Hiromi Matsubara/Romy Mats

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ベースメント・ジャックスとの出会いと惹かれたポイント
彼らとの出会いは、2010年に日本限定でリリースされた『Scars』と『Zephyr』と『Scars』のリミキシーズを収録した3枚組CDアルバム。当時16歳、「トム・ヨークがオススメしているエレクトロニック・ミュージックを聴いてみたいな」という探究心から意識的にエレクトロニック・ミュージックを聴き始めた時期でした。いわゆる〈登竜門〉にあたるレジェンドたち、アンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、オービタル、ダフト・パンク……と聴いていった流れから、CDショップの当該コーナーに行けば頻繁に目に入るアーティストとしてベースメント・ジャックスに辿り着いたような気がします。
その年を通じて並行して聴いていたのが、フライング・ロータスの『Cosmogramma』と、スクリームの『Outside The Box』で、結果的には後に僕の趣味嗜好が長期的にLAビート・ミュージックとダブステップに向かっていくのですが、最初に聴いた3枚組が鮮明に記憶に残っているのは、Disc 3の『Scars』のリミキシーズにフローティング・ポインツ、SBTRKT、ジョーカー&ギンズといった当時はまだ注目株だったUKダンス・ミュージック転換期に携わったアーティストが参加していたことも理由のひとつだと思います。
〈XL〉の代表格として表舞台に立ちながら、テン年代突入に向かって益々の国際性と多様化が渦巻き始めたUKローカル・シーンをもいち早くフックアップする彼らの弛まぬ音楽への愛情。それをひとつのアウトプットとして表現するバランス感覚に長けていたことが、いま改めて考えてみると刺激的だったのです。そう言えば、同リミキシーズにサブ・フォーカスが参加していたことが後にドラムンベースに一度触れるきっかけの一助となりました。
特に好きな曲とその理由
“Twerk”(2009年作『Scars』収録)
今回のアンケートに際して、約10年ぶりに『Scars』を聴き返して思い出したのが、同作の中でも“Scars”よりも、“Raindrops”よりも、「断っ然に“Twerk”が好きだった」ということでした。リアルタイムで聴いていた当時はその参照元はもちろん、タイトルの意味も分からず、ベースがブリブリと鳴っている分かり易くエネルギッシュなトラックに日々の活力をもらっていただけでしたが……、今になってみれば、ベースメント・ジャックスがいかに先取りをしていたのかと震えてしまいます。
ディプロがトゥワークを取り入れたのが2012~2013年頃で、EDMシーンから〈トゥワーク〉という言葉そのものをよく耳にするようになったのが2015年ぐらいだったでしょうか。Basement Jaxxの“Twerk”は、5年ほど前のムーヴメント渦中のトラックよりもアッパーですが、ラテン・ハウスで異彩を放ってきた彼らならではのフロアライクなイーヴン・キックとの折衷でキャッチーに成り立っている辺りは、前述の通り流石のバランス感だと思います。
今回のコンピ『Jaxx Classics Remixed(2016–2020)/ Lost Tracks(1999–2009)』を聴いてみての感想
エレクトロニック・ミュージックを聴き始めて10年が経ち、今になってようやくベースメント・ジャックスが10年前、そして20年前に、何をしていたのかがよく分かります。一聴してポップでも、驚くほどに奥が深いのがこの音楽の魅力です。以前までの積み重ねを度外視して新しいことに挑戦した結果、中途半端にポップさが残ったり、全くの掴み所が無い作品になってしまうよりかは、世界各地から何を取り込むにしても彼らぐらいポップに振り切っていた方が潔くその深奥を感じ取ることができます。
彼らは、“Bingo Bongo”や“Red Alert”(99年)の初期ヒットによって、世界中のフロアを結び付ける祝祭性やUKハウスのファンクネスといった高いヴァイブスを、プロデューサーとしても、ツアーDJとしても届け続けることを一切諦めていないし、それがよく分かるのが『Jaxx Classics Remixed(2016~2020)/ Lost Tracks(1999~2009)』だと思います。
mantaschool(a.k.a MC.sirafu)

ベースメント・ジャックスとの出会いと惹かれたポイント
Basement Jaxxさんとの出会いは恐らく2000年以前の時代のレコード屋だったと思います。テクノ/ハウス黎明期~成熟してきた時期で、素晴らしい音楽との出会いは大概レコード屋か、皆が振る舞いを模索している時期のクラブでした。この後くるんじゃない??的な感じで友人に教えてもらったDaft PunkやMotorbassとかMoodymanとか聴いて喜んでた若い時代の、そのもう少し後かと。
ちなみにアルバムで言うと、『Ramedy』は現場で聴き、『Rooty』は家で聴いた感じです。それは狭い現場から世界に移行した感覚。Basement Jaxxさんには、何かがこれから沸き起こる、ジャンルとかスタンダードとか、その一旦を形成していくドキドキ感を、当時感じていたように思います。
特に好きな曲とその理由
すいません、この曲!ってのがパッと思い出せないです(笑)。あくまでレコードでの体感として感じてたその一部です。でも、2014年に〈フジロック〉で初めてライブを観たのですが、最高でした。ぶち上がりました。“Romeo”とかは覚えていて、身体に刻み込まれてた記憶が蘇りましたよ。そもそもダンスミュージックにライブアクト感を求めてない世代だったので、僕の数少ないダンスミュージック大御所ライブ体験(レインボー2000のアンダーワールド、フジのケミカル、Richie Hawtin、The Orb,,,,)は、絶大な言葉にできない感動はあるものの、それを遥かに更新したBasement Jaxxさんのライブアクトは、シンガー、ダンサー総乱れの感動的なものでした!
ちょ~昔The Grid※というグループがスケボーに乗ってバンジョー弾いてフロアを温めてたのですが(淡い記憶)、あくまでその延長上の、誰も興味ないであろうダンスミュージックにおける「ライブアクトちょっといい話」の潮流をほのかにBasement Jaxxさんからは感じ取れたことこそ、僕にとっての財産なのかもしれません。
今回のコンピ『Jaxx Classics Remixed(2016–2020)/ Lost Tracks(1999–2009)』を聴いてみての感想
機材やDTMの進化と共にダンスミュージックを今も更新していることは偉大!!! そしてダンスクラシックスも更新されてくよね!