ExWHYZと『Dress to Kill』の楽しみ方をA&R担当が語る!

 始動からおよそ9か月で到達した日本武道館でのワンマンをひとつの極みにしつつ、解散を控えたBiSHとのツーマン〈BiSHWHYZ〉開催や、夏からは〈ExWHYZ TOUR 2023 'eLATION'〉と題した3パート構成のツアーでライヴハウスやクラブを回るなど、音源での刺激的なチャレンジも相まって、2023年は実りの多かったExWHYZ。今年に入ってもその勢いは止まらず、Seihoとのスプリット・ツアー〈SeihoWHYZ〉開催から間髪入れずに届いた新作が『Dress to Kill』です。今回は通常のオリジナル・アルバムとは違った成り立ちであることも踏まえ、前身のEMPiRE時代からグループのほぼ全作品を手掛けるEMI RecordsのA&R担当・篠崎純也氏に話を訊きました。

ExWHYZ 『Dress to Kill』 ユニバーサル(2024)

いろんな楽しみ方を提示したい

――新作はいわゆるオリジナル・アルバムではなく、〈バラエティアルバム〉という位置付けになるんですね。

「流れのなかで自然に生まれた楽曲を集めた作品という形ですね。きっかけは去年10月の〈ExWHYZ TOUR 2023 'eLATION' part.2〉で、Seiho君と大沢伸一さんとyahyelを各会場で迎えるツーマンの形で開催したんですけど、〈せっかくだからそれぞれ対バン相手と紐付いた何かをやりたいよね〉って話してて。初日はSeiho君が“ANSWER”のリミックスを作ってきてくれていて、現場で初めて聴いた時にめちゃくちゃカッコ良かったので、その場で〈絶対これは出そうよ〉って話をしたのがまずあって。で、大沢さんとの対バンでは“Our Song”をカヴァーしたくて話をしたら、たまたま大沢さんが自分のDJ用にブラッシュアップしていたトラックがあったそうで、〈実はまだ1回もかけてないけど、使っていいですよ〉って言ってくれて、それでやらせてもらったらやっぱり良くて。それも音源にしたくて相談したらプロデュースも引き受けてもらえて。それぐらいの時期から、こうやって生まれた音源を一枚にまとめたらおもしろいなって考えはじめた感じですね。で、その後のクラブでやる〈part.3〉でも新しい見せ方ができるように既存曲のリミックスを作ることにして。それも〈分解して尺も長くて〉みたいなリミックスじゃなくて、再構築みたいなブラッシュアップした見せ方をできるリミックスを作りたくて、Shin Sakiura君や80KIDZに頼んだものを〈part.3〉で披露したらお客さんの反応も凄く良くて。そこに、たまたまロンドンでのライヴ用に作った“Obsession”の英語ヴァージョンとか、温めていた新曲“Unknown Sense”とかを加えて一枚にまとめれば、〈ニュー・アルバムです!〉みたいに構えず、もっといろんな音楽の楽しみ方を提示できるかなということで企画しました」

――リミックスについては選曲や曲調を指定したんですか?

「こちらで何曲か提案したなかから選んでもらって、Shin君が“Secret Secret”、80KIDZが“4:00 a.m”になって。〈ライヴ・パフォーマンスできる前提のリミックス〉ということだけ約束事としてお願いして、あとは自由にやってもらいました」

――その2曲がいずれも2ステップ風の仕上がりで印象的でした。

「それぞれ曲を選んだ後にイメージを相談したんですけど、80KIDZとは、まさにm-floの“come again”的なノリにしたら良さそうっていう話はありましたね。Shin君のほうはファンクっぽい要素も入れつつ、サビをブリッジみたいに扱って、その後のコーラスのフレーズの部分をサビみたいに聴かせるいまの海外のスタンダードっぽいリミックスになってて。どっちも楽しんで作ってもらいました」

――“D.Y.D”は篠田ミルさんと山田健人さんのセルフ・リミックスですね。

「“D.Y.D”のリミックスについては実は武道館の時ぐらいから考えてました。というのも、“D.Y.D”はアルバムでイントロの“xYZ”からシームレスに繋がる前提で作った曲なので、単品でもイケる細工ができないかなと思っていて。なので、これは曲指定して2人にお願いしました。オリジナルのストイックなテクノ調の感じから、リミックスはもう完全にメインストリームの音になってるジャングル、ガラージがベースにありつつ、全編に渡って弾きまくってるdutch(山田)のギターがめっちゃいいフレージングで刺してくれて気持ち良くて。音数も凄く少ないから、それに伴ってメンバーのヴォーカルもよく聴こえてきて、他のリミックスもそうですけど、同じ曲なのに新しい魅力を発見できるものになりました」

――リミックスを発端にしつつ、『Dress to Kill』というアルバム名にした意図は?

