今年でデビュー30年を迎え、4月にはそれを記念した3形態のアルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリースしたスチャダラパー。4×4=16、OK?NO‼で活動し、お笑い業界にも造詣が深いカンノアキオが、この愉快な3人組を〈お笑い〉との関係から読み解きます。 *Mikiki編集部

スチャダラパー 『シン・スチャダラ大作戦』 ZENRYO/SPACE SHOWER(2020)
〈お笑い〉という観点で聴くスチャダラパー
古典落語をビートに乗せてラップにしてみたり、歌詞を台本と見立てて演技っぽいラップをしたりと、ストレートにヒップホップをやっているというよりは、別ジャンルを音楽の中に入れ込んでいるような音楽をやっている僕が、多大に影響を受けているアーティストがスチャダラパーです。Mikikiを読んでいる皆様なら、“今夜はブギー・バック”、“GET UP AND DANCE”、“サマージャム'95”といったヒット曲は聴いたことがあるでしょう。または、「ポンキッキーズ」に出演されていたBOSEさんのイメージも強いかと思います。一般的にはそんな印象の彼らですが、個人的には〈音楽にお笑い文脈を入れ込みまくった人たち〉という印象が強いのです。
そもそもこの〈スチャダラパー〉というグループ名が、シティボーイズやいとうせいこう、中村ゆうじ、竹中直人などを擁したコントユニット、ラジカル・ガジベリビンバ・システムの86年の公演名「スチャダラ」が由来とされています。そしてラジカルのメンバーであるいとうせいこうも審査員を務めていた〈第2回DJアンダーグラウンドコンテスト〉において、ドラマ「太陽にほえろ!」のテーマソングにラップを乗せた“スチャダラパーのテーマPT.1”で特別賞を受賞し、デビューを果たしました。
〈スチャダラパーとお笑い〉を語るなら、93年リリースのアルバム『WILD FANCY ALLIANCE』収録の“後者 -THE LATTER-”、“ついてる男”の2曲を挙げないわけにはいかないでしょう。この2曲は、楽曲の中にお笑いでいうところの〈フリとボケ〉の構造を忍ばせています。
まず“後者 -THE LATTER-”のリリックを見てみましょう。BOSEのリリックを(B)、ANIのリリックを(A)と表記します。
(B)やるべき事はやる自由人
(A)ただただ何もしないヒマ人
(B)バカがつくほどの正直者
(A)バカであってなおお調子者
(B)完全主義で超努力家
(A)いきあたりばったりでモロ楽天家
(B)情報に流される人
(A)妄想に身をまかせる人
(“後者 -THE LATTER-”より)
この8小節を見ての通り、この曲はまずBOSEのフリとなるリリックがあって、直後にANIの脳天気なキャラクターがボケるリリックが来る構造となっています。これはそのまんま、テンポの良い漫才という見立てをすることが出来るでしょう。2小節でフリボケを完結させていますから(しかも後半は1小節でフリボケをしている!)、そのボケ数も相当なもの。数えてみたら26箇所のフリボケで構成されていました。2分16秒の曲なので、5.2秒に1回のペースでボケていることとなります。下手すりゃM−1に出場する漫才師よりもボケているかも。ちなみに僕が好きな歌詞は〈根がいい奴/目がいい奴〉です。
次に“ついてる男”のリリックを見てみましょう。上の部分が1番のBOSEのバース、下の部分が2番のANIのバースを抜粋したものです。それぞれ(B)と(A)で表記します。
(B)これってやっぱ今日のデート成功の暗示?
こころなしか 足どりも かるーい感じで
グニャ ツーン ハニャ ミミーン
ソールにねっちょり あーシット
おいおい やめてくれよ ブルー入るよ
はぁ しかたない 駅へ急ごう
時計見てビックリ 急行ギリギリ
ダッシュかいなく ドアはしまり
ガックシ トホホ こちゃまず遅刻
どー転んでも 間に合わぬ時刻
(A)これってやっぱ今日のデート成功のあんじ?
