〈TOWER PLUSアーカイブ〉は、これまでMikikiに転載されていなかった過去のTOWER PLUS+(tower+)の記事を転載するシリーズです。情報は掲載当時のものです。オリジナル記事:tower+ 2015年1月号

 

2年半前のメジャー・ファースト・アルバム『ENTERTAINMENT』のリリース以降、日本中に〈セカオワ現象〉を巻き起こしてきたSEKAI NO OWARIが遂にその決定版にして集大成となるセカンド・アルバム『Tree』をリリース! 音楽シーンの景色を塗り替えてきた4人が到達した〈絶対強度のファンタジー〉は、まさに歴史的な作品となった。

SEKAI NO OWARIにしか生み出すことのできない〈絶対的な強度の圧倒的ファンタジー〉が遂に完成!

2015年1月14日。まるで新しい時代の到来を高らかに告げるように新年早々にリリースされたSEKAI NO OWARIの『Tree』。前作『ENTERTAINMENT』から、実に2年半ぶりのアルバム。それにしても、その1枚目と2枚目の間にSEKAI NO OWARIの4人が成し遂げてきたことをちょっと振り返るだけで、そのあまりのスケールの大きさとスピード感に気が遠くなってしまう。

SEKAI NO OWARI 『Tree』 トイズファクトリー(2015)

メジャーからアルバムがリリースされる前の2011年の時点で武道館でのワンマンを成功させるという快挙を成し遂げていたSEKAI NO OWARIは、2013年に入ると初の東名阪アリーナツアーを敢行。勇ましいマーチング・リズムとハンドクラップにのせてポジティブなメッセージを歌い上げ、本作『Tree』に連なる新しいSEKAI NO OWARIの世界の幕開けとなった“RPG”がリリースされたのがその年の5月。秋には、彼らにとってもファンにとっても特別な意味を持つことになる単独野外フェス〈炎と森のカーニバル〉を主催、3日間で6万人を動員する。そして、4人の前人未到のサクセスストーリーは2014年に入ってからさらに加速していった。

2014年1月にリリースされた“スノーマジックファンタジー”はSEKAI NO OWARIにとって初のチャート1位を記録。春には全国で20万人を動員するアリーナツアー〈炎と森のカーニバル-スターランド編- 〉、夏には初の映画「TOKYO FANTASY」を公開、秋には前年同様に単独野外フェス〈TOKYO FANTASY〉を開催。大型ロックフェスの大トリを務める一方で、テレビのCMや音楽番組やバラエティ番組にも積極的に出演。また、世界最大のイベントプロモーターLIVE NATIONと提携したり、エレクトロ界の超人気アーティストアウル・シティー(OWL CITY)やEDM界のトッププロデューサー、ニッキー・ロメロ(NICKY ROMERO)とコラボレーションを果たしたりと、本格的な世界進出への足固めも着々と進めてきた。そんな、あらゆる意味で過去の日本のバンドの常識にまったくとらわれない大胆で予測不可能な活動を展開してきた4人は、時に音楽シーン全体に大きな波紋を投げかけながら、〈セカオワ現象〉とでも呼ぶべき状況を巻き起こしてきた。

本作『Tree』は、そんな〈セカオワ現象〉の真っ只中に投下された〈歴史的〉な1枚だ。歴史的というのは大げさに言っているわけではなく、事実として、少なくともこの10年間、日本の音楽シーンにおいてここまでヒートアップした状況を生み出したバンドは存在しなかったし、また、その状況にここまでジャストなタイミングで決定版的なアルバムがリリースされることもなかった。2年半振りのアルバムということで、ここには必然的にその期間にリリースされたシングル曲がすべて収められている。また、音源化が熱望されていたものの、既にテレビや映画で耳にしたことのある楽曲も収録されている。そういう意味では、もしかしたら熱心なファンにとっては、最初に聴いた時の衝撃や新鮮さには欠けるかもしれない。

しかし、これはまさに自分自身が体験したことなのだが、アルバムの最初から最後まで繰り返して聴いているうちに、ここで初めて聴くことになる楽曲はもちろんのこと、これまで数えきれないほど聴いてきた曲からも、まったく見覚えのない新しい景色が浮き上がってくるのだ。思えば、前作『ENTERTAINMENT』もそういう作品だったが、SEKAI NO OWARIにとって一曲一曲はパズルのピースでしかなく、その全体像が初めて完成するのがアルバムだということを改めて思い知らされた。よく〈独自の世界観〉なんてありふれた言葉で表現されてしまう彼らの音楽だが、これはそんなものじゃない。〈唯一無二、絶対的な強度を持った圧倒的なファンタジー〉、4人はそれを本作『Tree』で見事に完成させたのだ。 

アルバムのアートワークには2013年〈炎と森のカーニバル〉や2014年〈TOKYO FANTASY〉のステージでお馴染みの、彼らの〈絶対的な強度を持った圧倒的なファンタジー〉を象徴する巨大樹があしらわれている。ここで重要なのは、そこには〈オーディエンス〉の姿、つまり〈あなた〉も一緒に収められていることだ。SEKAI NO OWARIが築き上げてきたファンタジーは、もう彼ら4人だけのものじゃない。本作『Tree』がこうして世に放たれたことによって、正式に〈あなた〉もまた、その世界の住人となったのだ。