「いわゆる『~~Remixes』みたいなタイトルにして手抜きに思われるのももったいないし、ちゃんとアルバムっぽい見え方もするタイトルにしたかったのはあります。『Dress to Kill』って〈着飾ることで魅力を増していく〉みたいな意味合いなので、リミックスにせよ英語ヴァージョンにせよ、着飾った感じなのでそこがピッタリだなと思って。かつ、ちょっと中二病っぽくていいじゃないですか(笑)。タイトルが『Dress to Kill』で、1曲目“Dresscode”とか、もう最高だなって(笑)」

 

こういう感じでやっていく

――その“Dresscode”は現在のオープニングSEで使われているSeihoさん作のトラックですね。

「クラブ・ツアーの〈part.3〉から使ってますね。それまでは“xYZ”~“D.Y.D”、“xANADU”~“BLAZE”という形で冒頭の曲が固定されてたんですけど、それをあえて後半に持ってきても凄く盛り上がることが夏の〈part.1〉でわかって。そうなると新しいSEも欲しいなと思って、Seiho君に尺だけ指定してテンポ感も雰囲気も全部お任せでお願いしたら、予想外にバキバキのものが上がってきてビックリしました(笑)」

――2曲目の“Unknown Sense”にも繋がる雰囲気ですけど、それありきで作ったわけではないんですね。

「ないです。“Unknown Sense”は僕がコンペで集めてきたなかでストックしてた海外デモで、去年の夏ぐらいからあったのかな。その時点では出し方とかは全然考えてなくて、クラブ・ツアーをやる時のために作っておこうかな、みたいな。クラブ映えするアシッドというか、“Obsession”みたいにお客さんもノリやすそうだからいいな、ぐらいの感じでした(笑)。あと、ハードウェルがそれこそ“Acid”っていうアシッドの曲を出したので、そのインスピレーションもありましたね。そこまで大袈裟にリード曲みたいにするつもりじゃなかったんですけど、ライヴでやったら最初から物凄く反応が良くて、初見の人でも一緒に楽しめるような雰囲気を感じて、ExWHYZのいまのライヴのあり方として、こういう曲が普通にあるのは良いなと思ってます。mahoの歌詞も大層なことを言わないというか、あまり意味を持たせない感じで書いていて、非常にうまくまとまりましたね」

――でも、こういうスタイルの曲がすっかり似合うようになりましたね、メンバーの皆さんも現場の雰囲気も含めて。

「何よりです。『xANADU』の時の一連の仕掛けあたりでExWHYZを初めて知って好きになってくれた人が若い世代をメインに物凄く増えた印象があって、もちろん変わらず応援してくれてる人たちもいて。そこである程度いまのファンベースみたいなものが完成されて、〈ExWHYZはこういう感じでやっていくんだな〉というのも伝わったと思っています」

――それでいうと、〈part.2〉のファイナルでサプライズ披露~配信された“As you wish”はEMPiRE時代から重要なクリエイターだったoniさんと久々に組んだ曲ですね。

「まずはExWHYZとしての新しい音楽性を確立しなければお願いできないと思っていて。そこからホントに自信があるアルバム2枚とEPが作れて、ライヴでお客さんの理解も高まったので、いまならできるなと思ってお願いしました。でも、全員が昔より圧倒的に歌が上手くなっていることにoniさんも驚いていて、〈ホントにカッコ良くなったね〉って言ってくれて。あのタイミングでoniさんに見てもらえたのは凄く良かったです。この曲ではずっとやりたいと思っていた青葉台スタジオの浦本雅史(サカナクション他)さんにエンジニアをお願いしたら〈めっちゃ良い曲ですね〉って言って引き受けてもらえて。そこからミュージシャンも決めて、ストリングスも全部生音で入れて、いつもの倍ぐらい制作費はかかりましたし、費用対効果とかを考えたら、ある意味ふざけてるんですけど(笑)、ふざけるなら全力でやりきるっていうのが僕らの昔からのこだわってるところなので」

