より濃度の高いファンクに挑んだ『NARALIEN』

そして『LOVE FADERS』の前作にあたるのが、2019年8月にリリースされた『NARALIEN』。

『HYBRID FUNK』にしてもそうだったが、1曲目に非常にイメージ豊かで抽象的なイントロを配しているあたりに、〈アルバム〉というフォーマットへの愛やこだわりを感じる。

〈奈良〉と〈エイリアン〉の合成語をタイトルにしたと思われる表題曲“NARALIEN”では、ディアンジェロの『Black Messiah』(2014年)からの影響が顕著で、ドラムの響きや地を這うようなベースの音に表れている。さらにファンカデリックとパーラメントのエッセンスも感じられ、自由に弾きまくるギターや派手なシンセの音が神秘的で宇宙的なサウンドを生み出す。

2019年作『NARALIEN』収録曲“NARALIEN”

〈Soul Power〉を〈宗 流 Power〉と言い換えた堂本らしい言葉遊びが独特な“宗 流 Power”は、遅いビートによってヘヴィーにうねるファンク・グルーヴを生んでいる。コーラスとホーン・セクションの抜き差しによって、最小限の音をパワーに変えているかのようだ。

2019年作『NARALIEN』収録曲“宗 流 Power”

一方で現在のヒップホップを意識したかのような“Pani9 Disorder Man”や、R&B+トリップ・ホップな“水 面 音”には、音楽的な挑戦が込められている。

『HYBRID FUNK』は〈ハイブリッド〉感が強かったが、『NARALIEN』は総じて音数を抑え、ファンクの濃度や純度が高い。より濃く、よりタイトに、よりヘヴィーに、よりストイックに〈ENDRECHERIのファンク〉を追求しているように感じるのだ。〈奈良〉をタイトルに入れていることにも、ルーツ志向が表れていると思った。

 

繋がり合い、団結するためのENDRECHERIの〈HYBRID FUNK〉

それにしても、〈HYBRID FUNK〉とはENDRECHERIの音楽性をそのまま表している見事な言葉だと思う。つまり、混血のファンク。プリンス、Pファンク、ディアンジェロ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ジェイムズ・ブラウン……。ENDRECHERIというプロジェクトでは、堂本が愛する音楽の数々が〈ファンク〉の名のもとに詰め込まれ、縦横無尽に結びつけられ、まさに〈ファンク絵巻〉〈ファンク曼荼羅〉と呼びたい音楽が生み出されている。

しかしそれが単なるオマージュや過去の音楽の焼き直しにまったくなっていないのは、堂本のヴォーカリストとしての個性や作曲家としてのメロディーセンス、あるいは神秘主義志向などが、あまりにも強烈だからだろう。それによって堂本剛=ENDRECHERIは、ミュージシャン/アーティストとして他ならない個性を勝ち得ている。

ファンカデリックの『One Nation Under A Groove』(78年)という名盤がある。〈ひとつのグルーヴで繋がれたひとつの国〉と訳せるそのアルバム・タイトルは、ファンクという音楽の本質を表しているように思えてならない。つまり、多種多様の異なるものやこと、人々が繋がり合い、団結するための音楽、ということ。〈愛〉という言葉を繰り返し強調するENDRECHERIの〈混血のファンク〉にも、そんな志向と思想を感じるのだ。

ENDRECHERIについては、堂本のヴォーカリゼーションや参加ミュージシャンたち、歌詞の面など、まだまだ語るべきポイントがある。それらは、また別の機会に触れることにしたい。それまでは今回配信が始まった3作や『LOVE FADERS』を聴いて、ENDRECHERIのファンク沼にどっぷりと浸かることにしよう。

『LOVE FADERS』では、どんな〈ENDRECHERIのファンク〉が展開されているのだろう? 早く手に入れて、確かめたいところだ。