武道館という一山を超えたyonigeが次に目指す理想郷

2017年にアルバム『girls like girls』でメジャー・デビュー。そこから2年足らずで武道館ワンマンを成し遂げ、その人気を不動のものにした、牛丸ありさ(ボーカル&ギター)、ごっきん(ベース&コーラス)からなるyonige。彼女たちが5月20日にセカンド・フルアルバム『健全な社会』をリリースする(なお、武道館公演の模様を収めたライブDVD『日本武道館「一本」』も同時リリースされる)。

yonige 健全な社会 unBORDE(2020)

いま乗りに乗る彼女たちだが、今作に収録された10曲のサウンドと牛丸の歌声は、彼女たちの名を一躍有名にした“アボカド”や“さよならアイデンティティー”とは一線を画すもの。例えるならば、まるでポツンと街灯がひとつ灯るだけの寝静まった街を一人で歩くような雰囲気だ。

映画「おいしい家族」の主題歌で先行配信された“みたいなこと”では、余計な装飾を廃したシンプルなロック・サウンドに乗せて〈あんなに大事にしていた 気持ちはガラクタになったけど〉と、昔とは違う感情の〈愛〉を歌う。福岡晃子(チャットモンチー済)がプロデュースしたことでも話題になった“往生際”では〈酷いことは起きない 日々はただ 過ぎていくだけで〉と、平凡な日々の中で何かを失ったことにすら気付かない様子を綴っている。そのトーンは、他の収録曲にも一貫したものがある。

〈健全〉とは、悪いところや異常がなく、健やかで正常な様子のこと。そういう意味で言えば、異常だらけの現代社会は〈不健全な社会〉だろう。それに社会の異常さだけでなく、一過性の幸福や楽しいことも不健全なものかもしれない。

つまり、彼女たちの言う〈健全な社会〉とは〈ユートピア〉のようなもの。今作には、yonigeが考える〈社会がこうあってほしい〉という理想が詰まっているような気がしてならない。社会は常に不健全だし、家族がいても恋人がいても幸福なのは一瞬だけで、日々は淡々と過ぎていく。まるで寝静まった街のように。

結局人間とは孤独なのだ。だからこそ寄り添ってくれる音楽が必要で、そういう音楽こそ、武道館という一山を超えたyonigeが次に目指す理想郷なのかもしれない。

 

yonigeの2人から『健全な社会』についてコメントが到着!