 

もっとイケる

――いわゆる新曲扱いでもう1曲、ラストの“Fleeting”があります。ExWHYZのアルバムはいつも終わり方がいいですね。

「全体を通してけっこう尖った印象のアルバムになったので、素直に〈良い曲だな〉って思えるJ-Popも欲しいなと思って、前からあったデモを完成させた感じです。作詞はサビがmayuで、それ以外がmahoなんですけど、歌詞の内容も相まって、いちばん最後に置くとホッとするっていう。凄く好きな感じの曲です」

――本作を踏まえて、全体的にグループの現状はどう見ていますか?

「ライヴ力みたいなものとか、シンプルに表現力、歌唱力はまだまだ伸びるんだなってぐらい上がってきてる感じがあります。それで言うと“Obsession”の英詞ヴァージョンに注目してほしくて。英語は恥ずかしいぐらいヘタクソなんですけど(笑)、言語はさておき、ライヴの定番として歌い続けてきたことでどんどん歌のグルーヴが生まれていった曲なので、オリジナルと比べれば全員の歌のグルーヴがちゃんと進化してることをはっきり感じてもらえると思います。そういうのもあって、基本的にパフォーマンスの面に関しては心配してないです。メンバーも基本的にはみんな前向きだし、成長意欲もあるし、何より自分たちの楽曲やパフォーマンスに自信を持てていて、〈もっとイケる〉って思えているというか。あと、midorikoがお休み中なので、まだ完全体じゃないですからね」

――この後は5月から〈ExWHYZ TOUR 2024 'Futura Free'〉が控えています。

「真っ当にお客さんを楽しませて、また観たいって思ってもらえる状況を全国各地で作っていくっていうのを、いま一度しっかり丁寧にアプローチしていきたいっていう感じです。今年は去年の武道館みたいに派手に見える動きはないので、その意味では地力をつける年っていうか、新しいスタンスをライヴでも提示できてる状況をもっと広げていきたいですね。あと、『xYZ』も『xANADU』も相当な名盤だと思ってるんですけど、次のサード・アルバムはメンバーからの刺激も受けながら完全無欠の最高傑作、大名盤にしたくて、それが作れる状態になるまでオリジナル・アルバムを出さないつもりなんです。いつになるのかはわからないですけど、楽しみにしていてください」

ExWHYZの作品を紹介。
左から、2022年作『xYZ』、2023年作『xANADU』、2023年のEP『HOW HIGH?』(すべてユニバーサル)

ExWHYZの日本武道館公演の模様を収めた映像作品「ExWHYZ LIVE at BUDOKAN the FIRST STEP」(ユニバーサル)

 

メンバーからも収録曲を紹介するよ!

1. Dresscode
「Seihoさんが手掛けてくださいました。新しいSEとしていつもオープニングを盛り上げてくれてたのが、素敵なタイトルがついてアルバムの冒頭を飾る一曲になっています。〈この曲も踊れるかな〉というmahoちゃん発案、振付けでライヴではいつも爆踊りしているので注目してほしいです」(now)。

2. Unknown Sense
「みんなだいすきな曲じゃないでしょうか。早くもExWHYZのライブで大歓迎され、存在感を発揮している子でございます。初めて聴いた時に、何年か前に滾っていたときと隣り合わせの感情があり、それを書きたいとすぐに思いました。そんなふうに自分の点と点を繋いでいろいろと照らし合わせたりもしながら、ライヴでメンバーがパフォーマンスすることを想像して書いた詞です。どりちゃんの声がパンチ効きすぎてこれこれ~味を増してくれてるのにも注目です。まとめると、未だ知らない何かを探し続けていくしかないと行き着きました、のでみなさんどうぞご一緒によろしくおねがいします」(maho)。

3. Our Song
「去年の〈'eLATION' part.2〉にて、大沢伸一さんとツーマンをした際にその日限定のつもりでカヴァーさせていただいたのですが、それがきっかけで正式にカヴァーさせていただきました! “Our Song”という曲名の通り、ステージとフロアの境界線がなくなるような、みんなで好きに踊って歌って、その瞬間を一緒に大切にできる曲で大好きです」(mayu)

