インタビュー

【TOWER PLUSアーカイブ】ゲスの極み乙女。『両成敗』〈この気持ちは何なんだろう?〉っていう、泣きながら踊ってるようなイメージのアルバム

【TOWER PLUSアーカイブ】ゲスの極み乙女。『両成敗』〈この気持ちは何なんだろう?〉っていう、泣きながら踊ってるようなイメージのアルバム

〈TOWER PLUSアーカイブ〉は、これまでMikikiに転載されていなかった過去のTOWER PLUS+(tower+)の記事を転載するシリーズです。情報は掲載当時のものです。オリジナル記事:tower+ 2016年1月号

日本レコード大賞の優秀作品賞受賞、さらには紅白歌合戦にも初出場と、昨年末の話題を独り占めにしたゲスの極み乙女。。待望のセカンド・アルバム『両成敗』は、耳に残るメロディーと言葉の反復によって、いつの間にか聴き手の心に居座ってしまうような、中毒性の高い作品だ。メンバーも納得の〈真のデビュー作〉、ぜひご堪能あれ。

ゲスの極み乙女。 『両成敗』 unBORDE(2016)

〈この気持ちは何なんだろう?〉っていう、泣きながら踊ってるようなイメージのアルバムになったと思います

ゲスの極み乙女。の結成は2012年。インディーズでリリースした2枚のミニ・アルバムが話題となり、2014年4月にメジャー・デビューを果たすと、楽曲は数々のタイアップに起用され、バラエティ番組にも出演するなど、紅白出場に至るまで順風満帆だったようにも見える。しかし、実際には2015年にバンドは軌道修正を余儀なくされていた。

「2014年に出した1stアルバムの『魅力がすごいよ』に対して、僕は結構反省が大きくて、ここでリリースを空けちゃうと、忘れられちゃうんじゃないかって不安があったんです。なので、2015年の1月に急遽“私以外私じゃないの”をレコーディングして、4月に出したことによって、風向きが変わってきました。その後の2枚のシングル(『ロマンスがありあまる』、『オトナチック/無垢な季節』)も含め、2015年は配信がすごく伸びて、僕らを初めて知ったっていう人がすごく多かったと思うんですね。なので、そこを入口にして、アルバムでゲスの極み乙女。のいろんな部分とか深さを知ってもらいたいと思いました。ライブの盛り上がりとかは完全に無視して、ただ僕らが作りたいものを作ったんですけど、キャッチコピー的な、覚えてもらえる言葉っていうのは一年かけて自分たちの色になったと思うので、それはちゃんとやろうと思ってましたね」(川谷絵音/ヴォーカル、ギター)

アルバムはリード曲の“両成敗でいいじゃない”から始まり、生演奏が途中から打ち込みに変化する“続けざまの両成敗”へ。他にも、ダンサブルな“シリアルシンガー”から、ユニークな歌詞が魅力の“勤めるリアル”、イントロダクション的な“無垢”からの“無垢な季節”と、意図的に言葉を反復することによって、楽曲のキャッチーさを増幅させている。また、メンバーは本作について「泣きながら踊るようなイメージ」だと言う。

「踊れる曲がたくさん入っていて、人力ダンスミュージックのアルバムになったとも思うんですけど、どこかせつない、悲しい、泣きながら踊ってるようなイメージで」(川谷)

「〈泣ける〉っていうのも、ただせつないとか悲しいだけじゃなくて、いろんな感情がこみ上げてくる感じ」(ほな・いこか/ドラムス)

「そうそう、一個とは言えないよね。〈この気持ちは何なんだろう?〉っていう、いろんなものが入ってるアルバムになったと思います」(川谷)

「もともと私は底抜けに明るい音楽とかってそんなに聴いてなくて、むしろ愁いを帯びたものの方が親しみがあったんですけど、それをダンスミュージックに落とし込むのって、もしかしたらすごく日本的なのかなって。言葉にできない微妙な感情とか、中間色の感じって、日本っぽいなと思って、後付けなんですけど、『両成敗』っていうタイトルとも合ってると思います」(ちゃんMARI/キーボード)

『両成敗』というタイトルは、『魅力がすごいよ』をリリースした直後に川谷が思いついたアイデアをそのまま採用したものだという。しかし、2015年の日本や世界の情勢を振り返ってみると、白黒はっきりつけようという動きが目立ち、それによって混乱が生じていたように思う。“私以外私じゃないの”を大臣がマイナンバーのPRとして歌うなど、川谷の歌詞は言霊が宿っているかのように、結果的にとても示唆的なものとなり、今回の『両成敗』というタイトルも、社会の映し鏡であるだけでなく、今の音楽シーンの現状に重要なメッセージを投げかけているようにも受け取れる。

「基本的に売れてるものって、底抜けに明るいものか、底抜けに暗いもののどっちかじゃないですか? でも、俺らはそのどっちでもない曲の方が多いから、そういう曲がスタンダードになったら、何か変わるんじゃないかなって」(川谷)

「個人的に、川谷絵音の一番の魅力がそこだと思っていて、単調じゃない、いろんなものを含んだ表現をする人なので、こういう人と一緒にバンドをやれてよかったです。今回はアートとしての作品ができたと思っていて、テンプレートにハマった曲がずらっとカタログ的に集まってるんじゃなく、芸術としての音楽作品ができたと思います」(休日課長/ベース)

ミュージシャンシップの高さを維持しながらも、バンドという概念を拡張していくかのようなゲスの極み乙女。。3月には初の日本武道館公演がいきなりの2Daysで決定と、今後さらに活躍の場を広げることは間違いないだろう。

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