コラム

クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)――独自の審美眼でジャンルを横断する〈コスモポリタン〉、ライヒやライリーから信頼されるその音楽

AT Tlive© Mary Cybulski.

〈クロノス・クァルテット JAPAN 2020〉来日公演中止および延期のお知らせ

2020年9~10月に開催を予定されていた〈クロノス・クァルテット JAPAN 2020〉は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止および延期になりました。クロノス・クァルテットの来日公演は、すべての観客が健康で安心して楽しめる時期に改めて開催されるとのこと。

チケットの払い戻しについてなど、詳しくはオザワ・アート・プランニング合同会社のオフィシャルサイトをご覧ください。

【クロノス・クァルテットからのメッセージ】

We were looking forward to visiting Japan this autumn and to meeting Japanese audiences again. Our concerts in Japan have been very special for us, and we have missed performing there. Unfortunately, due to the coronavirus pandemic and the difficulty of international travel, we must postpone our tour. We are very disappointed, but look forward to meet at the venue in the future. In the meantime, we send our warm greetings and best wishes for health and safety.

Kronos Quartet

 

私たちはこの秋日本を訪れ、聴衆の皆さまに再びお会いすることをとても楽しみにしておりました。日本でのコンサートは、私たちにとって特別なものでしたし、日本で演奏する機会を長い間逃しておりました。残念ながら新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大とそれによる国際間の移動の困難さによって、私たちは今回のツアーを延期せざるを得なくなりました。私たちはとても残念に思っておりますが、近い将来、会場で皆さまにお会いできることを楽しみに待っております。

それまでの間、私たちは皆さまの健康と安全を、心よりお祈り申し上げます。

クロノス・クァルテット

http://ozawa-art.com/concert/473/

 


ライヒやライリーが最も信頼を寄せるインディー・クラシックの先駆者が17年振りの来日!

 正直なところ、もはや日本には来てくれないものだと思っていた。1986年発売のアルバムに収録されたジミ・ヘンドリックス“Purple Haze”で一斉を風靡し、1989年にはスティーヴ・ライヒの“Different Trains”を録音したアルバムがグラミー賞を受賞。本来はクラシック音楽のなかでも保守的なイメージが強いはずの弦楽四重奏という編成が、前衛芸術も停滞し始めた80年代以降に古臭いものにならずに済んだのは、少しも大袈裟ではなく、彼らクロノス・クァルテットの存在なしには考えられない。昨年も、故ルー・リードの妻として知られる前衛芸術家ローリー・アンダーソンと共演したアルバムがグラミー賞を獲っており、結成から現在に至る47年間、常に現役のフロントランナーとして走り続ける驚異のグループなのだ。

 インディー・クラシックなるジャンルが話題になったのは、せいぜいこの10年ほどだが、クロノスはそれ以前の30年間以上、いわゆるクラシック音楽の王道たる古典派・ロマン派の作品には手を出さず、現代音楽のメインストリームばかりを演奏するわけでもなく、第1ヴァイオリンのデヴィッド・ハリントン独自の優れた審美眼により、真の意味でジャンルにとらわれず(それは彼らが現在進めるプロジェクト〈未来のための50曲〉で選んだ50人の音楽家を見れば明らかだろう)、様々な音楽を演奏し続けてきた。17年ぶりの来日で披露される6公演でも当然、その姿勢は徹底されている。

 5つのセットリストが組まれ、Program 1~3では、クロノスのために書かれたライヒ作品(傑作中の傑作“Different Trains”を含む!)に、フィリップ・グラスやテリー・ライリーといったミニマル勢。そしてクロノス結成のきっかけを作ったジョージ・クラムの“Black Angels”と、アメリカの巨匠作曲家の名曲を軸にしつつ、クロノスがこれまで弾いてきた1000曲以上の楽曲から組み合わされている。そのヴァラエティの豊富さは半端ではなく、エヴァリー・ブラザース、ジャニス・ジョプリン、ジョン・コルトレーン、マヘリア・ジャクソン絡みの楽曲に、エジプトのクラブ・ミュージック、カナダのインディー・ロック、南インドの民族音楽、コンゴの爆音トランス、イヌイットの喉歌……といったバックグラウンドをもつ音楽家の楽曲が取り上げられる。

 Program 4では更に変わった趣向がとられており、サム・グリーンが監督した2018年のクロノスのドキュメンタリー(日本語字幕付き)に、グリーンの朗読とクロノスの演奏によってリアルタイムで音が付けられていく。ライブ・ドキュメンタリー&パフォーマンスという前代未聞の公演形態ではあるが、クロノスへの理解を深めながら、前述したような多様な演奏レパートリーを十全に堪能できる。Program 5では、ミニマルの伝説的巨匠テリー・ライリーによって2002年に作曲された80分にもわたる大作“Sun Rings”が日本初演される。この作品はNASAが宇宙船のプラズマ受信機で40年間にわたり録音してきた〈宇宙の音〉とクロノスが共演するという趣向になっており、後半には合唱も加わることで非常に大きなスケールを誇る、実に感動的な音楽だ。昨年、待望のCDが発売されたばかり。満を持しての日本初演は、絶対に聴き逃がせない。

 ありとあらゆるアーティストのなかで、クロノス・クァルテットほどボーダレスに音楽を取り上げている団体は存在しないのではないか? 基盤こそクラシック音楽にあるのは間違いないが、同時に彼らは既存のクラシック音楽の枠には一切はまらない存在でもある。まるで音楽の博愛主義者であり、真の世界主義者(コスモポリタン)でもある。もし、あなたがジャンルにとらわれることなく音楽を楽しみたいと願っているのであれば、クロノスのライブにこそ足を運ぶべきであろう。17年ぶりのチャンスを絶対に逃すべきではない!

 


クロノス・クァルテット (KRONOS QUARTET)
サンフランシスコを拠点に1973年に結成、現在もなお全世界で年70公演を超える演奏活動を繰り広げている、最高にユニークで、唯一無二の画期的な弦楽四重奏団。
デイヴィッド・ハリントン(芸術監督&vn)ジョン・シャーバ(vn)ハンク・ダット(va)サニー・ヤン(vc)

 


LIVE INFORMATION

【公演中止】クロノス・クァルテット 日本公演2020 

クロノス・クァルテット 《ブラック・エンジェルズ》
○9/27(日)15:00開演 東京オペラシティ コンサートホール

クロノス・クァルテット playsライヒ《ディファレント・トレインズ》&《トリプル・クァルテット》~オール・アバウト・クロノス・クァルテット
○9/28(月)19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール

クロノス・クァルテット playsライヒ《ディファレント・トレインズ》
○9/30(水)19:00開演 盛岡市民文化ホール
○10/4(日)16:30開演 八ヶ岳高原音楽堂

クロノス・クァルテット ライブ・ドキュメンタリー&パフォーマンス
○10/2(金)19:30開演 彩の国さいたま芸術劇場大ホール

クロノス・クァルテット / テリー・ライリー:《サン・リングズ》日本初演
○10/3(土)17:00開演 神奈川県立音楽堂

ozawa-art.com/concert/421/
wmg.jp/feature/kronos-quartet/

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