4. Secret Secret [Shin Sakiura REMIX]
「Shinさんの手によって艶満載のお洒落小悪魔ちゃん曲が誕生しました。色で表すなら黒紫レースですかね! 振付けもみんなで考えて、原曲よりも身体のラインを使った振付けをちりばめたり、音からダンスまで最強小悪魔Girlな一曲になりました。はみ出しそうなリップスティック、もうはみ出しちゃってるんじゃないかと思うくらい」(now)。

5. ANSWER [Seiho REMIX]
「こちらも〈'eLATION' part.2〉でツーマンをした際、Seihoさんがかけてくださったリミックスです。どのリミックスもそうですが、原曲とまったく違う面を楽しめるものになっています。振付けは曲を聴いた時に頭に浮かんだ美しい景色たちと、ツーマンの時にライヴハウスのスピーカーで初めて聴いたときの目の前の景色がガラッと変わるような感覚をイメージしてつけました」(mayu)。

6. 4:00 a.m [80KIDZ REMIX]
「本当は忘れてないけど忘れてるフリで未練がましく行っておいで~で世に放った“4:00 a.m”がアップテンポでスッキリした顔で帰ってきたな~と思いました。BPMとサウンドが変わると急にキャラクターの気持ちが変わって見えるのが不思議で素敵。リミックスの醍醐味。自分の中でたくさん考察を膨らませてほしい一曲です」(mikina)。

7. Obsession [English Ver.]
「初めてのロンドンでの海外公演に合わせて作った、ライヴでも盛り上がる“Obsession”の英詞ver.です。原曲と違うアクセントや音ハメなど、初めての英詞に悪戦苦闘しながらも、新しいことへ挑戦する昂揚感を感じながら制作しました。言語は違いますが、ずっと歌ってきた曲でもあるので、メンバーの歌唱が〈現在〉のExWHYZの“Obsession”になっている点はぜひチェックしてほしいです。mikinaちゃんの〈見逃さないで〉の英語ver.もぜひ、見逃さないで、聴き逃さないでいただきたいです!!!」(yu-ki)。

8. D.Y.D [Miru Shinoda, Kento Yamada REMIX]
「すごく緻密な音の重なり。自分たちの歌声さえも細かく分解されて曲として再構築されていくのが本当におもしろい。最初は無機質な印象を受けて、何回も聴いてたらバッキングのギターの音が情緒的なことに気付いて、こんなに何回も聴いても新しい発見がある!?とワクワクしました。きっとこれからもその時によって変わるのだと思います。山田さんとミルさんのお二人にしか作ることのできないリミックスです」(mikina)。

9. As you wish
「日々生きてる中で感じる行き場のない寂しさやもどかしさを、ストレートな歌詞と壮大なサウンドで歌っています。不明瞭で言葉に表しづらい感情を肯定してくれたり、背中を撫でてくれるような温かくも力強い楽曲です。生バンドで初披露した映像もYouTubeで公開しているので観てもらえたら嬉しいです。どりの歌も入ってやっと完成したなと思えます!」(yu-ki)。

10. Fleeting
「新しい世界が連続するこのアルバムの最後に、少しだけホッとするようなあたたかい存在だと思っています。誰も置いていかないよって。歌詞はすごく時間をかけて書きました。言葉がうまく出てこなくて、というよりうまい言葉を探してしまって。でも時間をかけてたくさんの人の顔を思い浮かべて書いた一言一言はほんもので濁りはなく、そんな気持ちすらも抱えて何度でも伝えたいと思い至り書いた曲です。マスターに届きますように。あ、想いが募りすぎてしまいましたが、なによりこの歌のメンバーの声がわたしはだいすきです」(maho)。

ジャケは登場順に、大沢伸一の2007年作『The One』(rhythm zone)、Shin Sakiuraの2023年作『Inner Division』(PARK)、Seihoが参加した三浦大知の2024年作『OVER』(SONIC GROOVE)、80KIDZの2021年作『ANGLE』(PARK)、yahyelの2023年作『Loves&Cults』(LOVE/CULT)