独自のファンク道を提示する5人組がメジャー・デビュー! さらにダンサブルに、さらにスウェッティに……音の隙間から人間臭さがダダ漏れする新作が爆誕です!!

踊れるやつを作りたいな

 〈オルタナティブファンク〉を掲げ、卓越した演奏力でジャンルを自在に横断する5人組、BREIMENがメジャーからのファースト・アルバム『AVEANTIN』を完成させた。高木祥太(ベース、ヴォーカル)、サトウカツシロ(ギター)、いけだゆうた(キーボード)、So Kanno(ドラムス)、ジョージ林(サックス)という現編成となり、〈無礼メン〉から改名してデビュー作『TITY』を2020年に発表。生演奏とDTMを組み合わせてより進化を見せた2021年リリースの2作目『Play time isn’t over』を経て、〈5人の音のみで構成〉〈クリックやソフトウェアは使わない〉といったある種の制約をみずからに課すことで逆に創造性を爆発させた2022年のサード・アルバム『FICTION』が大きな賞賛を集めた。

BREIMEN 『AVEANTIN』 ARIOLA JAPAN(2024)

 「今回は裏テーマ的な感じで〈ダンス・アルバムにしたい〉っていうのがありました。1枚目から徐々に曲が複雑になって、『FICTION』ではプログレまで行ったので、単純にそこの反動があって、一回ちゃんと踊れるやつを作りたいなって。第2章の幕開けを意識したし、俺的には『TITY』のアップデート版みたいなイメージもありましたね。〈オルタナティブファンク〉という言葉に関しては、ジャンルの棚分けのためというより、こっちのスタンスを提示する何かが必要だと考えたとき、オルタナティヴという言葉の元来の意味、〈新たな道〉みたいな意味合いがいちばんしっくりきたんです。ロックが社会に対して反抗するのであれば、俺的にはその社会の中で新たな道、新たなセーフ・スペースみたいなものを自分らで作りたい感じがずっとある」(高木)。

 「我々にとっての〈ファンク〉はセッションとかで身についてるものであって、それ風なことを自分なりにやってみるというよりは、本当にもう染み付いちゃってる。だから〈よし、ファンクをやろう〉というのではなくて、俺らとしては普通にやってても、そこにファンクが入っちゃうんです。個人的には都会的なものとか洗練されたものより、汗が見えるファンクが好きだな」(いけだ)。

 「俺はファンクのなかでもジャズ・ファンクが結局いちばん好きで。ハービー・ハンコックのファンク期みたいな、結構ムズイことをみんな汗ダラダラでやる、あの感じが好きなんですよね」(高木)。

 〈ダンス・アルバム〉としての『AVEANTIN』を象徴するのが、オーケストラル・ヒットが90年代感を演出し、〈平成いじり〉をしたというファンキーなナンバー“乱痴気”。また、ODD Foot WorksのPecoriが参加した“T・P・P”や、テクノ風の“魔法がとけるまで”あたりも、〈ダンス〉のイメージを強調している。

 「SMAPとかを聴いて、“乱痴気”の平成感は何となく共有できていたなかで、途中のビートが変わるセクションでは丸々プリンスの曲から引用しました。SMAPは当時Smappiesと一緒にやったり、洋楽の影響を受けていたわけだし、ただ〈平成っぽい曲をやろう〉ではなく、ちゃんとそのルーツのほうまで行く。それを勝手に自分の中でやってたかもしれない。“T・P・P”や“魔法がとけるまで”のビートは、一昨年の誕生日プレゼントにKing Gnuの勢喜遊からもらったドラムマシーンで作りました」(Kanno)。

 アルバムからのリード曲は2曲目に収録の“ブレイクスルー”。岡村靖幸にも通じるポップス感がこの国のファンクの系譜を意識させつつ、やはりコンポジションやアレンジからは一筋縄では行かないBREIMENらしさを感じさせる。

 「俺は〈この曲、言うほどキャッチーか?〉っていう気がしてて、相当変な曲だと思うんです。でも確かにキャッチー風にも見せられる曲だなって」(サトウ)。

 「疾走感はあるんだけど、世で言う疾走感とは全然違う。よくわからないスパイスのカレーを食ってるような〈理由はわからないけど辛くて美味い〉みたいな曲(笑)」(いけだ)。

 「〈爆誕感〉のあるテンポを意識しつつ、でもダンス・アルバムだから、このテンポ感でもちゃんと踊れることを意識してトラックは作りました。鍵盤を入れるときに、一回ドラムをミュートして、倍のテンポのトラップ・ビートを仮で乗せ、それに合わせて、いけだが弾いたんです。そのビートを消して元のドラムに戻したら、めちゃくちゃ良かった」(高木)。