、それより広い場所で起こるいざこざにも、本質的には通じるものがあると思います。日常生活でも、〈なんでこの人はこれができないんだろう?〉とか、俺にもそう思うことってありますし」
――他人と何かを一緒に作っていたら、そういうことって絶対ありますもんね。
「〈ちがう〉ってことがスタートだから、そこからどうしていくか、なんですよね。俺のコミュニティーに、どうしてもそりが合わない2人がいて、何回も喧嘩になってたんです。その2人とウチに住んでるメンバーと、なぜか俺のお母さんとで、朝の6時ぐらいまで〈言いたいことがあったら言おうよ〉とみんなでオープンに語り合ったことがあって。“赤裸々”は、それから一週間以内に出来た曲なんです」
――なるほどね。
「普通、そりが合わない人がいたら、離れていけばいいだけなんです。でも、俺のコミュニティーは、なんか学校みたいなんですよね。帰りの会で〈誰々くんと誰々くんが喧嘩しました〉って話す、みたいな(笑)。
結局、その問題はいまだに解決してないんですけど、この歳になって腹を割って話したことにすごく意味を感じて。当人どうしも〈ちがうんだな〉ってことが、お互いにわかったんです。そこから相手のことを愛せることもありますし」
――他人を排除するのは簡単だけど、排除したら先がない。その先の付き合い方を、ひとつ失うってことですからね。いま自分たちの社会が直面してる問題と通じることだと思います。
「本当にそうですね。それが、世界平和のいちばんミクロなとこなのかなって。
実は俺の実家って、いつの時代も見知らぬ他人が一人は住んでる家なんです」
――へー!
「俺が小学生だった頃は、若手のノイズ・ミュージシャンのお兄さんが住んでました。おばあちゃんの時代からそうで、職を失った外国人家族を住まわせたりしてたらしいんですね。だから、俺も行くとこを失ったやつをウチに呼んじゃう。俺が基本的に〈とりあえず誰でも受け入れるよ〉という姿勢なのは、それを受け継いでるからなんですよね。
BREIMENの音楽に関して言えば、たとえば〈『ズンダンズクダン』の8ビートをやりたい〉という話になったら、〈俺らはそういうバンドじゃねえだろ〉とは言わないんです。〈俺らが8ビートをやるなら、どういうのがおもしろいかな〉って考えるんですね」
――すごくナチュラルなヒューマニズムですね。〈2020年はいい年だった〉と言うのは気まずい風潮もあるなかで、2020年を通して祥太くんが受けたポジティヴな影響を作品に反映させてるのは、音楽家として、バンドマンとして、すごく素敵なことだと思います。
「そもそも俺、音楽で他人を変えたいとか、そういう考えはないんです。でも、俺がこのアルバムを通して提示した友だちとのちっちゃな遊びは、たぶん誰でもできるものだと思います。それは、〈こういうことに気づけて、俺らはなんとかやれてます〉って提示してるだけなんですけど」
このアルバムを人生において作れてよかった
――音楽を楽しむ在り方、音楽と生きている在り方を提示しているということですよね。このアルバムを作ったことで、祥太くんのなかで、BREIMENでやりたいことのアイデアがまた生まれているのかなと思うのですが。
「実は、“Play time isn‘t over”が、自分の作った曲史上かなりすごい曲で……」
――うん。すごく大きな曲だと思う。
「その壁があって、まだ作れてないんですよ。
俺の主観では、このアルバムを人生において作れてよかったなって思えてるんです。たとえこのアルバムが数枚しか売れなかったとしても悔いがないぐらい、すごく納得のいくものが出来た。こんなに納得のいくものって、なかなか人生で作れないと思ってて。これ以上ないものを作れたから〈次、どうしようかな〉と、ありえないくらいにプレッシャーを感じてて、まだノー・アイデアなんです」
――記念碑的なものが出来たってことですよね。だからこそ今後のBREIMENが、ますます楽しみになったのも事実です。
「たぶん、もうちょっとしたら、また新しいものが出てくると思います。アルバムのミックスをしてる最中にTempalayのリハがあって、綾斗と〈やっぱウンコ出すまでは、メシ食っても次のは出ねえよな〉って話をして(笑)。だから、やっと出せます。これから次のウンコが、また出来るんだと思います」

RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年5月12日(水)
品番:PECF-3257
価格:2,750円(税込)
配信リンク:https://ssm.lnk.to/Ptio_AL
TRACKLIST
1. aaA
2. utage
3. ナイトクルージング
4. 赤裸々
5. Play time isn’t over
6. 色眼鏡
7. ツモリツモルラバー
8. Noise
9. Zzz
LIVE INFORMATION
「PLAY TIME」
〜“Play time isn’t over” RELEASE ONEMAN〜
2021年6月3日(木)東京・渋谷 CLUB QUATTRO ※SOLD OUT
開場/開演:18:30/19:00
2021年6月24日(水)大阪・梅田 シャングリラ
開場/開演:17:30/18:30
一般発売:2021年5月20日(木)10:00
https://brei.men/
INFORMATION
赤裸々SESSIOONe
2021年5月13日(木)小笹大輔(Official髭男dism Gt.)× サトウカツシロ(BREIMEN Gt.)
2021年5月16日(日)MELRAW × ジョージ林(BREIMEN Sax.)
2021年5月19日(水)Kan Sano × kanno so(BREIMEN Drs.)
2021年5月22日(土)Mega Shinnosuke × いけだゆうた(BREIMEN Key.)
2021年5月25日(火)小原綾斗(Tempalay Gt. & Vo.)× 高木祥太(BREIMEN Ba. & Vo.)
BREIMEN YouTubeチャンネルにて各日程21時に公開
https://www.youtube.com/channel/UCcUJKt_BprjOvaAudfGBlLw
PROFILE: BREIMEN
高木祥太を中心に2014年に結成され、ソウルやファンクをベースに多様なジャンルにも躊躇なく飲み込んでいくミクスチャー・ファンク・バンド。メンバー・チェンジを経て2018年7月より現体制の5人組となった。メンバー各々が数多くのアーティストのサポートを務めており、独特な歌詞の世界観と、セッションを軸としたセンスのギャップで熱烈なファンを獲得している。2020年2月にリリースされたファースト・アルバム『TITY』は、多くの著名人や業界最前線のプレイヤーからの熱い支持を得ると同時に、収録曲が数多くのストリーミング・サービスの主要プレイリストに入り、J-WAVEの〈SONAR TRAX〉やTuneCoreの〈independent AF〉に選出されるなど、いま聴くべきネクスト・ブレイク・アーティストとして注目を浴びている。