こころなしか 足どりも かるーい かんじで
グニャ ツーン ハニャ いいーっ
ソールにねっちょりウンのツキ
やば目だわ こりゃ超 好ウンだ
よっしゃー駅までそれダッシュだ
時計見て ビックリ 急行 ギリギリ
ダッシュ及ばず ドアはピシャリ
カラダ なまってたんで いい運動した
おくれたがデッカイものを得た
(“ついてる男”より)
曲中のBOSEとANIの身に起こる出来事は全く同じなのですが、それをネガティヴに捉える(ついてない)か、ポジティヴに捉える(ついてる)かで内容がガラっと変わるのです。起こる出来事は〈100円拾う→ウ◯チを踏む→電車に乗り遅れて遅刻する→彼女にフラれる→蹴った空き缶がヤ◯ザの頭に当たってボコボコにされる→帰ったら家が火事〉と、不運なことばかり。なのでネガティヴに捉えるBOSEのリリックが自然なのでフリなわけで、後半のポジティヴなANIのリリックはどうかしているのでボケとなります。
“後者 -THE LATTER-”が小刻みにテンポの良いフリボケのネタだと考えると、“ついてる男”は前半でたっぷりとフリを作り後半で怒涛にボケて、そのフリを回収していくネタなわけです。
ナイツの漫才に「寿限無」というものがあります。ボケの塙宣之による自己満足的なつまらない野球話が続き、土屋伸之が〈落語でも聞いてオチとか勉強しなよ〉と言うと、塙が〈「寿限無」は好きですよ〉と言い、それまで話していた野球話を全て「寿限無」の中に入れ込んで回収していくという漫才です。〈10ゲーム 10ゲーム(寿限無、寿限無) 後藤の振り逃げ(五劫の擦り切れ)〉という具合に。M−1の漫才のような早いテンポ感で聴かせる“後者 -THE LATTER-”と、たっぷりと伏線を張って回収していく“ついてる男”はスチャダラパーの楽曲の中でもかなりお笑い構造に沿った曲と言えると思います。
近年の特徴
近年のスチャダラパー楽曲のお笑いに関する特徴は、リリックに細かくギャグを詰め込むところでしょうか。例えば2015年発売のアルバム『1212』収録の“ゲームボーイズ2”には〈ハードゲイじゃなくともセイセイ!〉(ちなみに歌詞表記はないですが、このあと〈フォー!〉とシャウトします)、〈プリクラあるある 早く言いたい 引っ越しする時出てきがち〉とレイザーラモンHG、RGそれぞれのギャグが登場します。
また“Boo-Wee Dance”は、BOSE、ANIそれぞれのバースの歌い出しに〈接しやすい〉と出てきます。これはロバートが〈キングオブコント(2011年)〉で優勝したときのネタの引用です。そしてバース終わりには、ご存じ千鳥・ノブのツッコミフレーズ「クセがすごい」が。ちなみにノブはTwitterで、この曲で漫才フレーズが引用されていると教えるリプライに対して〈必聴だ!!〉と引用RTしていますが、まさか中身が風営法を皮肉っている曲だとは思っていない気がします。
必聴だ!!RT @tomoya829: @NOBCHIDORI
— 千鳥ノブ (@NOBCHIDORI) February 3, 2015
ノブさんノブさん!
スチャダラパーさんが新しく出したアルバム
「1212」の「Boo-Wee Dance」って曲で
千鳥のさっちゃんのネタをラップしてて
クセがすごいです!特にアニくんが!
知ってました?
そして最新作『シン・スチャダラ大作戦』(2020年)では、収録曲“マイレギュレーション”で〈まるでHGの腰のグラインド〉と、またしてもレイザーラモンHGが出てきます。
また近年になると、そのギャグの入れ込み方もどんどん分かりにくくしている傾向があるように思えます。例えば“その日その時”。この曲は、東日本大震災の経験を通して備えをちゃんとしているかを問う曲です。それぞれのバースで〈どうなのよ 備え〉と聞いて、あんまりちゃんと備えていないことに対しての返答が、〈過去形〉や〈2割減〉となっています。これはまだ明言はされていませんが、元ネタはおそらく霜降り明星・粗品の体言止めツッコミでしょう。もしレコ発イベントでこの曲をやっていたら、きっと手を前に出す粗品独特のポーズで歌っていたはずでしょう。
また、今年発売されたBIMのアルバム『NOT BUSY』収録曲“Be feat. Bose”でも、客演にも関わらずBOSEは一見分かりにくいお笑いギミックを入れ込んでいます。リリックの中の〈『でもなぁ』なんつってブラマヨ吉田〉という一節。これはブラックマヨネーズの漫才の頭で、吉田が悩みを話し、それに対し小杉が〈◯◯したらええやんけぇ〉と解決策を出しますが、それに対して吉田が屁理屈を持って反論する部分があります。この反論のきっかけ台詞が〈でもなぁ〉です。ブラックマヨネーズの漫才台詞からの引用ということが、BIMファンに伝わるとは思わないでBOSEもこのリリックを書いたと思いますが、これも30年選手の為せる技。僕はニヤニヤしながら聴いていました。
こんな感じで、お笑いの構造を楽曲に取り入れたり、〈誰が分かるんだよ!〉という元ネタをこれでもかと散りばめられた曲・作品が多かったり、そういうところこそ、僕は〈好きです、スチャダラパー〉。
カンノアキオ
4×4=16(シシジュウロク)として2017年、EggsレーベルよりEP『Short Show』をリリース。以降はカンノのソロ・プロジェクトとして、ヒップホップを古典落語や会話表現とミックスさせた作品などを発表している。また、〈遅れてきた渋谷系〉と称し2020年に再結成した宅録ユニット・OK?NO‼(オーケーノー)では作詞を担当。